環境に関する教育研究とトピックス [環境に関する教育]里山のフィールドワークから水環境汚染の原因を探る

奈良学園高等学校・中学校は奈良県の北西部、大和郡山市に位置しており、校内には棚田、雑木林、自然林などを有する7ヘクタールの広大な里山があります。奈良学園高等学校は文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けており、豊かな自然環境を利用した教育活動が活発に行われています。ご縁あって、私は平成27年度から奈良学園高等学校の化学分野の理科指導員としてSSH事業に携わっています。

平成27年度は、「森は海の恋人か?」というテーマで、里山で培われた栄養分が、川を通じて海に流れこみ、豊かな海を育てる、すなわち、里山の渓流水や河川水、海水に含まれる栄養塩の一つであるリン酸イオンを測定することによって、山・川・海の繋がりを高校生に学んでいただきました。

実習では高校生と里山の地図を片手に、大阪湾へ流れ込む大和川の支流である富雄川の源流を目指して探検し、アドベンチャー感覚を味わいながら渓流水のサンプリング地点を決めました。また、大和川にもサンプリングに出かけ、校内の里山から湧き出る清澄な渓流水が、やがて農地や市街地を流れ下る過程で、肥料や生活排水などの影響によって、汚濁が進んでゆく過程についても高校生に学んでいただきました。

8月の研修では神戸大学にて、水中のリン酸イオン、溶存酸素濃度などを化学分析で測る方法を実習しました。高校生は大学の研究で使用する分光光度計や多項目水質計などを使い、試行錯誤を繰り返しながら環境分析の一端を体験しました。実習に加えて高校生および教員、大学のスタッフを交えたグループワークで、山・川・海の繋がりや理想の海について議論しました。高校生からは、「教えられる授業ではなく、自分達で意見を出し合って考えることが新鮮で、人それぞれ、視点や考え方が違っていて面白かった。」「人の意見を聞くことは本当に大切だと感じた。」などの感想が寄せられました。

実習を通して、高校化学の気体の性質、溶液の性質、化学平衡、高校生物の生態系などの単元と、大学の化学・環境学関連の分野で高大接続を図り、かつグループワークによってブレインストーミングの方法を習得するなどの教育効果が得られました。関係者の皆様、真剣に実習に参加いただき、ありがとうございました。

  • 奈良学園高等学校・中学校キャンパスマップ

  • 奈良学園高校の里山での水温測定

  • 神戸大学深江キャンパスでの海水採取