経済経営研究所 教授 家森 信善
環境省は、地域経済エコシステムの構築を目指しています。地域の持続的な発展を実現するには、一方で、環境・社会的課題の解決に資する技術力や製品・サービスを持ちながら、その価値が見出されていない地域企業の発掘が必要ですし、他方で、脱炭素化などの環境をめぐる世界の動きから大きな影響を受ける可能性のある多数の企業に対する支援が必要になっています。しかし、ESG要素を考慮した事業の展開や転換は、地域企業の自助努力だけでは難しいのが実際です。そこで、地域企業の近くにいる地域金融機関の役割が重要だと考えられています。
環境省は、2018年のESG金融懇談会提言をうけて、2019年に「ESG金融ハイレベル・パネル」を設置し、そのもとに「持続可能な社会に向けた金融機関の地域における役割、ESG地域金融の普及展開に向けた戦略・ビジョンを議論」するため、ESG地域金融タスクフォースを設けました。私は地域金融の専門家として、このタスクフォースに加わり「持続可能な社会の形成に向けたESG地域金融の普及展開に向けた共通ビジョン」(2021年)の作成に関与しました。これは、地域金融機関がESGの観点で目指すべき方向性と求められる取り組み姿勢を明確に示したものです。
また、環境省が設けた「地域におけるESG金融促進事業意見交換会」の委員として、環境省の補助事業に応募した地域金融機関の取り組みについて助言を行いました。同意見交換会の成果は、環境省大臣官房 環境経済課 環境金融推進室「ESG地域金融実践ガイド」(2020年4月)および、2020年度の取組や状況の変化を受けて改訂した「ESG地域金融実践ガイド2.0-ESG要素を考慮した事業性評価に基づく融資・本業支援のすすめ-」(2021年4月)(右に表紙を掲載)の形で、地域金融機関の皆さんに還元しています1。
環境省では、2019年にESG金融の普及・拡大の一助にするために「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」(環境大臣賞)を創設しました。第2回のESGファイナンス・アワード・ジャパンから、あらたに地域金融機関に焦点を当てた「間接金融部門:地域部門」が創設され、その審査にあたるために私は審査委員会に加わることになりました。2021年2月に表彰式が開催され、私も審査員として講評を行いました。厳正な審査の結果、間接金融部門:地域部門では、株式会社滋賀銀行が金賞(環境大臣賞)を小泉進次郎環境大臣から授与され、また滋賀県信用保証協会が銅賞を受賞されました。滋賀銀行の環境金融の取組は、私の研究紹介として「神戸大学 環境報告書2016」に「地域金融機関による環境金融の可能性」のタイトルで報告していますが、その後もめざましい進展をされてきたことが大臣賞につながったと思います。
私は、地域経済の再生・振興に金融を活かすということを目標に研究を進めています。今後とも、環境省の事業に協力してESG地域金融の普及発展に貢献していきたいと思っています。