環境に関する教育研究とトピックス [環境に関する研究]地域金融機関による環境金融の可能性

私は地域金融を専門にしており、とくに、地方銀行や信用金庫といった地域金融機関が社会の中でどのような役割を果たすべきかを研究しています。そうした意識の下で、私の研究室では、金融システム研究部会を運営しています。内外の研究者はもちろんですが、実務家を招いた研究会を行っている点に特徴があります。2015年度は、橋本博之氏(尼崎信用金庫会長)、伊東眞幸氏((株)浜銀総合研究所社長)、増田寿幸氏(京都信用金庫理事長)、髙橋知史氏(大阪シティ信用金庫副理事長)などが講演をしてくださいました。

2015年6月3日の研究部会では、辰巳勝則氏((株)滋賀銀行総合企画部 CSR室長)に、「滋賀銀行の環境金融~「環境格付」「環境コミュニケーション」」というタイトルで講演をお願いしました。琵琶湖を抱える滋賀県を地盤にしている滋賀銀行は、環境金融のリーダー的な存在です。個人的な経験ですが、2007年に韓国の研究者から日本の地域金融機関の環境金融の取り組みについての調査への協力依頼があったときに、訪問したい先として滋賀銀行が名指しされました。このように、海外でも滋賀銀行の環境金融の取り組みは注目されています。

さて、辰巳室長の報告内容に基づきながら、私なりに滋賀銀行の環境金融について評価してみます。滋賀銀行はCSRを「社会の持続可能な発展のために、社会の一員として果たすべき責任」と明確に位置づけており、「環境」「福祉」「文化」を3本柱としたCSR活動を展開しています。業績が良いときだけCSRに熱心になる銀行もある中で、経営陣のしっかりしたコミットメントによって「環境金融」への取り組みがぶれないのです。

滋賀銀行では「お金の流れで地球環境を守る」との気概で、経済の血液である金融の役割を通じて持続可能な社会づくりに貢献できるよう、環境対応型金融商品・サービスの開発・提供により「環境金融」を実践しています。その試みの一つが、環境格付です。借り手企業を、ISO14001、エコアクション等認証取得、環境会計導入などの15項目の観点で3段階評価を行い、最上位の格付(「取り組みが先進的」)が付与された場合には、金利が0.5%優遇されます。制度は導入したものの実際には使われていないということが多いのですが、滋賀銀行の場合、2015年3月末の実績で、実行件数 1,676件、実行金額 355億円(累計ベース)となっており、実際に活用されています。もちろん、環境金融を普及させていくにはさまざまな課題があることも事実ですが、「環境」を活かした商流を構築すれば地域に根ざした強いビジネスをつくれる可能性もあります。

持続可能な社会を築くために、地域金融機関が貢献できることが多いことを改めて感じました。私たちの研究室としても、地域金融機関の環境金融の取り組みについてこれからも研究を進めていきたいと考えています。

  • 図1 琵琶湖原則(辰巳氏資料より)

  • 図2 環境金融の資料(同行HPより)