環境に関する教育研究とトピックス [環境に関する研究]EPR-Asia in Kobeの開催

2015年9月21日に神戸大学でEPR-Asia in Kobeを開催しました。EPRとは、Extended Producer Responsibility (拡大生産者責任)の略です。EPR-Asiaとは、アジアにおけるEPRに関する初めての研究者の国際プラットフォームです。3R推進団体連絡会の支援を受け、神戸大学が中心となり、中国(社会科学院計量経済技術経済研究所)、タイ(チュラロンコン大学)と運営し、2015年設立以来、5回の国際セミナー・シンポジウムを開催しています。

http://www.epr-asia.net/index_jp.html

世界のごみは増え続けています。ある研究によると、過去100年間で世界でのごみの発生量は10倍になっており、2025年には現在の倍になると予測されています(Hoornweg and Bhada-Tata 2012)。

ごみが増え続けると、処理に困るだけでなく、資源を多く使うことになりますから、途上国の人たちが今よりも豊かな生活をすることが難しくなります。このため、1980年代くらいから、先進国では、資源のリサイクルが盛んになってきました。しかし、これは簡単なことではありません。経済が発展した国で手間をかけてリサイクルするよりも途上国で資源を採掘する方が安いからです。

この問題に対する解決策として、製品に注目して、製品の製造者に、リサイクルしたり、ごみとして適切に処理したりする責任を負わせるという考え方が提案されました(Lindhqvist 1992)。

90年代から、経済が発展した国の多くでEPRの考え方に基づいた廃棄物政策が確立され、さまざまな成果や課題について分析が行われ、研究が進んでいます。最近、途上国でもEPR政策を取り入れたいとの要望が高まり、途上国でEPR政策を導入するときの課題、前提条件などについては研究が始まりました。

途上国でEPR政策を導入するには、経済が発展した国とは違う条件がいくつかあります。例えば、途上国では賃金が低く、ごみ・資源を収集してリサイクル・処理する過程で、有価物が抜き取られ、環境を汚染するような不適切な方法でリサイクルされていたり、政府の違法行為を取り締まる力が弱かったり、生産者の側も産業として成熟度が低く、産業として使用後の製品に対して責任をとる体制が不十分であったりします。

EPR-AsiaはJICAプロジェクト:中国都市廃棄物循環促進プロジェクト(2010-2015)の成果と形成されたネットワークを受けて設立されており、今年の目標は、中国の全人代で採択された第13次5カ年計画(2016~2020)でのEPR政策への提言です。

  • EPR-Asia_パネルディスカッション

  • EPR-Asia_集合写真

〈引用文献〉
Hoornweg and Bhada-Tata 2012、What a Waste; A Global Review of Solid Waste Management, World Bank 2012
Lindhqvist, T. “Extended Producer Responsibility,” in the proceedings of an invitational seminar at Trolleholm Castle, 4-5 May 1992: “Extended Responsibility as a Strategy to Promote Cleaner Products,” edited by Thomas Lindhqvist, Department of Industrial Environmental Economics, Lund, June 1992.