環境に関する教育研究とトピックス[環境に関する研究]

人流・気流センサを用いた屋外への開放部を持つ空間の空調制御手法の開発実証

環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の採択を受けて、2017年度からの3年間で標記の研究を実施しています。神戸三宮の地下街「さんちか」を対象として、神戸大学、日建設計総合研究所、創発システム研究所、神戸地下街が共同で実施しています(図1参照)。

この研究では、出入口の空気の流入を季節や時間帯によってコントロールするとともに、人流・気流センサを用いて地下街の環境状態(人の行動や特徴、温熱環境データなど)を把握・予測します。その結果に基づいて空調を制御し、冷暖房のエネルギー消費を最小化することを目標としています。

従来の空調では空間全体を均一に冷暖房しますが、本研究で開発する技術は、人の居る場所を予測し、各場所に必要最小限の熱量を供給することで、無駄なエネルギー消費を削減します。

実際のさんちかの電力消費量を見ると、照明・コンセントや冷凍機・ボイラの他に、ファン、ポンプなどの冷暖房をサポートする機器の消費量も比較的多くを占めています(図2参照)。これらの特徴を踏まえて、適材適所の省エネ技術を選定する必要があります。

空調システムにおける省エネルギー(省CO2)検討の考え方に示すように(図3参照)、我々が目に見える空間での省エネルギー方策は冷暖房負荷の削減(設定温度の緩和、照明のLED化、断熱改修など)ですが、実際のエネルギーは熱源、空調機でも使用されており、冷熱、温熱はそれらの間を水や空気を介して搬送されるため、搬送用のポンプやファンでも使用されています。さんちかでは店舗部分はしっかりと冷暖房する必要がありますが、公共通路は若干温度が変化しても許容されると想定されます。そこで、公共通路の冷暖房の実施時間を前後にずらすことで機器を高効率で運転し、省エネルギーを実現します。公共通路を活用した熱のデマンドコントロールという考え方です。

  • 人流・気流センシングと気流制御のイメージ
    図1 さんちか公共通路での人流・気流センシングと気流制御のイメージ
  • 電力消費量の内訳
    図2 さんちかでの電力消費量の内訳(2013年)
  • 空調システムにおける省エネルギー
    図3 空調システムにおける省エネルギー(省CO2)検討の考え方