環境に関する教育

火とのふれあい体験を促進する薪ストーブの設置

神戸大学附属幼稚園 副園長 田中 孝尚

「時計型薪ストーブ」

日常生活の中では、火とふれあう体験はどんどん少なくなっています。オール電化の家庭では料理をする時でさえ火を目にすることがなくなりました。附属幼稚園では、園庭の豊かな自然環境を大切に守りつつ、子どもたちの遊びや生活の中で最大限に活用したいと考えています。落ち葉や枯れ枝、剪定した木の枝を燃料に使い、大人に必要最低限の助けを得て、年長児が焚き火をしてきました。焚き火をして焼き芋を焼き、自分たちで食べることを楽しむことに加えて、年少児や年中児、お世話になった身近な人に焼き芋を焼いて届けることをしています。

その中で年長児は、年長児としての自覚をもち、友達と気持ちを合わせて準備をしたり、自分たちの役割を果たそうとしたりする経験をし、さらには自分たちの役割を果たす充実感も味わっています。また、焚き火という活動から、火や煙に関する体験をすると同時に、それらと安全に関わる上で気をつけなければならないことを考えることも大事にしています。

それでもまだ十分な体験を保障しているとは言えないと思っていました。また、本園の園庭から出る落ち葉や枯れ枝、剪定した木の枝をすべて使い切ることもできていません。落ち葉を腐葉土にしたり、剪定した木の枝を使ってダイナミックに遊べる遊び場を、園庭に作ったりもしています。でもまだまだ無駄にしているものがあります。

そこで、日常的に、比較的安全に、生活の中でも必然性をもちつつ、火の有用性を実感できるようにしたいと考えて、日常的におやつを食べている場所に薪ストーブを設置しました。安価な昔ながらの時計型の薪ストーブです。しかしながら効果は絶大でした。「これ何なん?」と設置した時にはあちこち触り回っていました。「ストーブだよ。薪ストーブって言ってね、この中で木を燃やしたら、あったかくなるんだよ。火をつけている時は、火傷をするから煙突にも触らないように気をつけてね。」と何度言ったか分かりません。そんな心配はよそに、薪ストーブに火を入れるとあっという間に取り囲んであったまっていました。保護者も興味津々です。火をつけた時に出てくる煙突の先から出る煙を喜んで見ている子どももいました。災害時の備えにもなっていると思います。

火を日常的に便利に使いながら、危険なことになることにも気付かせつつ、園庭から出る自然の恵みを余すところなく使い切ることを目指していきたいと考えています。

「薪ストーブあったかいね」
「軒の上にのびる煙突」