神戸大学大学院人間発達環境学研究科の北野幸子教授らの研究グループ、および神戸大学附属幼稚園は、株式会社スマートエデュケーション(本社:東京都品川区、代表取締役:池谷大吾)と連携して、ICTを活用したドキュメンテーションツール「おうちえん」の機能強化に関わる共同研究に2020年9月から取り組んでまいりました。

神戸大学附属幼稚園における実証実験の結果、「おうちえん」を活用することで、園と保護者との双方向的な関係づくりの手段が増えることや、園生活での子どもの姿を保護者が深く理解できることが確認できました。

本研究の概要

園における子どもの育ちや学びを可視化する必要性が増す中、子どもたちの日常を写真とコメントで記録し、保護者に伝える「ドキュメンテーション」に注目が集まっています。さらに、このコロナ禍では従来の保育の見直しを迫られることも多く、園には保育の実態や意義をより丁寧に保護者に伝えることが求められています。その一方で、保育者の業務負担軽減も重要な課題となっています。

本研究では、ICTを活用した株式会社スマートエデュケーションのドキュメンテーションツール「おうちえん」を神戸大学附属幼稚園に導入して、動画を取り入れたドキュメンテーションの作成、保護者からのコメント機能の活用などに取り組み、非認知能力(社会情動的スキル)の記録とそれに対する保護者の理解を深めるツールとしての効果を評価するとともに、家庭との連携を図るツールとしての機能強化について、検証を行いました。

先生用管理画面で保護者閲覧数を表示

※画像はイメージであり、実際の神戸大学附属幼稚園のものとは異なります。

共同研究の期間

2020年9月1日から2022年3月31日まで(1年6ヶ月間)

研究結果

保護者画面に匿名でコメントを公開

※画像はイメージであり、実際の神戸大学附属幼稚園のものとは異なります。

本研究より、以下のことが明らかになりました。

  • 「おうちえん」を利用したドキュメンテーションの作成は、簡単で取り組みやすい
  • 動画を発信することにより躍動的に子どもの育ちや学びの姿が伝えられる場合がある
  • 保護者の閲覧状況が一定程度把握できる(紙媒体では困難な場合が多い)
  • 保護者からのコメント欄を設置することにより、園と保護者の双方向的な関係がつくりやすくなる
  • クラスや学年を超えた閲覧があり、保護者の子ども理解の深化につながる可能性がある
  • 園における家庭理解の深化が図られる

また、今後の機能強化については、以下のことが提案されました。

  • 印刷する上での紙面の制限に関する改善
  • レイアウトの自由度を増す等の改善
  • 読みやすさの改善

「ドキュメンテーション」とは

「ドキュメンテーション」は、遊びや生活場面における子どもの好奇心・探求心・憧れや、活動に集中している瞬間をとらえて写真とコメントで記録するものです。測定の難しかった非認知能力(社会情動的スキル)の定性的な記録ができる手法であり、「子ども主体の保育」を実現するうえで有効な手法として近年注目されています。ドキュメンテーションを活用することで、保育者・保護者・園児の間に対話を生み出し、学びを豊かにすることができます。

関連リンク

研究者

SDGs

  • SDGs4