5月15日は、神戸大学の創立記念日です。この日は、1903年に前身の旧制神戸商業高等学校 (神戸高商) が授業を開始した日にあたります。当時、帝国大学や旧制高校は9月入学が一般的でしたが、神戸高商の初代校長水島銕也が、春の中学卒業から入学までの空白期間を短縮したいと、春入学を決めたといわれています。神戸大学は開校当初から、前例や横並び意識にとらわれないパイオニア精神を発揮したといえそうです。

旧神戸高商は、日本の国際貿易の一大拠点であった神戸港を抱える神戸市に立地していたことから、世界で活躍する国際人の育成を目標にしていました。水島校長は、始業式で「本校の目的は、主として自ら大規模の商業又は外国貿易を経営する人物を養成するに在り」と述べ、さらに「常に学理と実際との関係に着眼し、学問の応用を主とすべし」と説きました。

野邑理栄子 室長補佐

神戸大学大学文書史料室の野邑理栄子室長補佐によると、水島校長は春入学のほかにも、商業学校出身者にも入学許可を与えて高等教育の機会を広げるなど、ときには国の方針にも対抗しながら、革新的な教育を実践しました。また、国際性を重視し、外国語教育や海外研修に力を入れたといいます。水島校長の狙いどおり、神戸高商は、総合商社鈴木商店で活躍し破綻後に日商 (現双日) を立ち上げた高畑誠一や永井幸太郎、出光興産を創業した出光佐三など、世界を舞台に活躍する人材を輩出しました。

しかし、創立記念日をめぐっては長年にわたる紆余曲折があったといいます。というのも、新制神戸大学は1949年、神戸高商の系譜を引く神戸経済大学、神戸経済大学予科、姫路高等学校、神戸工業専門学校、兵庫師範学校など7校が統合して発足し、国立大学で最も複雑な統合形態をとっていました (寺﨑昌男『日本近代大学史』)。それぞれに開校時期が異なるため、創立記念日を神戸高商のスタート時点とすることに反対意見が強く、当初は各学部などで別々に記念行事を行っていたといいます。創立記念日が5月15日に決まったのは、新制大学の誕生からかなりたった1955年のことでした。

この創立記念日ひとつとっても、神戸大学の多様性や歴史の一端が垣間見えますが、大学の歴史を紹介する「神戸大学史展」が大学文書史料室主催の常設展として開催されています。展示内容は、2022年の120周年を記念してリニューアルされました。写真パネルや年表、文書をコンパクトに分かりやすく展示しています。野邑室長補佐は「大学の歴史を知ることは、時代を知るひとつの手段でもあります。創立記念日を機にぜひ、足を運んでください」と話していました。

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