2010年4月6日
神戸ポートアイランドホール

福田秀樹神戸大学長

みなさん神戸大学入学おめでとうございます。ご列席いただいております保護者の皆様、本日はまことにおめでたく、心よりお祝い申し上げます。

さて、この春、神戸大学は学部に2621名、大学院博士課程の前期課程に1340名、博士後期課程に340名、法科大学院と経営学専門職学位課程に155名、3年次編入学生として162名の皆さんを、お迎えすることができました。神戸大学長としてこのような多くの新入生をお迎えすることができ嬉しく存じます。

豊かな国際性

神戸大学は、現在、11の学部と14の大学院研究科、そして、法学と経営学の二つの専門職大学院、経済経営研究所、自然科学系先端融合研究環、医学部附属病院、さらに多数のセンターと複数の図書館で構成されています。

神戸大学は、「真摯・自由・協同」の理念と創設以来育まれてきた、国際性豊かな研究の特色を生かしつつ、大学構成員各人の知的好奇心と探究心に発する研究の水準を高めてきました。また教育面においても、教員と職員とが一体となって協働し、学生の視点に立って、教育力の向上、学習環境の整備、経済的支援などに努力して取り組み、魅力ある教育を実施する環境も整備してまいりました。その結果、神戸大学は、国際都市神戸にふさわしい世界的に卓越した教育研究拠点として発展してまいりました。

ここで、皆さんに神戸大学の特徴についてお話したいと思います。神戸大学の特徴は何よりも国際性において語ることができます。神戸大学は、海外の42の国や地域にある171もの大学や研究機関と日常的に学術・文化の面で交流を行っており、教員の海外派遣及び海外からの招聘、そして72カ国以上におよぶ国から1100名を超える留学生を受け入れています。このように、神戸大学は大変国際性の香り高い雰囲気のある大学です。

EUから高い評価

ここで、神戸大学と欧州連合 (EU) の研究活動について最近の大きなトピックスについてお話したいと思います。

昨年12月、EUの機構改革などを盛り込んだリスボン条約が発効されたことにより、ベルギーの首相ヘルマン・ヴァン・ロンプイ氏が初代「EU大統領」にご就任されましたことは、ご存知の方もおられると思います。

ロンプイ大統領は、近々、神戸大学に来られる予定です。このご訪問は、神戸大学の「EUIJ関西」と呼ばれていますEU研究活動を高く評価された結果であり、今回は神戸大学の学生の皆さんに記念講演をしていただく予定になっております。

このように、大統領が神戸大学で、御講演をされることは大変な名誉であり、歴史的な記念日となるものと感激しております。

EUIJ関西という組織は、欧州連合に関する教育・学術研究の促進、広報活動の推進や情報発信を通して、日本とEU関係の強化に貢献するために、欧州委員会の資金援助を得て、2005年から神戸大学を幹事校として、関西学院大学、大阪大学によるEU研究教育拠点として設立されました。また昨年度から、京都大学経済研究所、関西大学とも協力協定を結ぶとともに、経済、経営、法学の社会科学分野のみならず、自然科学や生命・医学分野を含め、総合的教育研究拠点として、機能を強化し、情報発信をしてきました。この神戸大学を幹事校とする活動の成果によって、大統領のご訪問の機会を得ることになりました。

その他、特徴ある神戸大学独自の制度として、若手教員の将来性を見据え、国際性を醸成するために、昨年から4年間で60人の若手研究者を1年間派遣する海外留学制度を設けております。教員のこのような経験が必ず国際感覚に優れた教育や研究面において、大いに反映されるものと期待をしています。

統合研究拠点建設へ

神戸大学のもう一つの大きな特徴は、「総合性」にあると思います。神戸大学では、人文・人間科学系、社会科学系、自然科学系、及び生命・医学系の4つの学術分野を有している総合大学です。これらの個々の分野における教育研究を進化・発展してゆくことは勿論のこと、これらの分野間の強固な連携による融合領域での教育研究を推進することによって、新しい学際分野においても多くの成果を輩出しています。

神戸大学では、このような学際的研究をさらに発展させるために、現在理化学研究所がポートアイランドに建設中の「次世代スーパーコンピュータ」設置場所に隣接したエリアに、「神戸大学統合研究拠点」を建設する予定です。その拠点で研究するグループには、次世代スーパーコンピュータを利用し高度な計算科学を研究するグループ、地球温暖化の防止を目的とし、炭酸ガスの増加の抑制や水資源の確保などによる「低炭素社会の構築」を目指すグループ、最先端の医療システムの開発や安心して暮らせる生活環境の構築など、健康の科学を研究するグループ、惑星系の起源・進化・多様性を統合し普遍化した汎惑星系モデルの構築を目的としたグループ、などが含まれております。いずれのテーマについても、単独の学問分野で推進できるものはなく、複数の分野間との連携を必要とします。このように、本拠点は神戸大学の総合性を生かし、神戸大学の多くの専門分野の方々の参加は勿論のこと、国内のみならず海外からの最先端の研究を行っている大学、研究機関や企業などと、連携を図るための拠点として発展させてゆく計画です。

システム情報学研究科を設置

もう一つの特徴として、社会が要請する「先端的な研究分野」を切り拓 (ひら) く大学として、迅速にかつ柔軟に組織の改革を実践する点にあります。

みなさん御存知の通り、国家基幹技術としての次世代スーパーコンピュータを用いた高性能計算技術による新興領域・融合領域の創成に関わる人材養成が緊急の課題であり、旧来の学問領域の枠組みを超えた新たな教育システムの構築が、学問的・社会的に強く求められています。このような背景から、神戸大学では、次世代スーパーコンピュータを駆使できる人材の育成や、基礎的な研究を推進するため、新たな教育研究組織である、「システム情報学研究科」を大学院独立研究科として設置し、本年4月からスタートしました。このような分野の研究科は全国で初めてのことであり、旧来の学問の壁を打ち破るフロンティア精神に溢れた人材の養成を目的としています。

もちろんこの分野では、工学系を含む自然科学系の分野のみならず、人文・社会科学、また医学・健康学などの広範な学問分野の結合が強く求められており、先程申し上げましたように、総合性に優れた神戸大学においては効果的に推進できるものと確信しております。

さて、本日の式典では、現在、独立行政法人日本学術振興会理事でおられる小林誠先生をお迎えしております。

小林誠先生は、みなさん御存知の通り、2008年「クォークが自然界に少なくとも三世代以上あることを予言するCP対称性の破れの起源の発見」により、ノーベル物理学賞を受賞されました。小林先生には、この4月から、神戸大学の経営協議会の学外委員にご就任いただくことになり、大学に関し、広くかつ高いご見識を有する有識者として、本学の経営に対し貴重なご意見を伺う機会を持つことができるようになりました。この貴重な機会に、平成22年度の入学式に御講演をいただくことにより、新入生のみなさんに、強い学びへの関心とあくなき探究心へのモチベーションを高めるきっかけをいただければ、何よりも強いインパクトのあるメッセージになることと存じます。

小林先生のご紹介は後ほど、武田廣理事・副学長が致しますのでご期待ください。

夢を見つけ夢を実現する

最後になりますが、現代の世界において我々人類は、地球温暖化などの環境問題をはじめ様々なグローバルな規模の課題に直面しており、先行きの見えない時代を迎えています。

みなさんは、先程申し上げました神戸大学の充実した雰囲気の中で多くのことを学んでください。そして、大学で身に付けた知力を活かして、このような困難な時代を切り開き明るい未来を築いていただきたいと思います。

そのためには、大学生活を送られる間に、将来、「自分のやるべき夢」を見つける努力をしてください。そして、その「夢」を実現するために神戸大学で充分な基礎力を身につけられ、成長されることを祈念し、私の式辞と致します。

平成22年4月6日
神戸大学長 福田秀樹