武田廣学長は、二期目の任期(2019年4月1日から2年)開始にあたって、全国紙の本社を表敬訪問し、経営トップと国立大学法人を取り巻く環境や神戸大学の存在感向上について、意見交換しました。基盤的経費の減少が国立大学の教育・研究環境を劣化させていることを説明し、大手新聞社へこれまで以上に国立大学の経営改善や研究力の向上に関心を払っていただくよう訴えました。

意見交換したのは、読売新聞グループ本社・同東京本社の山口寿一社長、毎日新聞社の丸山昌宏社長、朝日新聞社の渡辺雅隆社長=訪問順=です。

武田学長からは、「削減が続いていた運営費交付金は下げ止まってきたが、基盤的経費から(使用目的が決まっている)競争的資金に置き換わったことで人件費が圧迫され、神戸大学では100人近い教員ポストが失われた」と国立大学法人化後の大学経営の危機的状況を説明。ポストを得ることが難しいために博士課程進学者が全国的に減っていること、短期に成果が見込める「役に立つ研究」が過度に求められる傾向が強まっていることなど、日本の研究力の将来に赤信号がともっていることを訴えました。また、神戸大学としては科学技術イノベーション研究科や大学発ベンチャーを育成するSTE社(株式会社科学技術アントレプレナーシップ)の設立など、挑戦的な取り組みを進めていることを説明しました。

これに対し新聞社トップらは、「学問・研究に短期的な成果だけを問うことは、問題がある」、「(大学に関する政策などで)おかしいと思ったことについては、大学側が毅然と意思表示しなければ、国民に伝わらない」など、国立大学の立場に理解を示し、国立大学自らが社会に対し情報発信する必要性を指摘しました。

また、資金源を多様化するために各大学が企業との提携を模索していることについて、「(企業で基礎的研究を行う)中央研究所を閉鎖してしまったため、多くの企業が大学と研究協力したいと考えている」、「日本の科学技術は米国、中国に大きく差をつけられてしまっており、企業の危機感は強い」など、企業と大学との研究協力の必要性に理解を示す発言がありました。

神戸大学のイメージについては、「西日本勤務を経験するまでは、神戸大学に対して特段のイメージは持っていなかった」と首都圏でのブランド力が高くないことを認めた上で、「(武田ビジョンで)国内5位世界100位以内の研究大学を目指すと宣言したことは、意欲的な目標で、神戸大学の熱意、意気込みを感じさせる」と評価していいただきました。

読売新聞の山口寿一社長と
毎日新聞の丸山昌宏社長と
朝日新聞・渡辺雅隆社長=朝日新聞社提供

(総務部広報課)