神戸大学大学院医学研究科(神戸大学長:藤澤 正人/以下、神戸大学)とエヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:秋山 修二 以下、NTTスマートコネクト)は、パソコン作業ログ等のデータを用いたVDT症候群等の予測・予防に関する共同研究契約を締結しました。

研究の背景

近年、技術革新によりあらゆる業種において業務のIT化が一層進んでいます。これに伴い、パソコンのみならずタブレット・スマートフォン等を含んだいわゆる「VDT(Visual Display Terminals)機器」を使用する業務は多様化・増加し、比例してVDT症候群と呼ばれる眼・筋骨格系・精神症状を伴う症候群の罹患リスクも高まる傾向にあります。

このような状況を受け、厚生労働省により、令和元年7月12日「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン※1」が策定されました。各事業者は、作業環境をできる限りVDT作業に適した状況に整備するとともに、VDT作業が過度に長時間にわたり行われることのないように適正な作業管理を行うことを求められています。また、作業者が心身の負担を強く感じている場合や身体に異常がある場合には、早期に作業環境、作業方法等の改善を図り、VDT作業を支障なく行うことができるようにする必要があります。

作業者の健康状態を把握し早期に適切な措置を取るため、いわゆるVDT健康診断が各検診事業所により施行されています。しかしながら、検診事業所あるいは産業医は、労働状況を自己申告でしか聴取することができないため、正確な労働状況の把握が困難であり、VDT症候群を予防するエビデンスのある明確な基準は現在、存在していません。

※1:(厚生労働省) 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン (PDF形式) 

研究の内容

このような背景を受け、神戸大学(地域社会医学・健康科学講座 疫学分野)とNTTスマートコネクトは、以下を目的とした共同研究を実施します。

  • パソコン作業ログやウェアラブルセンサーからの取得データ等のデジタルデータによる、作業状況の客観的・定量的な把握を行うこと
  • 把握した作業状況とVDT健康診断の結果との関係性を明らかにし、VDT症候群等の予防法を見出すこと

今後の展開

予防法を見出すとともに、パソコン作業ログから業務状況をレポート化するNTTスマートコネクトのサービス「wakucone※2」と組み合わせることにより、予防に値する基準やVDT症候群の高リスク状態を可視化・通知できる仕組みを検討中です。

(活用例)

  • 予防に値する基準に基づき、各事業者があらかじめより適切な作業管理を行うことが可能となる
  • VDT症候群の高リスク状態を把握した時点で、各事業者が早期に適切な措置を取ることができる
  • 各検診事業所および産業医が、問診に依らない受診者の作業状況を把握した上で診断を行うことができる

※2 wakuconeに関するサービスサイト https://www.nttsmc.com/workstyle_ai/

用語解説

VDT(Visual Display Terminals)機器

文字や図形等の情報を表示する出力装置(液晶ディスプレイ、ブラウン管)と入力装置(キーボード、マウス、スキャナー等)で構成される機器のことを指す。具体的には、パソコン、モバイルなど携帯用情報通信機器、監視用の大型表示パネル、店舗などで使用するハンディーターミナル、POS機器などのディスプレイを有する情報機器をいう。

VDT作業

上記の機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業をいう。

VDT健康診断

VDT作業従事者の健康管理のために眼科学的検査(視力、近点距離の測定等)や筋骨格系検査(上肢の運動機能、圧痛点検査等)など特別な検査項目が盛り込まれた健康診断をいう。なお、VDT健康診断が単独に実施されていない場合でも、事業所が実施する定期健康診断の項目に眼科学的検査や筋骨格系検査が含まれている場合には、VDT健康診断を実施したものとみなした。

用語解説引用元: 厚生労働省 平成20年技術革新と労働に関する実態調査結果の概況 主な用語の定義

関連リンク

研究者