ラパザは、緑藻から奪った借り物の葉緑体で光合成して生きる、単細胞の真核生物です。葉緑体のはたらきには多くのタンパク質の「部品」が必要で、多くは核の遺伝情報から作られます。福井工業大学の柏山祐一郎教授と大阪公立大学の中澤昌美講師らを中心とした共同研究チームは、外来葉緑体の内部に宿主(ラパザ)のタンパク質が送り込まれてはたらくことを、生化学的検出と細胞内観察で実証しました。さらに遺伝子操作により宿主の光合成関連タンパク質遺伝子をノックアウトすると、光合成機能が低下し、宿主タンパク質が実際に外来の葉緑体を動かす「部品」になっていることが裏づけられました。これは、外来葉緑体の取込みによる「構造レベルのキメラ化」に加え、それを構成するタンパク質でも「分子レベルのキメラ化」が進行する実例で、既存の生物学の常識にない現象です。新しい実験モデルとしてのラパザは、真核細胞の未知のしくみを解明する突破口になることが期待されます。

本研究の成果は、2026年3月24日付でスプリンガー・ネイチャーから刊行される国際学術誌『ネイチャーコミュニケーションズ(Nature communications)』オンライン版に掲載されました。

参考図: ラパザは、緑藻細胞を細胞内の食胞に「丸呑み」します(貪食:左上写真)。食胞内では緑藻の葉緑体だけが分離されて『盗葉緑体』としてラパザ細胞に組み込まれます[構造レベルのキメラ化]。さらにラパザは、盗葉緑体の内部に独自の「部品」タンパク質を補充して、その機能を維持します。例えば、光合成の過程で二酸化炭素を固定する酵素『ルビスコ複合体』では、構成する部品のうち一部がラパザに由来するユニークな特徴を持つ分子に置きかえられます。盗葉緑体の内部で、緑藻とラパザそれぞれのタンパク質から構成されるキメラ型のルビスコ複合体が形成され(右下写真)[分子レベルのキメラ化]、光合成を支え続けることが示されました。なお、図中の細胞模式図および顕微鏡写真の一部はKashiyama et al., Nature Communications (2026) をもとに改変して作成。© The Authors, CC BY 4.0

詳細(プレスリリース本文)

論文情報

タイトル

“Transient molecular chimerism for exploiting xenogeneic organelles”

DOI

10.1038/s41467-026-70516-x

著者

Yuichiro Kashiyama, Moe Maruyama, Masami Nakazawa, Tsuyoshi Kagamoto, Hiroki Imanishi, Sayaka Yamamoto, Mio Inoue, Ryo Onuma, Goro Tanifuji, Hiroki Ashida, Noriko Inada, Koichiro Awai, Shin-ya Miyagishima

掲載誌

Nature Communications

報道問い合わせ先

神戸大学総務部広報課
E-Mail:ppr-kouhoushitsu[at]office.kobe-u.ac.jp(※ [at] を @ に変更してください)

研究者