就実大学の山田 陽一、小川 和加野、神戸大学の洲崎 敏伸、自然科学研究機構 生理学研究所の村田 和義、島根大学の石田 秀樹、ウクライナ国立科学アカデミー進化生態学研究所のLiudmyla Gaponova、ウクライナ国立科学アカデミー物理学研究所のAndrii Kolosiuk、韓国・釜山大学のChihong Songの研究グループは、実験室で一般的に使用される凍結乾燥装置を用いて、微生物の形態をより自然な状態に近いまま走査型電子顕微鏡で観察できる水凍結乾燥法(Water Freeze Drying:WFD法)を世界で初めて細菌に適用しました。その成果が国際学術誌『Frontiers in Microbiology』に掲載されました。

走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)は、細菌や原生生物などの微細な表面構造を高倍率で観察するために広く使用されています。SEM内部は真空であるため、水分を含む生物試料をそのまま観察することはできません。そのため、従来の試料作製では、グルタルアルデヒドなどによる固定後、エタノールを用いて段階的に脱水し、さらに臨界点乾燥やtert-ブチルアルコール凍結乾燥を行うのが一般的です。

しかし、エタノールなどの有機溶媒を用いた脱水処理では、細胞膜の脂質や可溶性成分が失われることがあります。また、細胞や細胞外マトリクスが収縮し、亀裂や変形が生じる場合があります。このような試料作製中の変化は「アーティファクト」と呼ばれ、観察した形態が微生物本来の構造なのか、試料作製によって生じた変形なのかを区別することが難しいという課題がありました。特に、抗菌剤による細菌細胞の損傷などを評価する研究では、試料作製による変形を、抗菌剤の効果と誤って判断してしまう可能性が指摘されてきました。

生物試料の形態を高い精度で保存する方法として、高圧凍結法が知られています。高圧凍結法では、約200 MPaという高い圧力を加えながら試料を急速に凍結します。この方法に使用する高圧凍結装置は高価であり、操作には専門的な技術が必要です。また、急激な加圧や機械的刺激が、生物試料の形態に影響を与えることがあります。

そこで本研究グループは、有機溶媒による脱水を行わず、水を含んだ状態の試料を凍結し、その氷を直接昇華させる水凍結乾燥法(WFD法)について検討しました。

詳細(プレスリリース本文)

論文情報

タイトル

"Water Freeze-Drying for High-Resolution SEM: An Accessible Strategy for Capturing Native Microorganism Morphology Without Dedicated Rapid-Freezing Systems"

DOI

10.3389/fmicb.2026.1870866

著者

Yoichi Yamada, Wakano Ogawa, Toshinobu Suzaki, Kazuyoshi Murata, Liudmyla Gaponova, Andrii Kolosiuk, Hideki Ishida, Chihong Song

掲載誌

Frontiers in Microbiology

掲載日

2026年8月18日

報道問い合わせ先

神戸大学企画部広報課
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研究者