メラニンによる生体スピンの超高解像解析が拓く量子センシング
このプロジェクトは、分子の構造やゆらぎが、光エネルギー変換過程をどのように制御するのかを理解し量子センシングに応用することを目的としています。光合成をはじめとする生命現象や生命活動におけるエネルギー変換は、ナノメートル領域で起こる分子の構造変化や運動によって決定づけられます。一方で分子は常に揺らぎながら配向を変化させるため、反応機構に直結する決定的瞬間の捕捉は困難です。
本研究では、電子がもつ小さな磁石のような性質である電子スピンに着目し、スピン偏極を計測しそれを磁場方向と対応づけることで、反応途中に生成するラジカルや中間体における分子配向、幾何構造、ならびに構造運動の解析を行います。これにより、従来は観測が難しかった中間体分子の配向状態や反応進行の様相を超高解像度で解き明かし、光エネルギー変換機構の理解に資する情報を提供することができます。
国際共同研究の課題としては、磁気受容(magnetoreception)機構の解明、スピンを介したフォトン・アップコンバージョン機構の検討、ならびに多量子ビット系における電子スピンダイナミクスを支配する分子振動といった要因の理解を中心に進めています。
本研究で培われるスピン計測・センシング技術は、生体環境下での電磁波量子計測へ展開できます。核スピン(NMR)計測への拡張により、水分子などの核スピン情報から微小な流体環境をセンサー分子レベルで捉えられれば、病態に伴う微小変化の検出や、次世代MRIにつながる量子センシング技術への発展が見込まれます。また、CO2排出を伴わない光エネルギー変換技術の実現に向けた基盤的知見の提供も期待されます。



