神戸大学と白鶴酒造株式会社は、「CO2排出量を削減する国産飼料原料開発事業」が2022年8月31日にKOBEゼロカーボン支援補助金制度(※1)の事業として採択され、酒粕の飼料化について共同研究を開始しました。輸入飼料に代わる飼料として、国産の酒粕の活用(地産地消)を目指します。活用が実現できれば、飼料を輸入する際に出るCO2の削減につながります。

背景

現状、国産鶏の飼料の主な原料は輸入に依存しています。しかし、輸入飼料(※2)は海外情勢や原油価格、円安など多くの価格変動リスクがあることに加え、輸送時のCO2排出による地球温暖化促進が懸念されます。したがって、食料の安定供給と環境保全の両面から、飼料の国産化は重要な課題といえます。

一方、日本酒の副産物である酒粕は、粕汁や漬物など食用として活用されてきましたが、形状などが食用に適さないものも発生することから、新たな活用法も模索されています。

研究概要

神戸大学で酒粕飼料を与えている様子

酒粕は、そのままでは水分量が多く鶏の飼料に適しません。しかし、タンパク質含量は乾燥重量あたり40~50%と栄養価が高く、酒粕を効率的に乾燥破砕できれば、輸入飼料と置き換えられる可能性があります。そこで、白鶴が酒粕の乾燥破砕の方法を確立し、神戸大学が鶏肉・鶏卵生産用の飼料としての乾燥酒粕の価値を評価します。

期待される効果

(グラフ) 鶏肉と鶏卵の国産率および自給率

[出典:農林水産省「令和3年度食料自給率・食料自給力指標について」から作成]

  • 食資源の有効活用
  • フードマイレージ(※3)の削減に基づくCO2削減
  • 飼料自給率の向上に基づく食料自給率(※4)の向上
  • 地産地消のフードチェーンの構築
  • 地域ブランド畜産物の開発

白鶴のCSR活動

環境への関心が高まり、企業の社会的な責任として「つくる責任 つかう責任」に、より積極的に取り組むことが求められています。自然や農産物の恩恵を受けて江戸時代から酒造りを続けてきた白鶴は、これまでも、水の保全、CO2排出量の削減、3R(リデュース、リユース、リサイクル)、農業事業などを進めてきましたが、今後も、持続可能な社会の実現のため自然環境と調和した事業を目指します。


※1 KOBEゼロカーボン支援補助金制度

神戸市が、2050年二酸化炭素排出実質ゼロの実現に向け、神戸市内での様々な取り組みを通じてゼロカーボンにチャレンジする市民、団体、法人などを積極的に応援する補助金制度です。

※2 輸入飼料

国産鶏の飼料の主な原料はトウモロコシと大豆粕で、いずれも輸入に依存しています。農林水産省の「令和3年度食料自給率・食料自給力指標について」によると、令和3年度の鶏肉および鶏卵の「飼料が国産か輸入かにかかわらず (飼料自給率を反映しない) 国内生産した割合 [食料国産率]」はそれぞれ65%および96%ですが、「国産飼料のみで (飼料自給率を反映した) 国内生産した割合 [食料自給率]」は、それぞれ8%および13%に低下します (グラフ参照)。

※3 フードマイレージ

食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標で、数値が高いほど輸送にエネルギーを費やし、CO2排出量が多いことを意味します。フードマイレージの少ない食品を選ぶことは、近隣で生産された食料を消費することになり、環境負荷の低減につながります。

※4 食料自給率

農林水産省の「令和3年度食料自給率・食料自給力指標について」によると、令和3年度の我が国の食料自給率は38%でしたが、牛、豚、鶏等に与えている輸入飼料を全て国産飼料で賄うことができれば、この値を47%まで高めることができます。

研究者

SDGs

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