神戸大学大学院人間発達環境学研究科アクティブエイジング研究センターの「鶴甲いきいきまちづくりプロジェクト」グループ (岡田修一教授、原田和弘准教授、片桐恵子センター長ら) は、大学の資源を活用した地域イベントを通じて、高齢者の近隣住民とのつながりや生きがいづくりを支援することに成功しました。今後、より多くの人々へ地域イベントを届け、高齢者の支援に貢献することが期待されます。

この研究成果は、Aging & Mental Health25巻12号に掲載されました。

ポイント

  • アクティブエイジング研究センターのプロジェクト「鶴甲いきいきまちづくりプロジェクト」では、大学の資源を活用した地域イベントを、神戸市灘区鶴甲地区で2013年11月から開催中。
  • この地域イベントへ参加することは、住民同士のつながりづくりを促し、生きがいの維持向上へも望ましい影響をもたらすことを確認。
  • 今後は、地域イベントを広く展開し、より多くの高齢者の支援に貢献することが期待される。

研究の背景

周りの人との豊かな社会的つながりを保つことは、高齢期の生きがいや健康の維持向上に重要です。しかし、高齢期のつながりづくりを促す方法論は、まだ確立されていません。

研究の内容

アクティブエイジング研究センターのプロジェクト「鶴甲いきいきまちづくりプロジェクト」では、大学の資源を活用した地域イベントを開催することで、住民同士のつながりづくりを促し、その結果として、生きがいや健康の維持向上につながるかどうかを検証しました。

このプロジェクトでは、まず、地域イベント開催に先立ち、2013年9月~11月に、大学所在地である神戸市灘区鶴甲地区に住む60歳以上全員1769名へ質問紙調査へのご協力を依頼し、1068名からご回答を頂きました (事前調査)。次に、2013年11月より、施設や教員の専門知識など大学の資源を活用した様々な地域イベントを (写真参照)、月1回程度のペースで開催しました。地域イベントの詳細は、Webサイト* で公表しています。続いて、2017年1~3月に、事前調査へご回答頂いた1068名へ、質問紙調査へのご協力を再度依頼し、686名からご回答を頂きました (3年後調査)。

*鶴甲いきいきまちづくりプロジェクト~アクティブエイジングを目指して~ (発達科学部・人間発達環境学研究科 HP)

写真 開催した地域イベントの一例

両調査の回答を分析した結果、地域イベント参加者は、不参加者と比較して、3年間で鶴甲地区内でのつながりが高まり、生きがい感の低下を抑制されていた傾向にあることが確認されました (下図)。ただし、地域イベントへの参加と、健康状態の変化との関連性は明らかになりませんでした。

図 地域イベントへの参加がつながりと生きがい感へ及ぼす効果 (性別や年齢などの基本属性の影響は統計的に補正)

このことから、大学の資源を活用した地域イベントは、高齢者の近隣住民とのつながりや生きがいづくりに寄与する方法論の1つであることが明らかとなりました。

今後の展開

新型コロナウイルス感染症の流行により約1年半の中断時期がありましたが、今日まで地域イベントの開催を続けています。今後は、他の地区へも展開していくことで、より多くの人々を支援できるようになると期待されます。

謝辞

この研究は、日本学術振興会科学研究費 (24240093、15KT0006、18H05298)、神戸市灘区大学と連携したまちづくりチャレンジ事業助成、および神戸大学大学院人間発達環境学研究科若手研究推進支援経費の補助を受けて実施されました。

論文情報

タイトル
Three-year effects of neighborhood social network intervention on mental and physical health of older adults
DOI
10.1080/13607863.2020.1839858
著者
Harada K, Masumoto K, Katagiri K, Fukuzawa A, Touyama M, Sonoda D, Chogahara M, Kondo N, Okada S.
掲載誌
Aging & Mental Health誌 25巻12号2235-2245頁

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研究者