バイオバンク・ジャパン、東北メディカル・メガバンク計画、ナショナルセンターバイオバンク・ネットワークなどが参画して運用してきたバイオバンク・ネットワークに新たに、神戸大学医学部附属病院バイオリソースセンター、信州大学医学部附属病院バイオバンク信州の2つのバイオバンクが参画しました。両バイオバンクは、日本医療研究開発機構(以下、AMED)の研究プロジェクト「ゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(ゲノム医療実現推進プラットフォーム・ゲノム研究プラットフォーム利活用システム)ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク利活用促進に向けたバイオバンク・ネットワーク構築と運用支援に関する研究開発」の代表機関である東北大学東北メディカル・メガバンク機構が実施した公募に応募し、審査を経て参画しました。

両バイオバンクの参画により、同ネットワークにより運用されてきたバイオバンク横断検索システムの対象が拡大し、9機関14のバイオバンクの試料・情報が対象となり、より充実したシステムとなります。

ポイント

  • これまで日本全国の7機関12のバイオバンクで構成していたバイオバンク・ネットワーク*1に、神戸大学医学部附属病院バイオリソースセンター、信州大学医学部附属病院バイオバンク信州が、新規参画しました。
  • 両バイオバンクの参画により、同ネットワークで運用されてきたバイオバンク横断検索システムの対象に、2機関の試料・情報が新たに追加され、より充実したシステムとなります。
  • 日本の9機関14のバイオバンクが連携し、バイオバンク・ネットワークにより膨大な疾患・健常者両方の試料・情報が集められるようになりました。利用者の利活用対象が一層広がることで、一人ひとりの体質に合わせた個別化ヘルスケアの実現を加速させます。

背景

2018年度、AMEDは、ゲノム医療実現に向けた研究推進のために、バイオバンクの横断的な試料・情報の利活用促進環境を整備し、オールジャパンのプラットフォーム「ゲノム研究プラットフォーム利活用システム」構築を支援する事業を開始しました。これは、日本の3大バイオバンクである、バイオバンク・ジャパン(以下、BBJ)、東北メディカル・メガバンク(以下、TMM)計画、ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(以下、NCBN)を中心に、それらを補完する特色を持った中核的な大学病院等の診療機関併設型バイオバンクを加えてネットワーク化を実現し、試料・情報の横断的な検索及び標準的かつ効率的な利用手続きを可能とすることにより、研究基盤としての利活用環境を整備するものです。これらの取り組みにより、研究の性質や規模に合わせた適切な試料・情報の利活用を可能とし、ゲノム医療研究の推進と加速に対する貢献を目指しています。


東北大学東北メディカル・メガバンク機構(以下、ToMMo)は、上記事業の研究開発課題の一つとして事業事務局を務め、バイオバンク・ネットワークの構築と運用支援に取り組んできました。2019年10月には、日本の主要なバイオバンクの試料・情報を横断して検索可能なシステム「バイオバンク横断検索システム」を公開し、その運用・高度化を進めながら、7機関12バイオバンクの協力のもと、バイオバンク横断検索システムの利用者ニーズの抽出と利便性の向上、バイオバンク・ネットワークの利活用促進のための情報発信、バイオバンク利活用ハンドブックの発行、バイオバンク運営者や利用者向けのフォーラム等の開催にも尽力してきました。バイオバンク横断検索システムでは、49万人の協力者から提供された、92万検体の試料、25万件の解析情報が検索対象となり、その利活用促進のための運用支援が進展しています(数値は2022年現在)。

今回の拡大の概要

今回、新規参画した以下の2つのバイオバンクは、いずれも診療機関併設型のバイオバンクです。

  • 神戸大学医学部附属病院バイオリソースセンター
  • 信州大学医学部附属病院バイオバンク信州

両バイオバンクの参画は、研究プロジェクト「ゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(ゲノム医療実現推進プラットフォーム・ゲノム研究プラットフォーム利活用システム)ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク利活用促進に向けたバイオバンク・ネットワーク構築と運用支援に関する研究開発」の公募に対する応募によるものであり、審査を経て2022年3月に決定しました。

両バイオバンクの概要は以下の通りです。

  • 神戸大学医学部附属病院バイオリソースセンター
     2019年4月、神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター内に「神戸大学医学部附属病院バイオリソースセンター」を設置し、2020年6月より運用を開始。研究・開発におけるニーズをあらかじめ聞き取り、ニーズに沿ってヒト検体とこれに伴う医療情報を収集していく、ニーズドリブン型バイオバンクであることが特徴です。
  • 信州大学医学部附属病院バイオバンク信州
     2019年9月、信州大学医学部附属病院はがんゲノム医療拠点病院に選定されたことを機に「バイオバンク信州」を設立し、2020年8月から運用を開始。産婦人科対象のがん組織の試料と診療情報の収集からスタートしており、対象疾患の拡大に向けて運用しています。

今後の展望

AMEDゲノム研究プラットフォーム利活用システムによるバイオバンク・ネットワークの構築は4年が経過しました。今回、新たに2機関が参加し、9機関14バイオバンクの試料・情報を、産業界、アカデミア、また、より広く基礎系の研究者からの利活用に際する期待に応えて、バイオバンク横断検索システムと検索結果に基づく利用申請のWebシステムの提供、コーディネート機能の高度化を進めていきます。


1)バイオバンク横断検索システムの高度化
 最大の財産であるデータのさらなる拡大を行うと共に、品質管理に対する考え方の共通化、標準化を進めています。また、詳細な医療情報を順次追加し、バイオバンク・ネットワークの連携ならびに情報発信を担っていきます。
2)利用申請システムの提供
 横断検索システムの検索結果を用いて、スムーズに利用申請が可能なように、バイオバンク・ネットワークに参画するバイオバンクの試料・情報の、利用申請システムを準備しています。利用申請の手続きについてもできるだけ共通化することを目指しています。
3)コーディネート機能の高度化
 利用者側ニーズのさらなる収集、医療情報に関する問合せへの対応の充実、更に相談窓口でのコーディネート、キュレーター人材の適切配置や育成を通じて、バイオバンクの利活用におけるコーディネート機能を高度化していきます。また、利活用の手続きを含めた標準化・簡素化を実現し、他の横断的なシステムやデータベースとの整合性や相互補完を目指します。

また、バイオバンク利活用における倫理審査の標準化のために、中央一括審査をバイオバンク側で担える体制構築を進めながら、昨今の相次ぐ個人情報保護法の改正等による影響にネットワーク全体で対処していきます。

バイオバンク横断検索システムについて

バイオバンク横断検索システムは、バイオバンク・ネットワークに参画するバイオバンクの保有する試料・情報を横断的に検索できるシステムです。バイオバンク横断検索システムは、下記のサイトからアクセスできます(要登録)。

参考

研究プロジェクトについて

研究開発代表者: 荻島 創一(東北大学東北メディカル・メガバンク機構)
事業名: ゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム
プログラム名: ゲノム医療実現推進プラットフォーム・ゲノム研究プラットフォーム利活用システム
研究開発課題名: ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク利活用促進に向けたバイオバンク・ネットワーク構築と運用支援に関する研究開発

新規参画バイオバンク


バイオバンク・ネットワークに参加するバイオバンク(2022年3月現在)

  • バイオバンク・ジャパン (BBJ)
  • 東北メディカル・メガバンク計画(TMM)
  • ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク (6NC)
    • 国立がん研究センター(NCC)
    • 国立循環器病研究センター(NCVC)
    • 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
    • 国立国際医療研究センター(NCGM)
    • 国立成育医療研究センター(NCCHD)
    • 国立長寿医療研究センター(NCGG)
  • 京都大学医学部附属病院クリニカルバイオリソースセンター (KUB)
  • 東京医科歯科大学疾患バイオリソースセンター (TMD)
  • 筑波大学附属病院つくばヒト組織バイオバンクセンター (THB)
  • 岡山大学病院バイオバンク (OBB)
  • 神戸大学医学部附属病院バイオリソースセンター(KBR)
  • 信州大学医学部附属病院バイオバンク信州(BBS)

用語解説

*1 バイオバンク・ネットワーク:
AMEDによるプロジェクト「ゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム(ゲノム医療実現推進プラットフォーム・ゲノム研究プラットフォーム利活用システム)」を基盤に、日本の9機関14のバイオバンク(2022年3月現在)が加入しているネットワーク

(医学部附属病院)