平成28年1月4日

神戸大学長 武田 廣

新年明けましておめでとうございます。皆様方におかれましては、良いお正月を迎えられたことと存じます。

昨年4月に新しい神戸大学執行部がスタートし、未来に向けて「卓越研究大学」を目指すとした新ビジョンを発表するとともに、第2期中期目標・中期計画の最終年度として、様々な取り組みを行ってきました。まず、昨年1年間における本学の主な動きを振り返ってみたいと思います。

施設整備に関しては、「先端膜工学研究拠点棟」及び「統合研究拠点アネックス棟」の竣工があげられます。後者では、経済産業省が所掌する「次世代バイオ医薬品製造技術研究組合GMP施設」が活動しております。教育インフラとしては、念願の「鶴甲グラウンドの人工芝化」が達成され、全学的には、学生の自学自習を促す「ラーニング・コモンズ」の整備が順調に進んでおります。

研究の活性化を目指して、野心的なセンターが設置されました。「神戸大学海洋底探査センター」及び「3Dスマートものづくり研究センター」です。また、JAXA宇宙科学研究所の「大学共同利用連携拠点プログラム」に採択されたことも特筆すべき成果であります。

地域との連携に関しては、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」ならびに「世界に誇る地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)推進プログラム」に採択され、地方自治体、大学、研究機関との連携を推進しています。

国際化への取り組みとしては、神戸大学ブリュッセルオフィス・第6回シンポジウムを開催するとともに、協定校の協力を得て、「神戸大学ポーランド拠点」及び「ハノイ神戸大学連絡拠点」を設置することができました。また、恒例の神戸大学グローバルリンク・フォーラムが国立台湾大学で開催され、同窓会には台湾全土から110名を超える卒業生が参加し、おおいに盛り上がりました。

さて、国立大学法人の第3期中期計画・中期目標に向けての最大の懸案は、運営費交付金の扱いでした。過去12年間、削減係数・効率化係数の名のもと、年約1%の削減がなされ、大学運営は既に苦しい状況に陥っております。昨年示された財務省からの原案は今後15年間に渡って、さらに年1%を削減するという厳しい内容でした。これに対して、国立大学に於ける教育研究体制を守るために、各大学、国立大学協会、衆参国会議員により構成された「国立大学振興議員連盟」等によって、文部科学省、財務省への必死の働きかけが行われてきました。

その結果、平成28年度の運営費交付金は、27年度と同額とするという成果を得ました。ただし、大学の3分類、人件費比率に基づいて、新たに0.8%~1.6%の機能強化促進係数が設定されました。「世界最高水準を目指す」15大学には一律に1.6%が適用されています。そして、この機能強化促進係数で得られた財源と他の財源を合わせて「機能強化経費」が設けられ、各大学は今後も厳しい獲得競争に晒されることになります。

神戸大学に対しては、年末ぎりぎりに運営費交付金予定額が提示されました。詳細は精査中ですが、平成28年度に関しては、危機的な状況は回避できたと思っています。関連部署の尽力に感謝いたします。しかし、現在進めている機能強化の取り組みを着実に実行すること、新たに進めている機能強化の計画を実のあるものにする努力を怠れば、神戸大学は荒海の中に沈んでいくという危機感は持ち続けていただきたいと思います。

ビジョンで掲げた「卓越研究大学」を目指して、構成員の皆様とともに進んで行く決意を新たにして、新年のご挨拶とさせて頂きます。