2022年01月06日

神戸大学長  藤澤 正人

皆さま、明けましておめでとうございます。

皆様方におかれましては穏やかな良き新年をお迎えになられたことと存じます。ゆっくりと日頃の疲れを癒し、休息をとることができましたでしょうか。

昨年は、年明け早々緊急事態宣言、今年は海外でオミクロン株が急拡大し猛威を振るっており、日本でも流行の兆しが現れこの先不透明な状況になってきていますが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、学長就任以来、あっという間に9か月がたちました。その間、新型コロナ禍にもかかわらず大きな問題も生ずることなく、新しい年を迎えることができました。日頃の教職員の方々のご支援とご協力に心より感謝申し上げます。とりわけ、この2年間、附属病院の教職員の皆様の新型コロナ感染の中でのワクチン接種を含めた献身的な診療業務遂行に改めて敬意を表します。

 

昨年、一年間、まずは、大学の運営基盤の整備として理事間の情報共有体制、意思決定体制、研究教育組織や制度の整備、そして大学広報、ブランディングの強化に取り組みながら、精一杯様々な事業を進めてまいりました。引き続き、多面的な改革が必要であると思っていますが、一日一日、少なくとも一歩前に進めるようスピーディに着実に実行して参りたいと思っています。

昨今、世界情勢はめまぐるしく変化し、新型コロナ感染、経済の低迷、貧困格差問題、人権問題など課題は多い中、国同士の関係も一部では緊張が続いています。日本においても国際問題における対応や新型コロナ感染が未だ収束することなく様々な問題が生ずる中で昨年10月には新たな岸田政権が誕生し、成長と分配の好循環に力点を置いた新しい資本主義が打ち出されました。大学においても研究教育活動にさまざまな影響を受けていますが、神戸大学として知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点を目指して、その実現に向け教育研究の活性化と財源確保に邁進して参ります。

ご存じの通り、本年3月で第3期が終了し、4月からは第4期が始まります。昨年末、第4期に向けて新たな大学の枠組みと予算配分が決定されました。大学の区分は3つから5つとなり、第3期神戸大学が属している重点区分③の16大学は、指定国立大学9大学からなるグループ④とそうでない7大学からなるグループ⑤に分けられました。神戸大学は、グループ⑤となり、北大、東京農工大、千葉大、岡山大、広島大、金沢大と同じ枠組みになり、第4期は北大を除き同じような規模の大学が僅差で競争することになります。運営費交付金は、総額10,786億円で4億円減ですが、特殊要因を除く基幹運営費交付金は実質14億円プラスとなりました。一方で、共通指標による傾斜配分は継続され、前年度と同じ1,000億円となり、共通指標として、若手研究者、TOP10%論文、研究業績、科研費、共同研究・受託研究、ダイバーシティなどある程度予測していたものになっていますが、配分額の決定はこれからです。ただし、評価による配分率は75%~125%に広がり、傾斜配分がさらに厳しくなっており、大学として共通指標達成に向けより一層の努力が必要です。

また、第3期とは違い第4期では、ほぼすべての中期目標、中期計画に対してKPIとして数値目標の設定を求められており、このKPIの策定につきましては1月末に最終版を文科省に提出する予定です。各部局、センターにお願いしておりますKPI指標達成に向けた取り組みは、決して部局を締め付けるためものではなく、あくまで大学間競争の中で大学の教育研究活動の向上に向けひとりひとりの成長を促し、少しでも多くの財源を大学として確保するための対策として重要なものであり、是非、前向きにとらえて頂きご理解ご協力を賜りたいと思います。実際、この中期計画・中期目標の達成度評価によっておそらく上位30校ぐらいに総額30億の法人運営活性化支援分が分配されています。第3期においては本学には配分がありませんでしたが、今回、第4期においては第3期の中間評価に基づいて本学にも予算が配分されます。引き続き、大学の継続的発展のための財源を確保できるよう第4期のKPI指標達成においてもご支援をよろしくお願いします。一方、第4期では、第3期における機能強化促進経費分の後継予算としてミッション実現戦略分202億が確保され、神戸大学には第3期の機能強化分に近い額が第4期6年間を通じて配分されることとなりました。ただし、これは、ミッション実現加速化係数により各大学の基幹経費予算を削減して捻出したものであり、グループ⑤の神戸大学の今回のミッション実現加速化係数は、第3期の機能強化係数と変わらず1.6 %と厳しいものとなりました。また、このミッション実現戦略分は、社会的インパクトの観点から中間評価がありますので、予算が配分されたミッション実現プロジェクトについてはそれぞれの部局がその特色と強みを活かし、しっかりと遂行して頂くことをお願いいたします。教育研究組織改革分では、DX推進拠点、未来医工学研究開発センター、国際膜研究拠点の3事業、施設整備実施事業においては図書館改修、六甲台、楠のライフライン再生、六甲台の急傾斜地安全対策、深江の総合研究棟の改修などの予算が措置されており、新規事業の活性化と学内施設の老朽化、安全対策が進むことを期待しています。

一方で、引き続き科学研究費、共同研究費、大型助成金、寄附金等、外部資金をしっかりと獲得していくことも教育研究を活性化するうえで重要であることは言うまでもありません。大学運営の自由度を高める外部資金の獲得は、新事業の創出や事業の継続には必須であり、大学における財の循環のための大きな源泉です。神戸大学の令和2年度の総収益は約800億、その半分は病院収益350億、運営交付金が約200億、外部資金が153億、ただし新型コロナ助成金22億を除くと外部資金は130億程度で運営交付金に対する外部資金比率は約65%です。上位校は、外部資金比率はもっと高く、神戸大学としても第4期終了時には外部資金比率は約80%、160億を目標にしています。規模的にも研究実績からしても神戸大学には、そのポテンシャルは十分にあると私は信じています。皆さんも耳にされている国の10兆円ファンド構想の件ですが、それを利用できる特定研究大学の要件が現在検討されています。ただ、神戸大学にとっては非常にハードルの高いものになるのは間違いありません。一方で、神戸大学としては、地方大学支援パッケージの枠組み予算を注視してあらたな研究教育事業に向けての予算確保をしっかりとしないといけません。是非、補正予算、概算要求事業に、全学、部局で頑張って申請に取り組んでいきたいと思います。すでに補正予算として新型コロナ感染症の拡大防止、ウィズコロナ下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え、未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動などにおいて様々な予算が組まれています。

また、財源確保のみならず個々の研究者の教育研究活動を支援する制度や環境を整備することも重要と考えています。これから、本学の来年度予算の策定に取り組んでいきますが、選択と強化を基本として昨年度制定した評価制度に従い、ヒアリング、評価委員会、予算委員会のもと検討していきたいと思います。研究者や部局のインセンティブに関しては、昨年度、外部資金の活用制度をいくつか策定しました。共同研究費等の外部資金からPI等人件費を支出する制度、バイアウト制度、外部資金増加率に応じた間接経費分配率など、これらは研究者がより研究に専念できるよう、そして研究者や部局の研究費獲得へのモチベーションが向上するよう設けた制度ですので大いに活用して頂きたいと思います。この4月に学長裁量分として部局から供出される2%分の人事ポイントの活用についても大学の研究教育の活性化に向けて制度設計をして参ります。そのひとつとして、まずは、これからの大学を支える優秀な若手教員が輝く制度を作りたいと思っています。さらに、学内のデジタル環境の整備も喫緊の課題であり、研究教育活動、それを支える事務業務に関わるシステム充実のためにしっかりと投資し、デジタル化を加速したいと思います。また、ポストコロナに向けて豊かなコミュニケーション、出会い、優しさ、幸せを提供できるインクルーシブキャンパス&ヘルスケアセンターを整備中であり、ひとりひとりが満足できる教育研究・就労環境にしたいと思います。

研究におきましては、昨年度研究シーズ集をみなさんの協力によって整備しましたが、すでに設置されている先端的異分野共創研究推進室、及び異分野共創研究企画・創出委員会において学内の研究資源を有効活用し、相乗効果を高めて神戸大学の新たな強みとなる異分野共創研究を作り出す取り組みを加速させ全学的にフラッグシップとなる研究を育てていきたいと思っています。また、基盤的な研究機能の強化や世界トップレベル研究拠点(WPI)への挑戦、産官学連携本部、KUI、OI機構のさらなる整備により産官学連携を推進して地元企業、自治体との連携を強めて産官学連携プラットフォームを再構築し、共同研究・受託研究やSDGsに向けた取り組みを推し進めるとともに、ポートアイランドに集積してきた神戸大学の様々な卓越研究拠点をさらに発展させ、デジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパークとして連携・強化していきたいと思います。さらに、産官学連携本部内に設置したアントレプレナーシップセンターにより若手研究者や学生等の起業家精神とチャレンジ精神を養うとともに神戸大学ファンドの活用により傑出した知を価値化できる大学発ベンチャーの創出を促進したいと思います。

教育におきましては、新型コロナ感染の影響により対面授業はいまだ60%程度ですが、感染状況を考慮しながら徐々に対面授業を増やし日常を取り戻していくとともにポストコロナを見据えオンラインやハイブリッド授業の有用性を活用した学生にとって利便性の良い質の高い教育を構築していきたいと思います。また、次世代研究者挑戦的研究プログラム、大学フェローシップ創設事業などの博士課程の学生支援事業は、大学ひいては日本の研究力の向上に繋がっていく重要な博士人材育成事業であり大学としても昨年設置した大学院博士支援推進室を中心に博士学生支援総合パッケージとして重点的に支援をしていきたいと思います。また、新型コロナの感染状況によりまだまだ不透明ですが、できる限り国際共同教育、海外派遣を推進しさらなるグローバル化に向け努力していきたいと思います。さらに、2017年に設置された数理・データサイエンスセンターは、着実に発展してきており、その体制をさらに強化し今年度からは全学の必須科目としデジタル社会へ適応できる多様な能力を備えた人材を育成するとともにリカレント教育にも貢献できるようさらに充実させて参ります。また、時代を見据え社会に求められる優秀な実践的人材を育成し、社会に貢献できる研究大学へと進化するために大学改革、新領域の創出は必須と考えており、来年度には医学・工学領域の共創研究教育のための医療創成工学専攻や学科の設置、システム情報学研究科の改組を予定しており、時代の流れを先取りできるよう努めて参ります。

 

今年は、神戸大学創立120周年を迎え、12月には記念式典の開催を予定しています。現在取り組んでいる寄附金による具体的な事業についても計画を進めて参ります。教職員の皆様の引き続きのご支援をよろしくお願いします。また、卒業生の同窓会への関心が低下する中、卒業生に大学への愛着、誇りを持ち続けてもらえるよう全学一丸となって取り組める神戸大学校友会(KU ALUMNI)を構築し、同窓生の横の繋がりを強化したいと思っています。

学生諸君にとっては、学修、課外活動、アルバイト、生活環境など様々な事において本当につらい2年間なっていると思います。教職員として皆さんの教育の質や生活環境の維持に全力で取り組んでいきたいと思います。一方、この新型コロナ感染下においても学生諸君の課外活動での活躍は素晴らしいものがありました。硬式野球部は、明治神宮野球大会への初出場は叶いませんでしたが、近畿学生野球連盟秋季リーグ1部で35年ぶり9回目の優勝を決めました。また、フィギアスケート部の壷井君が、国内最高峰の大会である第90回全日本選手権大会で9位(ジュニア2位)と大健闘をしました。心から賛辞を贈るとともに今後のさらなる活躍に期待したいと思います。まだまだ、新型コロナ感染の状況は不透明で学生諸君にとっても苦難が続きますが、それに負けずに今年も学業、そしていろんなことに挑戦してほしいと思います。

最後に、神戸大学は知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点を目指しています。昨年度、策定したKU VISION 2030を教職員の皆さんと共有し、神戸大学のさらなる発展に向け産官学連携をさらに強化するとともに個々の研究教育活動を活性化するために教職協働で一丸となり、オール神戸大学でポストコロナを見据えて頑張っていきましょう。

本年も、皆さんのご支援ご協力を切にお願い申し上げ新年のごあいさつとさせて頂きます。

「令和4年度新年交歓会(2022年1月6日)」