
皆様、明けましておめでとうございます。
皆様方におかれましては穏やかな良き新年をお迎えになられたことと存じます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
今年は、年末年始、9連休と長い休みとなり、皆様方におかれましてはそれぞれに有意義な休暇を過ごされたのではないかと存じます。
私にとりましては、今年は学長2期目、2年目の年となります。心新たにして身を引き締め、大学において山積している様々な課題にスピーデイに、着実に、確実に取り組み、大学の発展のために引き続き頑張って参りたいと思っています。
さて、国立大学法人化後、神戸大学では、これまでに運営費交付金は約40億削減される一方で、人件費は約100億円増加し、さらに物価高騰により大学の基盤的運営費や電子ジャーナルをはじめとした教育研究基盤経費、情報関連システムの更新並びに維持費、建物老朽化に対する施設・設備経費などが毎年、増加しています。また、教育研究における国内外大学間競争、人材獲得競争など大学を取り巻く環境も厳しさを増してきています。このような状況の中でこれまで本学が着実に前進してこられているのは、日々教育・研究・診療・管理運営に懸命に取り組んでくださっている教職員、医療スタッフの皆さん一人ひとりの努力の賜物です。心より感謝申し上げます。今後、大学の教育・研究・運営に必須である運営費交付金の国からの配分方法が、どのようになっていくか不透明ですが、大学として自らが基盤的交付金以外の国の大型の競争的資金、共同研究、寄附金等の外部資金を確保していくことが大学の安定的な運営・発展に重要であることに変わりはありません。
令和4年4月から始まった第4期中期目標・中期計画期間も5年目の年となり令和7年度末には中間評価を迎え、残り2年となります。第4期初めに設定した第4期KPIの達成度評価は、この令和7年度末の中間評価が非常に重要で最終評価に大きく影響します。また、この最終評価は、第5期に配分される運営費交付金にも大きく影響しますので大学の継続的発展ために令和7年度最後の3か月間、中間評価KPIの達成に向けて皆さんのご協力をよろしくお願いします。
この先、大学を取り巻く環境はさらに大きく変化していくと思いますが、学問の自由を尊び、真理を探究する基礎科学と応用科学の実践、人材育成、社会貢献を使命とする大学の本質は決して変わりません。学長就任時に掲げた大学のビジョン、KU VISION 2030: 知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点をめざして教育研究の活性化に取り組んで参ります。そのためにも社会における様々な情報、時代の流れをしっかり掴み、従来の研究教育の枠組みを超えて、人文・人間・社会科学と自然科学・生命科学の共創・協働により、社会から求められる不断の改革を進めて参ります。そして、学内の潜在的な卓越したすべての領域の研究教育資源を効率的に活用し、地域社会を含めた異分野で共に創る、有機的な共創研究教育基盤を強化し、新規性、独創性のある、そして傑出した研究教育事業を創出・推進し、知の創造と人材育成に努め社会に貢献するとともに継続的な強い自律的経営基盤を作って参ります。さらに、少子化が加速し、18歳人口が毎年減少し、2040年には今の70%になるなかで神戸大学として研究・教育・経営において発想を大きく転換してアイデアを出し合い、先を見据えた改革に取り組んでいかなければなりません。
これまで、研究においては、基礎科学と応用科学を両輪とした強い国際競争力を持った先端的研究基盤の強化と産官学連携に取り組んできましたが、この数年間とくにバイオものづくり、膜工学、医工学、健康長寿、社会システムイノベーション研究拠点を中心としたデジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパーク(DBLR)が大学成長のエンジンとして、着実に発展してきました。「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」のもと地域中核研究大学として、バイオものづくり研究とグローバル卓越人材の育成を強化して、DBLRにおける様々な先端研究をさらに発展させ、全学的な横展開により研究の質向上を図り、グローバル・イノベーションキャンパスを目指します。事業当初、10年後の目標としていた大学の総事業費1000億(令和5年、879億)を令和6年度末、すでに超えており急速に事業拡大が図られています。昨年10月には、バイオものづくり共創研究棟が神戸大学統合研究拠点の北側に開設され、一昨年に設置した産官学連携本部棟の北側のバイオメディカルメンブレン研究棟、国際がん医療・研究センターに隣接したメドテックイノベーションセンターと連携し、バイオメディカルクラスターの構築・発展に向けて研究・開発に取り組んでいます。これら研究施設に、国内外から優秀な人材を結集させるとともに、社会システムイノベーション拠点とも連携し、社会的な課題を解決しながら国際的な先端研究のさらなる活性化とイノベーション創出・社会実装を進め、持続的なエコシステムを築いて参ります。また、これらに加えて、名谷地区には、2027年に企業との連携によりCCRC(Continuing Care Retirement Community)構想の下、健康とまちづくりに繋がる健康長寿教育研究棟(仮)の建設を予定しています。今後も、研究大学としてさらに発展するために新たな研究施設・設備を充実させ、堅固な成長基盤を育成していくことが非常に重要です。そのひとつとして昨年、「地域大学のインキュベーション・産学融合拠点の整備」事業として光ものづくり拠点を整備しており、4月には光先端基礎科学や光ものづくりを目指したライフ光学イノベーション研究センターを設置します。また、共創の場COI-NEXT事業にも採択され、産官学によりナノ粒子塗料ナノコーティング技術による環境未来都市構想を進めます。さらに、半導体研究開発拠点、水素・未来エネルギー研究拠点、スマート農業やウェルネスプランツ研究事業などを始めとした本学として強みと特色のある様々な研究技術が世界的な研究開発拠点となるよう支援するとともにスタートアップの育成にもつなげます。そして、優秀な若手研究者による異分野共創研究が文系、理系の様々な領域から育ってきており、大学の研究の新たな芽が将来のフラッグシップとなるよう継続的にしっかりと積極的な投資をしていきたいと思います。
教育においては、急速に少子化が進むなか、従来の大学教育推進機構を改組して高等教育推進機構を設置して、統括戦略室を中心により優秀な学生の獲得と質の高い教育を提供し、社会に役立つ実践的卓越人材と優れた研究者の育成に向けた改革にしっかりと投資をして取り組んでいきます。2040年の労働需要から大学文系、院卒文系の学生は、過剰となり、大学理系、院卒理系は不足すると予想されており、大学としてもそれを踏まえて対応することが迫られており、入試改革、学部教育、大学院改革、国際教育などにおいて対策を講じていかねばなりません。すでに多くの大学が、入試において様々な工夫をして優秀な学生を確保しようと努力しています。本学でも、一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜、それぞれについて各部局でしっかりと検討し、社会情勢も踏まえて多様性、独自性のある学部入試改革を進め、臨機応変に対応していく必要があります。また、学部教育においては、現在の共通教育のあり方を検討し、システム情報学部で行われている反転教育や多様性のある学びをさらに学内で進めていくことも必要であると思っています。そして、未来を切り開く世界最高水準の研究大学として生き残るために大学院教育の強化・改革を進めることは必須であり、学生に求められ、社会に評価される大学院組織改革、カリキュラム改革、経済的支援、キャリア支援、国際支援など、様々な取り組みを推し進めます。具体的には、今後、学部・大学院定員を適正化し、学部から大学院への収容定員、資源のシフト、大学院修了の標準化を視野に入れた検討、教育研究組織の大括り化、柔軟性のあるカリキュラム、他法人との連携も考えていかねばなりません。とくに、大学院における優秀な博士人材の育成は、大学の研究力を高める次世代の卓越研究者や高度専門職業人を増やすために非常に重要であり、大学院教育改革推進室を中心に改革を加速し、少なくとも今の1.7倍以上の定員に増やしたいと思います。すでに、早期学位取得制度、学部大学院博士一貫教育プログラム、幅広い学びができる多様性のある異分野共創教育の構築に取り組んできており、高度情報専門人材育成に向けたシステム情報学部研究科一貫教育、医学工学融合領域での共創研究教育を行う医療創成工学専攻、医療創成工学科が新たに始まっています。昨年の11月には、システム情報学部には、新学舎である情報価値創造教育棟も完成しました。今後、4月には医学研究科と保健学研究科が統合されますが、さらに先端的異分野共創研究を推進する科学技術イノベーション研究科の拡充、自然科学系の研究科の一研究化などの組織改革を始めとした大学院教育の充実に向けた様々な改革に人と資金を投入して強力に推し進めて参ります。
また、国際教育においては、4月から学内グローバル教育体制を改革し、留学生の入口から出口まで一貫した受け入れ支援、本学学生の海外派遣支援を強化するとともに、キャリアパスの支援も含めさまざまな支援活動を高等教育推進機構のグローバルエンゲージメントセンターで一括して支援・管理します。さらに、海外との交流・連携活動を推進する国際共創推進本部を設け、海外大学や海外同窓会との連携を強化し、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいても中国のみならず東南アジア、インドなどの学生のリクルートを強化し、2030年に外国人留学生、現在の2倍、約3500人を目指したいと思います。また、日本人学生の海外留学生を2030年に現在の2倍、約2600人とし、将来は全員に何らかの海外経験を積ませるようにしたいと思います。そして、現在、大学院中心の留学生受け入れを学部でも増やしていけるように学部におけるグローバル教育体制の改革・強化を進めていくとともに外国人教員を増やしていく必要があります。
大学院生の経済的支援については、博士課程学生に次世代研究者挑戦的研究プログラム:SPRINGや次世代AI人材育成プログラム:BOOSTをすでに施行していますが、修士課程から博士課程に進学する学生にも修士からの経済的支援を今年から大学の基金も活用して拡充し、博士課程への進学を促して参ります。また、みらい開拓人材育成センターにおいて、小、中、高との連携を深め、柔軟性のある専門的な研究能力、課題解決能力を涵養し、早期から博士を志すことにつながる教育を進めて参ります。
さらに、博士課程修了後のキャリアパスについても、次世代を支える優秀な若手研究者、若手教員が、熱意をもって研究に専念できるような環境を引き続き整えていきます。これからの神戸大学を担う若手研究者が、失敗を恐れず、新しい分野や挑戦的な取り組みに積極的に踏み出せるよう様々な支援を考えていきたいと思っています。現在、行っている優秀論文表彰、若手の研究者、教員の雇用支援制度や優秀な若手教員が輝ける卓越教員制度を継続して参ります。とくに、ダイバーシティ推進の観点から女性限定の教員雇用や女性教員(准教授、教授)の昇進支援を加速し、全学における若手や女性の研究者の活躍を強力に支援したいと思います。また、大学の知の還元に向けてリカレント教育事業もリカレント教育推進室を中心に全学的に充実してきており、今後も大学の重要な社会貢献事業として支援し推進して参ります。
大学の研究教育経営体制においては、昨年、大学未来戦略構想オフィスを設置し、IRに基づいて教育・研究・経営の戦略を立て、教育研究機能の強化を図っています。遅れている教育・研究・業務におけるDXの推進、教育研究経営支援体制の強化、教育研究経営支援人材の育成と確保、ダイバーシティ環境の整備に全力で取り組みます。更新が迫っているKAISER、教務システム、図書館システム等の情報システムの見直しは喫緊の課題であり、クラウド化も見据えて検討して参ります。また、業務のデジタル化やAIの活用を一層進めていくことも必要です。さらに、研究支援体制と産官学連携体制の強化のためにそれらを支える優秀な研究支援人材をしっかり確保するとともに、研究推進、産官学連携機能を一体化し、2月より学術・社会共創機構として機能を充実させます。また、理系の研究に大きな役割を果たしている教室系技術職員の組織改革を行い、2月から技術連携推進本部を設置し、政策研究支援部同様に人事の一元管理を行い、業務の機能強化を図ります。また、研究への資金的な支援としてのGAPファンドや神戸大学1号ファンド(KUC)に続き、4月には60億規模の2号ファンドの設立を予定しており、知の価値化と社会実装を加速するためのスタートアップの育成支援体制を強化します。
このような組織改革と共に事務職員、政策研究職員、技術職員、医療従事者において中長期の視点に基づいた人材育成と環境づくりを考えて、個々の能力を最大限に引き出せる人材の適正配置と部署間連携の強化を進め、専門的人材の育成とキャリアパスの構築に取り組みます。また、適正な人事評価に基づいて昇任、昇給、インセンティブの支給を行い、頑張る人の専門性とモチベーションを高める組織にしたいと思います。さらに、外部との交流を深めるとともに多様な卓越専門人材を招聘し、競争的環境の中でも活力に富み多様性のある魅力的な働きたいと思える大学をつくりたいと思います。一方、教員に関しても部局の特性に配慮したうえで人事評価システムの標準化を図り、客観的かつ公平公正な評価により給与、インセンティブ制度を再構築し、教育研究へのモチベーションが高まるようにしていきたいと思います。
大学の財務状況においては、令和7年度、人事院勧告による人件費の増加、物価上昇、基盤的運営経費の増加、附属病院の経営逼迫など、国立大学にとって大変苦難の年でしたが、令和8年度も人件費の増加、物価上昇が予測され厳しい状況が続くと思います。昨年末に通達のあった令和8年度の国からの予算配分についてもお伝えしておきます。令和8年度の国の運営費交付金の総額は10,971億円となり、前年度と比べて188億円の増額となりました。本学の基幹運営費交付金は、ミッション実現加速化係数分が撤廃され、令和7年度と同水準の169.8億円となりました。一方、競争的な運営費交付金としての共通評価指標に基づく配分総額については、令和8年度、残念ながら令和7年度から約0.1億円減の1.35億円となりました。「学士・修士・博士の就職・進学状況」7位、「科研費獲得実績の伸び」6位、「新規若手教員採用」5位、「ダイバーシティ環境」5位、「寄付金実績」4位とこれらの項目が7大学内において低迷し、配分総額にマイナスの影響を及ぼしました。今後、これらについては皆さんとともにより一層努力し、改善していかねばなりません。また、事項指定の競争的配分として申請していた教育研究組織改革分(学術・社会共創機構、医工融合型教育、みらい開拓人材育成システム、AIスマート空調、先端バイオ、カーボンニュートラル、DX推進拠点)では、新規や拡充の採択があり、2.3億円増加しました。ただ、基盤的設備整備分では採択がなく、リース対応分に対してのみ予算措置がありました。
一方、附属病院においては、医療材料、人件費の増加により経営を圧迫し、全国の大学病院はかつてない危機に瀕しています。現在、病院の収入は、大学全体の約半分を占めており、その経営状況は大学全体に大きな影響を及ぼしかねません。4月からの診療報酬改定により本体改定率が3.09%増となり30年ぶりに3%を超えました。病院経営が今より少しは改善するかもしれませんが、人件費の増加、物価上昇の中、予断は許せません。そのような中においても、大学として附属病院が先端研究、高度医療の提供、医療人材の育成、地域医療の維持など地域医療の核として重要な機能を果たせるようできる限りの支援をしたいと思います。今後も、大学、病院どちらにおいても堅実な中長期的計画とともに不測の事態にも対応できるよう蓄財しておくことが必須である一方で、すでに間接経費等の自己資金で賄っている戦略的教育研究経費や図書館の充実、施設設備の改修、大学の運営管理事業などの事業や部局における新規の特色ある取り組みにしっかりと予算配分して投資ができるよう、交付金のみに頼るのではなく個々の研究者の力を生かし大型補助金、科学研究費、共同研究費などの外部資金をしっかり獲得して安定的な経営基盤を築くことが、これからの大学運営における継続的、かつ重要な課題であることに変わりありません。R8年度、国の予算において重視されている主な成長分野は、「危機管理投資・成長投資」として AI・半導体、造船、量子、フュージョンエネルギー、バイオ、航空、宇宙等の 17 の戦略分野が挙げられています。また、未来に向けた投資の拡大として科学技術・イノベーション、コンテンツ分野、文化芸術及びスポーツの振興、医療・介護DX等を推進し、健康医療安全保障を構築することや大学振興等を通じ、イノベーションを興すことのできる人材を育成することが挙げられています。これに基づきさまざまな事業予算がついていますので令和7年度の国の補正予算、8年度の概算要求予算獲得に向けて、全学、部局一丸となって叡智を結集し取り組んでいきましょう。また、科学研究費は100億円増となり、とくに若手研究者枠が1000件新設され、研究者として力を発揮してしっかり獲得しましょう。教員、ひとりひとりが、大学全体の経営状況を他人事としてではなくしっかりと理解し、大学の基盤的な管理運営、部局や全学的な教育研究の活性化に向けた事業、部局や個人へのインセンテイブ配分に活用できる財源をみんなで獲得して全学的に循環させていかなければなりません。神戸大学の外部資金は、令和2年度末135億と低迷していましたが、皆さんのご尽力により順調に増加しており、令和6年度末には第4期中に目標としていた200億をすでに超えており、令和7年度末にはおそらく230億を超えると予想していますが、引き続きの取り組みをよろしくお願いします。
最後に、繰り返しになりますが、今後も構成員の皆さんとKU VISION 2030を共有し、学問の府としての自由闊達な教育研究環境をしっかり確保するとともに基礎・応用科学研究における様々な大学の潜在的な力を結集して新しい成長基盤を創出し、地域・社会の課題解決やイノベーションの拠点としての機能を強化し、持続可能で地域に根ざし、世界に誇れる研究大学として発展して参りたいと思います。また、皆さんとともに将来を見据えた健全なる危機感を共有して、厳しい環境のなかでも共創と協働により有機的なつながりを生み出し、万里一空の精神のもと大学の明るい未来に向けてさらに飛躍できるよう頑張っていきたいと思います。
今年、一年、神戸大学、皆さんにとってすばらしい年でありますように、そして神戸大学がさらに輝き、大きく発展するように祈念するとともに皆様方のご支援・ご協力を引き続きよろしくお願いいたします。
令和8年1月5日
神戸大学長 藤澤 正人