【所属・職・氏名】

  佐々木 良平(神戸大学大学院医学研究科放射線腫瘍学分野・教授)

  福本 巧(神戸大学大学院医学研究科肝胆膵外科学分野・教授)

  出水 祐介(兵庫県立粒子線医療センター附属神戸陽子線センター・副センター長)

  小畑 勉(金井重要工業(株)技術革新室・室長)

【受賞日】

  令和6年4月9日

【受賞名】

  令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)

【業績名】

  吸収性スペーサーを用いた体内空間可変粒子線治療の開発

【概要】

粒子線治療は日本が世界をリードする画期的な放射線治療技術の一つだが、悪性腫瘍と消化管などの正常組織が近接する場合には、難治の消化管出血や穿孔のリスクが高くなるため根治的な治療を提供することができない・・。その不可能を可能に替える事ができる方法が、今回我々が開発した吸収性スペーサーを用いた体内空間可変粒子線治療です。

本開発では、ポリグルコール酸(PGA)を材料とした手術用縫合糸を3次元的に編み、一定の厚みを保持できる不織布状の吸収性のPGAスペーサーを世界に先駆けて開発しました。PGAはゆっくりと水と二酸化炭素に加水分解されるため、人体に有毒な化学物質を発生せず、粒子線治療の終了まで十分な厚みを保持できます。一連の研究を通じて人体への安全性と有効性を確認し、薬事承認を得て保険承認を実現しました。

本開発により、手術でも、粒子線治療でも治癒されることができない悪性腫瘍に対して、吸収性スペーサーを用いた方法を世界に先駆けて実施し、絶望の淵に立たされた260症例以上の難治がん患者に対して根治的な治療を提供してきました。さらに保険承認を得ていることにより、より多くの患者に対して経済的な負担を最小限にして本治療法を適応できています。

本成果は、アカデミアが医療現場の課題解決の糸口を探ることから取り組み始めた産学共同研究の成果の一つであり、今後さらに多くの患者に適応されることが予想され、世界規模に本治療法が展開することが期待されています。

関連サイト

文部科学省「令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者等を決定しました」

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01364.html