課題概要
カメルーン出身の人類学者、フランシス・ニャムンジョの哲学のなかでは、すべてのものが不完全(インコンプリートネス)です。だからこそ人やモノや霊は相互に関係を持ち、自己を拡張しようとするのです。そこには不可避的に互酬的関係があります。人間が生きるということはその互酬的な貸し借りの中で、「コンヴィヴィアリティ」(字義通りには宴会、共益を交歓する場を意味する)を実現するための長い航海のようなものだとします。
申請者による翻訳や論考も含め本邦でも紹介が始まっていますが、ニャムンジョの哲学は、アフリカ発の包括的な思考であり、アフリカと西洋の伝統を踏まえつつ、新しいテクノロジーを含めて今後の生き方を構想しようとする実践的哲学として注目を集めています。
本研究交流では提唱者のニャムンジョ自身はもちろん、その薫陶を受けた多くのアフリカ系研究者との交流を含む共同研究を3 年計画で推進します。
⑴第一に、ニャムンジョの思想のエレメントを分解し、要素に分けて解析し、⑵第二に、その射程を明らかにするため、AI との共存、(人類活動が地球に地質学的な痕跡を残すようになった)「人新世」への対処可能性を検討する共同フィールドワークを行います(身体を用いて共感を得る、というのもニャムンジョ哲学の要諦の一つ)。⑶第三に、サブテーマとして、ニャムンジョの哲学には、東洋思想あるいはデズモンド・ツツなどが説く南部アフリカのキリスト教や土着の「ウブントゥイズム」との類縁性が指摘されています。その類縁性と差分を具体的に検証します。⑷第四に、文学・映画・アートの専門家を交え、現代文化との接点と学際的展開を促進します。次世代の研究者は、共同研究、セミナーの活動それぞれをコンヴィヴィアリティになぞらえ、次世代セミナーに参加し、最終的には著作物を刊行します。これらの活動を通じて、ニャムンジョと直接議論し、その謦咳に触れ、ともにフィールドワークし、身体を使ったコミュニケーションにより、驚嘆すべき生産性の原点に触れるとともに、思想の可能性を問い直し、AI 時代、「人新世」を生き抜く新しい哲学としての射程の範囲を検討します。現代的な人間像を考え直すための指針と、さらなる哲学を打ち出すための素養とを身に着けることができます。成果は、Langaa から英文の論集を刊行する予定です。
拠点機関
<相手国拠点機関>
- ケープタウン大学 (南アフリカ)
- マケレレ大学 (ウガンダ)
<国内協力機関>
- 大学共同利用機関法人人間文化研究機構 総合地球環境学研究所
- 四天王寺大学
- 東洋大学
- 明治学院大学
- 大阪経済法科大学
- 京都市立芸術大学
- 東京外国語大学
- 京都大学