ため池整備に適する盛土材料 (遮水性がある粘土質の材料) の調達・確保が困難なため池における代替的な改修工法として用いる「ベントナイトシート工法」について、安全性及び耐久性を確保した統一的な設計・施工を行うため、兵庫県は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 (以下、農研機構)、神戸大学との共同研究※1により、全国初となる技術マニュアルを策定しました。

※1 農林水産研究推進事業委託プロジェクト研究 (現場ニーズ対応型) による共同研究

本マニュアルは設計編と施工編で構成されていますが、神戸大学大学院農学研究科の澤田豊准教授が実験および数値解析を行い、設計編に示される設計式やその根拠を提供してきました。

今後は従来のため池改修工法に加え、ベントナイトシート工法も活用し、ため池整備を推進していきます。

マニュアルで定めている事項

  • 遮水性を確保するための設計手法
  • 構造上の安全性、耐震性能を確保するための設計手法
  • 施工方法、施工管理の方法、施工の留意点
  • 維持管理方法  など

策定までの主な取組

  • ベントナイトシート工法における堤体の地震時における安全性を明確にするため、兵庫県は神戸大学大学院農学研究科と連携し、E-ディフェンス※2を活用した実大模型による加振実験を行いました。
    ※2 E-ディフェンス:国立研究開発法人防災科学技術研究所が所有する実大三次元震動破壊実験施設
  • 農林水産研究推進事業委託プロジェクト研究「ため池の適正な維持管理に向けた機能診断及び補修・補強評価技術の開発」において、兵庫県は、このたびのマニュアル策定に向け、農研機構、神戸大学との共同研究を実施しました。
ベントナイトシート工法のイメージ
(参考) 一般的に行われている工法

今後の展望

当ベントナイトシート工法は、従来の粘性土を用いる工法の代替工法として、近年施工実績が増加していますが、設計方法が未確立であったことから、経験に頼った設計・施工がなされてきました。このことで例えば過度に安全で経済的ではない設計が行われてきました。本マニュアルを活用することで、科学的知見に基づくより合理的な設計に繋がることから、兵庫県のみならず全国のため池整備で役立つことが期待されます。

研究者