飲食店などを原則屋内禁煙とする法律(改正健康増進法)が2020年4月に全面施行されたことにより、禁煙飲食店の割合がやや増加したことが確認されました。また、東京都と千葉市による条例(受動喫煙防止条例)により、禁煙飲食店の割合がさらに増加していたことが確認されました。

受動喫煙(他人のタバコの煙にさらされること)による健康への悪影響を減らすため、2020年4月に飲食店などを原則屋内禁煙とする法律(改正健康増進法)が全国で全面施行されました。しかし、この法律は、既存の小規模飲食店に、20歳未満の子どもをタバコの煙にさらさないなどの条件を満たせば、喫煙しながら飲食できる設備の設置を一時的な例外として認めています。この例外により法律の効果が不十分にならないように、東京都と千葉市では飲食店の禁煙化を一層促すための条例(受動喫煙防止条例)を同時期に施行しました。そこで、本研究チームは2016年~2022年のグルメレビューサイトの掲載情報を用いて、法律と条例の効果を評価しました。

その結果、法律・条例の施行直前と比べた施行直後の全国の禁煙飲食店の割合は、改正健康増進法施行により5.7%ポイント上昇したと推計されました。また、同時期に条例を施行した東京都と千葉市においては13.5%ポイント(このうち条例の効果は+7.8%ポイント)上昇したと推計されました。2022年12月時点の禁煙飲食店の割合は、レストランで68.3%、カフェで70.2%、居酒屋で32.8%、バーで25.0%と推計されました。

この研究から、法律・条例の全面施行により禁煙飲食店の割合がやや増加したことが確認されました。一方で、例外措置などにより、喫煙できる飲食店が依然として多い可能性も示されました。受動喫煙の機会をより減らすためには、例外をなくすことや法令を守ってもらうことが重要です。

研究の背景

2020年4月に全面施行された改正健康増進法は、屋内またはこれに準ずる環境における望まない受動喫煙(他人のタバコの煙にさらされること)の防止のために、飲食店の屋内での喫煙を原則として禁止しました。しかしながら、この法律では、既存特定飲食提供施設注1)においては、20歳未満の子どもが喫煙可能区画に入らないことを条件として、喫煙可能室(喫煙しながら飲食できる設備)の設置が許容されるという経過措置が設けられています。ただし、経過措置の期間は具体的に定められていません。東京都と千葉市では、この経過措置の範囲を限定するため、同居親族以外の従業員がいる場合は喫煙可能室の設置を認めないとする受動喫煙防止条例を制定し、改正健康増進法と同時に施行されました。また、2021年4月には埼玉県でも、喫煙可能室を設置する場合に同居親族以外の従業員からの書面による喫煙可能室設置についての同意書の取得を定めた受動喫煙防止条例が施行されました。

法施行当時の考え方としては、経過措置の対象となる飲食店は最大55%程度との推計(参考資料1)がなされており、改正健康増進法により飲食店の禁煙化がどの程度進むか定かではありませんでした。このため本研究チームは、グルメレビューサイトの掲載情報を用いて改正健康増進法全面施行前後での禁煙飲食店の割合の変化を調べ、法施行の効果を評価しました。なお、指定たばこ専用喫煙室(加熱式タバコを喫煙しながら飲食できる設備)の設置について、兵庫県では設置の禁止を、秋田県と山形県では設置しない努力義務を受動喫煙防止条例として定めていますが、本研究で用いた情報からその区別ができないため、それら条例の効果については評価していません。

研究内容と成果

本研究では、グルメレビューサイトの掲載情報を2020年1月から2022年12月まで、約6カ月ごとに、ウェブスクレイピングにより抽出しました。その際には、サイト利用規約や著作権法を遵守し、事業者サーバーへの過剰な負荷が生じないように配慮しました。抽出したデータのうち、喫煙・禁煙情報が登録されている店舗を対象として、「禁煙」として登録された飲食店(禁煙飲食店)の割合を各時点で集計しました(2020年1月時点の集計対象店舗数33万8615店舗)。また、2016年8月時点の集計値として、グルメレビューサイト運営会社から以前に提供を受けた地域・業態別集計値を用いました。

それらの地域・業態別の集計値を用い、分割時系列解析注2)により、改正健康増進法および受動喫煙防止条例の施行による禁煙飲食店の割合の変化を求めました。飲食店の喫煙・禁煙情報は飲食店の運営者や利用者の登録に基づいていますが、登録店舗の一部を対象として電話調査を行い、その正確性を検証し、9割程度は正しいことを確認しました。ただし、喫煙可から禁煙に変更した店舗が「喫煙可」として登録されたままになっている場合もあるなど、情報が不正確な場合もあるため、結果の解釈には注意が必要です。

2020年1月(法律・条例施行前)から2020年6月(法律・条例施行後)にかけて、禁煙飲食店の割合の変化は全体で8.1%ポイント(38.6%⇒46.7%)、レストラン・食堂で+7.5%ポイント(44.7%⇒52.2%)、喫茶店・カフェで+4.2%ポイント(53.4%⇒57.6%)、居酒屋で+15.6%ポイント(7.5%⇒23.1%)、バーで+3.0%ポイント(14.1%⇒17.1%)と、いずれの業態でも増加していることが確認されました(参考図)。

分割時系列解析の結果、全国の禁煙飲食店の割合は、改正健康増進法単独で5.7%ポイント上昇したと推計されました。また、同居親族以外の従業員がいる場合は喫煙可能室を設置できないとする受動喫煙防止条例を同時施行した東京都と千葉市では13.5%ポイント(5.7+7.8%ポイント)の上昇を認めました。  

一方、埼玉県は2021年4月に、喫煙可能室を設置する場合に同居親族以外の従業員からの書面による喫煙可能室設置についての同意書の取得を定めた受動喫煙防止条例を施行しましたが、統計学的に有意な上昇は認められませんでした。

2022年12月時点での禁煙飲食店の割合はレストラン・食堂で68.3%、喫茶店・カフェで70.2%、居酒屋で32.8%、バーで25.0%であると推計されました。既存飲食店(2020年1月時点で抽出データあり)と新規開業飲食店(開業日情報が2020年4月2日以降)に分けると、既存飲食店の禁煙飲食店の割合は食堂・レストランで64.9%、喫茶店・カフェで65.0%、居酒屋・ダイニングバーで30.6%、バーで21.4%であり、新規開業飲食店ではそれぞれ89.2%、93.1%、55.5%、47.6%でした。

今後の展開

本研究から、法律・条例の施行により禁煙飲食店の割合がやや増加したことが確認されました。一方で、新規開業飲食店の一部の業態や既存飲食店では喫煙できる飲食店が多い可能性も示されました。これまでにも法令を遵守していない飲食店の事例報告があり(参考資料2)、厚生労働省の資料でも既存特定飲食提供施設以外の喫煙可能飲食店において同様の事例が多く確認されています(参考資料3)。法令が遵守されない背景には、飲食店運営者が法を十分に理解していないことや、原則として主食の提供が認められていない喫煙目的施設注3)においても、主食の提供が許容される例外があるなど法令の曖昧さがあると推測されます。飲食店における受動喫煙の機会をより少なくするためには、経過措置の終了や法令の曖昧な点の見直しを進め、法令遵守を徹底してもらうことが重要です。

本研究チームではこれまでに、飲食店への郵送調査により改正健康増進法により期待された効果が得られていない可能性(参考資料4)や飲食店の法令遵守と関連する要因(参考資料5)についても報告しています。引き続き、子どもや妊婦などの特に配慮が必要な人をはじめとして、より多くの人が受動喫煙を受けずに、好きなお店で外食を楽しめるような社会にしていくための研究に取り組んでいきます。

参考資料

  1. 厚生労働省.既存特定飲食提供施設の考え方及び範囲について
  2. 厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)「受動喫煙防止等のたばこ対策の政策評価に関する研究(研究代表者:片野田耕太)」令和4年度分担研究報告書「改正健康増進法施行後も残された受動喫煙対策の課題(続)」
  3. 厚生労働省.第1回受動喫煙対策専門委員会(令和7年11月25日開催)【資料2】受動喫煙対策等の現状について
  4. Kataoka A, Muraki I, Nakamura M, Ito Y. How much progress has been made toward a smoke-free environment in the restaurants and bars of Japan? Limitations of partial bans and their enforcement. BMC Public Health. 2024 Nov 29;24(1):3327. doi: 10.1186/s12889-024-20765-6.
  5. 村木功、片岡葵、伊藤ゆり、中村正和、片野田耕太.飲食店における受動喫煙防止対策に関する情報収集、法令理解度および保健所での対応と法令遵守に関連する検討:飲食店経営者インターネット調査.日本公衆衛生雑誌.2026(近日公開予定)

参考図

図 地域・業態の経年変化を考慮した全国の禁煙飲食店割合の経時変化 横軸に改正健康増進法全面施行後の経過月数(中央の縦線が経過月数0月=2020年4月)、縦軸に禁煙飲食店の割合をとり、各時点での禁煙飲食店の割合(〇印)を図示している。左右の直線は、それぞれ改正健康増進法全面施行前と改正健康増進法全面施行後の禁煙飲食店の割合の推移を示している。
改正健康増進法全面施行により直接生じた効果       =左右の直線の中央縦線部分での差
改正健康増進法全面施行による禁煙飲食店の増加速度への効果=左右の直線の傾きの差

用語解説

注1)既存特定飲食提供施設

飲食提供を目的とする施設で、2020年4月1日時点で営業しており、個人または中小企業が運営する客席面積が100m2以下のものを指す。

注2)分割時系列解析

イベント時点(参考図の中央縦線部分)で、イベント前の変化を表す回帰式(参考図の左側の直線を表す式)とイベント後の変化を表す回帰式(参考図の右側の直線を表す式)に分割して、回帰式からイベント前後での変化(参考図の中央縦線部分での差や傾きの差)を推計する統計解析手法である。

注3)喫煙目的施設

飲食店においては、たばこの対面販売をしており、喫煙場所の提供を主な目的として、併せて飲食営業(通常主食と認められる食事を主として提供するものを除く。)を行う施設のことを指す。主食には米飯類、パン類(菓子パン類を除く。)、麺類等が主に該当するが、主食の対象は各地域や文化により異なるものであることから、実情に応じて判断される。

研究資金

本研究は、厚生労働科学研究費補助金 (循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)(19FA1005、22FA1002)の一環として実施されました。

論文情報

タイトル

Impact of ban and ordinances against indoor smoking on the proportion of smoke-free establishments in restaurants, izakaya, and bars in Japan: Interrupted time-series analysis of restaurant database

DOI

10.1016/j.puhe.2026.106146

著者

I. Muraki, A. Kataoka, Y. Ito, K. Katanoda, M. Nakamura

  • 研究代表者 

筑波大学医学医療系 村木 功 教授
神戸大学大学院医学研究科 片岡 葵 特命助教
大阪医科薬科大学医学部 伊藤 ゆり 教授
国立がん研究センターがん対策研究所 片野田 耕太 データサイエンス研究部長

掲載誌

Public Health

掲載日

2026年1月18日

報道問い合わせ先

神戸大学総務部広報課
E-Mail:ppr-kouhoushitsu[at]office.kobe-u.ac.jp(※ [at] を @ に変更してください)

研究者

SDGs

  • SDGs3