神戸大学大学院理学研究科の長屋 暁大氏(研究当時:博士課程前期課程)、島 伸和教授らと、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の藤江 剛センター長らの研究グループは、7300年前に巨大噴火である鬼界アカホヤ噴火を引き起こした鬼界カルデラ火山の地下構造を調査し、カルデラ直下の深さ2.5〜6 kmに「部分溶融した大規模マグマだまり」が存在していることを発見しました。研究グループのこれまでの調査により、現在のマグマは当時とは組成が異なることが分かっており、新たなマグマが鬼界アカホヤ噴火のマグマだまりと同じ場所に再び注入されていることが示唆されました。巨大噴火の後、再び巨大噴火に至るまでの過程に関する知見は乏しく、現状では予測が困難です。本成果により、噴火後のマグマ供給サイクルの理解が進み、将来の巨大噴火の発生過程の予測につながることが期待されます。

本研究成果は、3月27日 午前10時(英国時間)に、「Communications Earth & Environment」に掲載される予定です。

図1 鬼界カルデラ火山周辺の海底地形図(上図)。探査データから推定した溶融度の断面図(下図)は、鬼界カルデラ直下の浅部に大規模な部分溶融したマグマだまりの存在を示している。© 島 伸和 (CC BY)

 

ポイント

  • 鬼界カルデラ火山直下の深さ2.5〜6 kmに、部分溶融した大規模マグマだまりの存在を明らかにした。
  • 巨大噴火だった鬼界アカホヤ噴火のマグマだまりと同じ場所に、新たなマグマが再注入されていることが分かった。
  • 本研究成果は、カルデラ火山下のマグマだまりがどのように再注入されるかを示した一般的なモデルとして、他地域の巨大カルデラ火山の噴火にも応用可能な、マグマ供給サイクルを理解する鍵となる可能性がある。

研究の背景

鬼界カルデラ火山は、7300年前の鬼界アカホヤ噴火により膨大な量のマグマを噴出し、カルデラ地形を形成した日本列島最大級の海底火山です。研究グループのこれまでの調査で、この噴火の噴出量は概ね160 km³に達し、完新世(1万1700年前~現在)で世界最大級の噴火の一つだったことが分かっています。そして、その後3900年前以降には、カルデラ内には体積32 km³以上の中央溶岩ドームが形成され、化学組成の異なるマグマ供給源であることも明らかにしてきました。しかし、巨大噴火後のマグマだまりが現在どこに、どれほどの規模と状態で存在しているのか、観測制約もあり十分に解明されていませんでした。

研究の内容

本研究では、海洋研究開発機構の調査船「かいめい」を用いて、鬼界カルデラ火山を横断する全長175 kmの測線で屈折法地震探査※1を実施しました。この探査では、海底地震計39台を展開し、エアガンアレイ※2を用いて人工地震波を発生させることでデータを取得しました。取得データの初動走時トモグラフィー解析※3により詳細なP波速度構造を推定し、カルデラ直下の浅部(2.5〜6 km)には、周囲より最大22%の速度低下を示すP波低速度異常の領域が抽出されました。この低速度の原因は、温度上昇と部分溶融として、その寄与に分けて評価することで、溶融度3〜6%(最大約10%)の部分溶融域を特定しました(図1)。部分溶融域は、台形状に広がり、その幅は少なくとも内側カルデラ幅(12 km)に匹敵し、浅部直下に大規模な部分溶融したマグマだまりが存在することを示します。推定した現在のマグマだまり深度(2.5〜6 km)は、鬼界アカホヤ噴火時のマグマ深度(3〜7 km)や、3900年前以降に形成された中央溶岩ドームのマグマ深度(2〜4 km)と整合します。一方で、中央溶岩ドームは鬼界アカホヤ噴火とは異なる化学組成のマグマを示します。このため、この深度の一致は、巨大噴火の浅部マグマだまりと同じ場所に、新たなマグマが再注入していることを示しており、これを「マグマ再注入モデル」として提案しました(図2)

図2 本研究ならびにこれまでの研究で得られている観測事実(左図)とそれをもとに本研究で提案する「マグマ再注入モデル」(右図)。© A. Nagaya et al. (2026), Communications Earth & Environment (DOI 10.1038/s43247-026-03347-9) (CC BY)

今後の展開

「マグマ再注入モデル」は、イエローストーン(アメリカ)やトバ(インドネシア)など他地域の巨大カルデラ火山で示唆される浅部大規模マグマだまりの存在とも調和的であり、巨大噴火後のマグマ供給サイクルを理解する鍵となる可能性があります。また、低速度異常とそれから推定されるマグマだまりの部分溶融度の時系列変化が、今後の巨大噴火の予兆監視において重要な指標になることを示しており、ある程度の期間の後に同様の調査を実施することが望まれます。 

用語解説

※1.  屈折法地震探査

人工的に発生させた地震波が地層の境界などで屈折しながら伝搬する性質を利用し、受振器(海底地震計)で観測した到達時刻や波形特性から地下の地震波速度構造を推定する手法。

※2.  エアガンアレイ

高圧空気を放出することで音波(人工地震波)を発生させる装置(エアガン)を複数台並べて、指向性が高く強い音波を発生させる音源装置。

※3.  初動走時トモグラフィー解析

屈折法地震探査等で観測された屈折波の最初の到達時間(初動)を用いて、地下を格子状に細かく分けて地震波速度構造を推定する解析手法。

謝辞

本研究は海洋研究開発機構の海底広域研究船「かいめい」のKM21-05航海、第二開洋丸、海事科学研究科の練習船「深江丸」で行いました。JSPS科研費JP20H00199と文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」の助成を受けました。

論文情報

タイトル

Melt re-injection into large magma reservoir after giant caldera eruption at Kikai Caldera Volcano

DOI

10.1038/s43247-026-03347-9

著者

長屋暁大1,4、島伸和1,2、藤江剛3、田中聡3、杉岡裕子2,1、小平秀一3

1神戸大学大学院理学研究科、2神戸大学海洋底探査センター、3海洋研究開発機構、4国際航業株式会社

掲載誌

Communications Earth and Environment

研究者