
神戸大学が、2026年5月17日に三宮旧居留地・ウォーターフロントエリアで開催された「第53回神戸まつり」のおまつりパレードに初めて出演した。半世紀以上の歴史がある同祭において、大学が全学単位で参加した記録は過去10年間にはなく、珍しいという。神戸まつり実行委員会学生企画チーム(8人)が4カ月がかりで入念に準備を進め、160人の大行進が祭りに彩りを添えた。演出を担った学生4人に、神戸まつりに込めた思いと当日までの舞台裏を聞いた。
神戸のまちと共に未来を拓く
「神戸まつり」は1971(昭和46)年に市民参加型の画期的な祭りとして誕生し、神戸の魅力を広く知らせる行事として、多くの人に親しまれている。1933(昭和8)年に始まった「みなとの祭」と「神戸カーニバル」を発展的に解消したイベントで、前身の祭りを含めると90年以上の歴史を持つ。

パレードへの参加は、藤澤正人学長が「神戸大学は124年にわたり、神戸の街とともに歩んできた。その研究・活動をもっと多くの市民に知ってもらえれば」と発案、その熱意を意気に感じた学生企画チームを中心に企画した。今年1月ごろから、応援団総部や美術部凌美会、書道研究会など課外活動団体とも綿密にやり取りしながら準備を進めた。
当日は、藤澤学長をはじめ、大学役員、教職員、在学生、本学のプログラム「神戸みらい博士育成道場」に参加する中学生ら約160人が、750メートルのコースを20分間かけて練り歩いた。沿道・周辺には観客約70万人(神戸市民祭協会調べ)が集まり、熱い声援を受けた。書道研究会がメッセージの言葉をしたためた横断幕を先頭に、応援団総部応援団、同吹奏楽部、ちんどんサークル「神大モダン・ドンチキ」のメンバーがパフォーマンスを繰り広げ、沿道にあふれる観衆を楽しませた。


学生たちがパレードで伝えたかったメッセージは、「124年の航海、神戸のまちと共に未来を拓く」。パレードのコンセプトやストーリーを話し合う中で、創立124周年を迎えた本学は、長い時間をかけて多様な学問を積み重ねてきた「知の集合体」である点をアピールすることになった。そのうえで、「その知は学内という閉じた場所に留まるものではなく、街へと開かれ、人と交わり、次の時代へと進化を続けてほしい」との思いを込めた。

小道具や横断幕、Tシャツのデザインなどは、書道研究会や美術部凌美会の協力を得ながら、学生による手作りに徹底的にこだわった。パレード全体が、一つの船に見えるような装飾や演出を施し、長蛇の列が一体感を持つよう工夫した。本学のマスコットキャラクター「神大うりぼー」が軽トラックの荷台に乗った「うりぼーフロート」も注目され、子どもたちの人気を集めた。台車2台をベースに船のデザインを施した「船フロート」は、大学と神戸の街が一緒に進む様子を表現し、船のサイドに大学の創立記念日「1903・05・15」を記すなど、細部のデザインにも趣向を凝らした。
準備に4カ月、演出案を練り上げた学生企画チーム
パレードの演出を買って出たのは、本学「バリュースクール」のメンバー。その中心となったのが、国際人間科学部4年・栗山美綾さん、農学部4年・久米祥子さん、経営学部4年・穐田大吾郎さん、工学部3年・中村元望さんだ。
約4カ月間の準備期間中、藤澤学長との打ち合わせを皮切りに、週1回は必ずリモートで打ち合わせを行い、メンバー内で情報共有を密に行った。応援団総部など学生団体に出演依頼を進める一方、会場の下見、演出案の作成、Tシャツなどの衣装デザイン、台車などの飾り付けを手掛けた。祭り前日まで小道具の制作を続け、神大うりぼーを軽トラックの荷台に載せる予行演習にも余念がなかった。
4人が所属するバリュースクールは、2020年に設立され、全学生に開かれた分野横断的な教育研究を支える組織だ。価値をキーワードに、縦割りの学問領域に横串を刺して新しい価値創造教育を展開するとともに、各専門分野で進められているさまざまな価値創造研究をさらに発展させるプラットフォームとして位置付けられる。学部生から大学院生まで約300人が登録しており、全学部が登録可能であるため、今回、パレード演出の実行部隊として白羽の矢が立った。バリュースクール価値創発部門長の鶴田宏樹教授は「4人のメンバーは、学内の出演交渉も進め、学生主導でよく動いてくれた」と語る。


リーダー役を担った4人が所属する学部、専門分野はさまざまだ。
国際人間科学部の栗山さんの専門は、教育学。科学、技術、工学、芸術、数学の5つの分野を統合して学ぶ「STEAM教育」を専攻する。中でも、リベラルアーツの重要性を感じており、学部卒業後は大学院進学を目指す。
農学部の久米さんは、生命機能科学科応用生命化学コースで、化合物の合成を研究する。食品や薬品の開発に関心を示し、将来は研究職を目指す。
経営学部の穐田さんは、経営組織論、リーダーシップを学んできた。バイクが趣味で、卒業論文は「バイクメーカーの広報戦略と消費者の行動」をテーマに、メーカーと愛好家の行動を探る。
工学部の中村さんは、情報知能工学科に所属。消費者のニーズをつかみにくい現代において、企業はどういう商品を提案すればいいのか、「要求獲得」という分野に興味を示す。
4人は「学部内で議論するのと違って、いろいろな分野の専攻の学生がいるので、議論が深まって面白い」とバリュースクールの魅力を語る。
神戸まつりのパレードから学んだこと
おまつりパレードには69団体、計5400人が参加し、神戸大学一行も、神戸まつりの歴史にその名を刻んだ。
パレード本番を終えた後、4人は清々しい表情で再び顔を合わせた。リーダーの栗山さんは「神大うりぼーに沿道から大きな声援が送られ、本当に楽しかった。私の専門とする教育を面白くする時に大事なのは、行動力。パレードの企画から実行まで、いろいろな人を巻き込んで物事を進め、無事にやり終えて行動力を身に付けられた」と手ごたえを口にした。
もう一人のリーダー久米さんは「8人のチームで考えた演出を、参加者に事前に伝える機会が少なく、独りよがりになっていないか心配していたが、出演者のすごく楽しそうな表情を見て、自分たちの実現したかった以上のものが実現できたと感じた。感謝の気持ちでいっぱい」と振り返った。

穐田さんは「久しぶりに青春ができたなって感じている。教職員、学生を含め、初対面の人が多かったが、一つの目的を持って、一つのものが完成し感動的だった。沿道の人たちに喜びや感動を与えられて印象深かった」と語った。
中村さんは「出演者全員が、笑顔でパレードを楽しんでいた。教員と学生の距離も近く、普段の大学の雰囲気とは違う和やかな雰囲気だった。メンバーの認識にずれがないよう、しっかりとコミュニケーションを取って、最後まで乗り切れた」と振り返った。
準備段階からパレード本番まで並走して見守った鶴田教授は「学生主導で多くの人を巻き込み、実際にパレードを実現できて、学生の力の大きさを感じた。マネジメントや企画、実行管理などを短い時間の中できっちりこなし、多くの学びがあったのではないか」と満足そうだった。
略歴
くりやま・みや 2005年、兵庫県高砂市出身。加古川東高校卒業後、2023年、神戸大学国際人間科学部入学。子ども教育学科。趣味は、喫茶店巡りと旅行。北海道から沖縄まで3年間で200店舗を訪問した。店主のこだわりを楽しむ。神戸市在住。
くめ・しょうこ 2004年、奈良県生駒市出身。奈良高校卒業後、2023年、神戸大学農学部入学。趣味は、「ときめき」を見つけること。ミュージカル、スポーツ、読書、旅行など守備範囲は広い。歴史ある建物巡りも。奈良県生駒市在住。
あきた・だいごろう 2004年、神戸市出身。神戸高校卒業後、2023年、神戸大学経営学部入学。趣味は中型バイクでの一人旅、乗り始めて2年間で63000㌔を制覇した。自然と一体になっている感じが醍醐味。神戸市在住。
なかむら・もとみ 2005年、岐阜県大垣市出身。大垣東高校卒業後、2024年、神戸大学工学部入学。趣味は、旅行とニュースを見ること。イランを含む国際情勢、国内の政治経済などのニュースを収集、わかりやすく伝えることを楽しむ。神戸市在住。



