神戸大学大学院医学研究科小児科学分野の山口 宏 特命助教と野津寛大 教授および神戸こども初期急病センターの石田明人センター長らの研究グループは、2011年から2019年までに神戸こども初期急病センターを受診した全患者合計265,191人の中から水痘と診断された患者3,092人を解析し、水痘ワクチン定期接種化による水痘患者数の減少効果を明らかにし、それに伴う医療費の減少効果も同時に明らかにしました。

この研究成果は、10月5日付で国際科学誌「Journal of Infection and Chemotherapy」にオンラインで掲載されました。

ポイント

  • 水痘ワクチンが任意接種の時代は、神戸こども初期急病センターを受診した水痘小児患者は年間約500人だったが、水痘ワクチン定期接種化により年間約200人に減少した。
  • 水痘ワクチン定期接種化により、定期接種の対象年齢ではない0歳児の水痘患者も減少したことを明らかにした。これは年長の同居兄弟姉妹の水痘感染を減少させたことにより0歳児も接触する機会が減ったことによるものと考えられた。
  • 水痘ワクチン定期接種化後、定期接種が行われなかった世代で水痘患者数が増加した。
  • 水痘ワクチン定期接種化により、年間約400万円の直接費用が減少した。

研究の背景

世界初の水痘ワクチン株である水痘ワクチン岡株は、1974年に我が国で開発されました。それにも関わらず、2014年10月まで小児に対する水痘ワクチンの接種は定期ではなく任意でした。水痘ワクチン定期接種化以前の接種率は40%程度で、多くの水痘患者が発生していました。水痘ワクチン定期接種開始後、我が国を含めた多くの国で水痘患者の発生率や水痘に関係して亡くなる患者数が劇的に減少したと報告されています。しかし、水痘ワクチンの定期接種化による1次救急センターの水痘患者数や直接費用への影響を調査した研究はありませんでした。

研究の内容

水痘ワクチン定期接種化による神戸市こども初期急病センターの水痘患者数と受診に掛かる費用の減少効果を調べるために、臨床データベースを利用して2011年から2019年の間に受診した16歳未満の全患者合計265,191人のうち、水痘と診断された3,092人を調査しました。これは単一施設の水痘受診患者数調査としてはこれまでで最多の患者数です。この調査により、次のことが明らかになりました。

水痘の患者数は2014年10月の定期接種化以前は年間約500人でしたが、2015年から劇的に減少し2019年には約200人まで減少しました(図A)。さらに水痘の患者数は予防接種対象年齢外の0歳児でも減少しました(図B)。また、本研究では水痘ワクチン定期接種が行われなかった世代の水痘患者数の増加も明らかになりました(図B)。さらに、水痘で受診する患者のうち、約6割が水痘ワクチン未接種者でした。経済効果については、水痘ワクチン定期接種化後、その水痘患者数の減少により、受診による直接的な医療費が年間約400万円減少したことがわかりました。

図. 本研究成果の概要

今後の展開

今回の研究により、水痘ワクチン定期接種化による1次急病センターを受診する水痘患者数を大幅に減少させる効果およびその経済効果も明らかになりました。一方、水痘患者においては、水痘ワクチン未接種者の割合が圧倒的に多く、さらに、水痘ワクチン定期化以前の世代の患者数の増加を認めることから、水痘ワクチン接種の重要性の啓発や定期接種を受けられていない世代への接種の推奨と費用の補助などが必要であると考えられます。

用語解説

* 水痘
いわゆる“みずぼうそう”のこと。水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされ、主に空気感染により広がる。発疹の発現する前に発熱があり、全身に水疱ができて、かさぶたになり多くは治癒する。一部は重症化して亡くなる場合もある。

論文情報

タイトル
Epidemiological impact of universal varicella vaccination on consecutive emergency department visits for varicella and its economic impact among children in Kobe City, Japan
DOI:10.1016/j.jiac.2021.09.017
著者
Hiroshi Yamaguchi*, Kandai Nozu, Shinya Ishiko, Hiroaki Nagase, Takeshi Ninchoji, China Nagano, Hiroki Takeda, Ai Unzaki, Kazuto Ishibashi, Ichiro Morioka, Kazumoto Iijima, Akihito Ishida
*Corresponding author
掲載誌
Journal of Infection and Chemotherapy

関連リンク