国立大学法人神戸大学 (以下、神戸大学)、株式会社NTTドコモ (以下、ドコモ)、NTTコミュニケーションズ株式会社 (以下、NTT Com)、株式会社メディカロイド (以下、メディカロイド) は、約500km離れた東京と神戸の2拠点間で、スタンドアローン (SA) 方式の商用の5Gを活用し、若手医師のロボット手術を熟練医師が遠隔地から支援する実証実験 (以下、本実証) に成功しました。商用化されたモバイル通信と手術支援ロボットを用いて、約500km離れた関東・関西の2拠点間で遠隔支援を実施した実証実験は国内初※1です。

実証実験イメージ

本実証は、神戸市が産学官連携事業で推進している「神戸未来医療構想」※2の一環として取り組むものです。離れた2拠点間で一つの手術支援ロボットを操作する技術が実現すると、都市部の熟練医師の手術支援を地方部でも受けることができ、地域医療格差の是正により、日本のどこでも高度な外科医療を提供することができます。また、遠隔指導による若手医師の教育の質の向上や、医師の働き方改革にも貢献します。さらに、5Gの活用により、各病院で特別なインフラを導入することなく、低コストで均一な通信品質を利用でき、手術室のケーブルレス化が可能になるなど、汎用性の高い遠隔医療ソリューションとしての活用が見込まれています。

本実証は、地方部の若手医師が執刀するロボット手術を、都市部の熟練医師が支援することを想定したもので、具体的には若手医師のいる東京の赤坂インターシティコンファレンスと、熟練医師のいる神戸の統合型医療機器研究開発・創出拠点 (MeDIP) に、手術支援ロボット「hinotori (ヒノトリ) ™サージカルロボットシステム」※3を配置し、拠点間を5Gおよびクラウド基盤 (docomo MEC™※4、MECダイレクト™※5) で接続します※6。二つのサージョンコックピット※7でロボット手術を行うデュアルコックピット機能※8を新たに導入し、本機能で扱う高精細な手術映像や音声、ロボット制御の大容量データを、セキュアかつリアルタイムに伝送することで、東京の若手医師が行うロボット手術に対して、神戸の熟練医師が遠隔から手術状況を確認し、会話やロボットの代理操作を行うことが可能となり、遠隔地からの手術支援・指導を実現しました。

神戸大学、ドコモ、NTT Com、メディカロイド、神戸市の5者は、5Gを活用した遠隔ロボット手術支援ソリューションの実用化をめざし、臨床利用を想定した技術・機能の開発や、ロボット手術トレーニングなどの検証を進めるとともに、早期社会実装に向けて行政や学会に制度設計の準備などの働きかけを行うなど、パートナーと引き続き連携して取り組んでいきます。また、5G Evolution & 6G powered by IOWN※9の次世代ネットワークを導入し、より低遅延・高信頼な遠隔医療を実現することで、医療業界のさらなる発展に貢献してまいります。

本取り組みは、2023年2月2日 (木) からドコモがオンライン上で開催する「docomo Open House’23」にてご紹介します。


※1 神戸大学・ドコモ・メディカロイド調べ (2023年2月1日現在)。
※2 内閣府の地方大学・地域産業創生交付金事業に採択された、神戸市において医療機器開発のイノベーションを継続的に生み出すエコシステムを形成するための取り組みです。
※3 メディカロイド製の手術支援ロボットで、2020年8月に内視鏡手術を支援するロボットとして泌尿器科領域で製造販売承認を取得。同年12月に1例目の手術を実施しました。2022年10月には消化器外科・婦人科においても製造販売承認を取得し、現在、使用症例を増やしています。
※4 「docomo MEC」は、5G時代に求められるMEC (Multi‐access Edge Computing) の特長である、低遅延、高セキュリティなどの機能を持つドコモのクラウドサービスです。
※5 「MEC ダイレクト」は、ドコモが提供する接続端末とクラウド基盤を直結して通信経路を最適化することで、5Gによる低遅延・高セキュリティ通信を実現するサービスです。
※6 遠距離でも遅延なく手術支援ができることを検証するため、大分のMECダイレクト拠点を利用しています。
※7 手術支援ロボット「hinotori™サージカルロボットシステム」のユニットの一つで、執刀医が3Dビューアをのぞき込みながら、手や足の操作で、実際に手術を実施するオペレーションユニットに取り付けられた3Dビデオスコープやインストゥルメントを操作する装置です。
※8 離れた2拠点間で高精細な3D手術映像を共有しながら音声コミュニケーションが取れ、手術支援ロボットの操作権を切り替えることができる、遠隔ロボット手術支援において必要な機能です。
※9 IOWN (アイオン:Innovative Optical and Wireless Network) は、スマートな世界を実現する最先端の光関連技術および情報処理技術を活用した未来のコミュニケーション基盤です。

* 「hinotori」は株式会社メディカロイドの商標です。
* 「docomo MEC」「MECダイレクト」は株式会社NTTドコモの商標です。

実証実験の概要

目的

遠隔ロボット手術支援ソリューションの早期社会実装に向けて、地方部と都市部での利用を想定し、商用の5Gが利用できる国内の離れた地域間において実証実験を行いました。

実証実験概要

これまでに5Gネットワーク技術のさらなる高度化や、手術支援ロボットの高機能化および無線ネットワークへの適用、動物モデルを用いた評価など、技術の積み上げを行い、ドコモの5G環境が導入された神戸の2拠点間において実証実験を重ねていました。早期社会実装に向けた検証の一つとして、地方部と都市部を想定し、国内の離れた地域においても本ソリューションが問題なく利用できることを確認するため、約500km離れた東京-神戸間において遠隔ロボット手術支援の実証実験を実施しました。

本実証実験は、赤坂インターシティコンファレンス〔東京都港区〕と統合型医療機器研究開発・創出拠点 (MeDIP)〔兵庫県神戸市〕の2拠点間で実施し、東京側に手術支援ロボット一式 (オペレーションユニット、サージョンコックピット、ビジョンユニット) を、神戸側に遠隔操作用のサージョンコックピットを設置しました。手術支援ロボットでは、遠隔ロボット手術支援において必須であるデュアルコックピットを新たに開発し、両拠点で同じ手術映像を共有しながら、音声コミュニケーションが取れ、状況に応じてロボットの操作権を切り替えることができる機能を導入しました。5Gネットワークでは、東京側でノンスタンドアローン (NSA) 方式、神戸側でSA方式を利用し、クラウド基盤 (docomo MEC〔大分拠点〕、MECダイレクト) を介して2拠点間で大容量・低遅延・セキュアなネットワークを構築しました。

検証内容として、遠隔ロボット手術支援の利用シーンを想定し、東京側で若手医師が模擬のロボット手術を行い、神戸側の熟練医師が遠隔で手術状況を確認しながら、必要に応じて音声やロボット操作によって遠隔支援・指導を行えるかを評価しました。結果として、デュアルコックピットでやり取りされる大容量データをリアルタイムかつセキュアに伝送でき、約500km離れた東京-神戸間において遠隔手術支援・指導を実現しました。

各者の役割

神戸大学手術支援ロボットの開発指導、遠隔ロボット手術システムの全体監修
ドコモ・NTT Com商用の5Gとクラウド基盤の提供、遠隔制御向けIPネットワークの構築
メディカロイド国産手術支援ロボットの開発、有線・無線ネットワークへの適用に向けた接続方法の改良
神戸市プロジェクトの支援

研究者

SDGs

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