神戸大学海事科学部の岡本小乃梨氏、内海域環境教育研究センターの堀江好文助教、岡村秀雄教授らの研究グループは、魚に対するマイクロプラスチックの色の嗜好性と摂取量・体外排出時間を明らかにしました。今後、マイクロプラスチックの生態(生体)毒性を評価する研究に役立つことが期待されます。

この研究成果は、4月1日に、「Environmental Pollution」においてオンライン公開されました。

ポイント

  • カクレクマノミが最も多量のマイクロプラスチックを食べることを明らかにしました。
  • 魚が食べたくなるマイクロプラスチックの色は「赤色・黄色・緑色」でした。
  • カクレクマノミはマイクロプラスチックの色を目で認識して食べていることが分かりました。
  • マイクロプラスチックの体外排泄時間は個体間で大きく異なることが分かりました。

研究の背景

海洋におけるマイクロプラスチック汚染問題は、世界中で最も深刻な環境汚染問題の1つとなっています。海水や淡水中では、赤色や青色、緑色など様々な色のマイクロプラスチックが見つかっています。また、魚の消化管の中からも着色マイクロプラスチックが見つかっています。そこで私たちは、ニホンメダカ・ゼブラフィッシュ・インドメダカ・カクレクマノミの4魚種を用いて以下の疑問の解決に挑戦しました。

  • (1)マイクロプラスチックを好んで食べる魚はどれか?また、その数はいくつか?
  • (2)魚が食べたくなるマイクロプラスチックは何色か?
  • (3)食べられたマイクロプラスチックが体外に排出されるまでの時間はどのくらいか?

研究の内容

図1 実験に用いたポリエチレン粒子

本研究では、赤色 (219.2±22.6 μm)、青色 (279.0±17.0 μm)、黄色 (256.9±21.2 μm)、緑色 (253.6±20.4 μm)、灰色 (257.7±21.7μm) のポリエチレン粒子 (以下、MP) を用いました (図1)。

実験1では各色のMPを4魚種に与え、マイクロプラスチックをたくさん食べてしまう魚はどれか?また、その数はいくつか?について調べました (図2)。

実験2では5色のMPを混合して与え、魚が食べたくなるマイクロプラスチックは何色か?について調べました (図2)。

実験3では消灯条件下で5色のMPを混合して与え、点灯条件下の結果と比較して食べたMPの色の割合の変化を調べました (図2)。

実験4では緑色のMPを与えた後、体外に排出されるまでの時間はどのくらいか?について調べました (図2)。

図2 実験の流れ
図3 消化管内で確認されたMP数

実験1の結果から、カクレクマノミ (最大744個) がMPを最もよく食べ、次にゼブラフィッシュ (最大63個) が食べることが分かりました (図3)。一方で、ニホンメダカとインドメダカは食べない個体が多いことが分かりました。

図4 点灯・消灯条件下での色の嗜好性パターン(カクレクマノミの場合)

実験2と3の結果から、カクレクマノミは「赤色・黄色・緑色」のMPをよく食べることが分かりました。一方で、「青色・灰色」のMPは食べられにくいことが分かりました (図4)。

消灯条件下では上述した様な「色の嗜好性」のパターンが無くなったことから、カクレクマノミはマイクロプラスチックの色を目で認識して食べていることが考えられます (図4)。

実験4の結果から、食べられたマイクロプラスチックは、55個体中40個体が24時間以内で体外に排出しますが、排泄時間は個体間で大きく異なることが分かりました。

今後の展開

マイクロプラスチックに関わる研究は世界中で行われています。しかし、マイクロプラスチックが生物にどのような実害影響を与えるのかはよく分かっていないのが現状です。本研究成果は、今後、マイクロプラスチックの生態(生体)毒性を評価する研究に役立つことが期待されます。

謝辞

本研究は、公益財団法人 クリタ水・環境科学振興財団(課題番号20B021)および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ムーンショット型研究開発事業(課題番号JPNP 18016-20333325)の支援を受けて実施されました。

論文情報

タイトル
Color preferences and gastrointestinal-tract retention times of microplastics by freshwater and marine fishes
DOI:10.1016/j.envpol.2022.119253
著者
Konori Okamoto, Miho Nomura, Yoshifumi Horie, Hideo Okamura
掲載誌
Environmental Pollution

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