神戸大学 大学院理学研究科 木村建次郎准教授は、平成29年12月13日 総理官邸で開催された、世界の医療の発展に向けて医療分野の研究開発の推進に多大な貢献をした事例を表彰する第一回日本医療研究開発大賞の表彰式に参加し、日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞を受賞しました。

木村建次郎准教授よりコメント

木村建次郎准教授(左) 授賞式が行われた官邸にて首相との記念撮影

我々の研究グループでは、これまで物体内部の3次元構造を可視化する方法論について研究を行ってきました。物体内部を可視化する手段と言えば、X線CTがよく知られており、病院などで幅広く活用されています。このCTでは、X線のように透過性が高く、散乱の小さい波動が用いられることがその映像化原理、画像再構成理論の前提となっております。透過性が高い波動が物体内部で遮断、吸収されるとそれがコントラストを生み、様々な角度からの画像を数学的に処理して立体画像をつくりだすのがCTの概念で、その発明者であるイギリスの電子工学者Godfrey Newbold Hounsfield、アメリカの物理学者Allan MacLeod Cormackは1979年にノーベル賞を受賞しております。

このCTとは対極的に、透過性が比較的低く、散乱の大きな波動を用いた3次元構造可視化のための画像再構成においては、統一的な理論が確立されていませんでした。そのため、超音波や電磁波など、用いる波動の種類が変わるたびに、映像化原理や画像再構成の方法が変わり、その性能が工学的手段によって著しく左右されるという問題がありました。本研究では、この問題解決に向けて10年以上取り組み、散乱場の逆解析理論の発明に成功しました。我々は本理論と関連技術をインフラ非破壊検査分野に適用し実用化にすでに成功しておりましたが、今回、マイクロ波を用いた乳癌検査技術として発展的に応用、非侵襲乳癌検査システムを開発し、世界の競合に対して数千倍以上の計算速度と精度で、世界最高性能を達成しました。プロトタイプシステムを延200人に適用し、高い乳癌検出感度が実証されております。本システムでは、被爆せず、造影剤が不要で、検査における痛みなく、乳房の自然な形状を保った状態で、両側の乳房の3次元画像を得ることができます。


官邸で開催された授賞式において、安倍総理は今回受賞した9つの研究グループに向けて、「この受賞を契機として更に研究開発が進んでいくことを期待します。研究開発が進み、そして多くの命が救われ、多くの人生が救われていく。より健康で長生きできる日本が、世界が実現されることを期待して、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。本日は御受賞、誠におめでとうございました。」と述べられました(一部抜粋)。

木村研究グループでは、今後、本システムを早期実用化、全世界に普及させ、世界から乳癌に起因する死亡をゼロにします。

 

  • 授賞式に関しては、政府インターネットTVにて配信されております [首相官邸HP]
    日本医療研究開発大賞表彰式
  • 日本医療研究開発大賞要領 [首相官邸HP > 健康・医療戦略推進本部]
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(理学研究科)