先端科学技術の倫理的課題などを学際的に研究する「神戸大学生命・自然科学ELSI (エルシー) 研究プロジェクト」の発足記念イベントが8月2日、神戸大学百年記念館六甲ホールで開かれました。学内外の研究者が登壇し、プロジェクトの展望などを議論しました。
ELSIは、「Ethical, Legal, and Social Issues」の略で、新しい科学技術を社会に導入する際の倫理的、法的、社会的問題を指します。欧米では研究が進んでおり、神戸大学でも今年度から全学的な取り組みとしてスタートしました。人文学研究科の研究教育センター「倫理創成プロジェクト」を中核とし、現在、8研究科から約20人の研究者が参画しています。神戸大学では昨年、さまざまな先端分野の研究拠点が連携する「デジタルバイオ&ライフサイエンスリサーチパーク (DBLR)」を開設しており、このDBLRでの研究を主な対象とする予定です。
第1部では、プロジェクトリーダーの茶谷直人・人文学研究科教授が研究の意義などを解説し、「新興科学技術が社会に受け入れられることを単に目指すのではなく、デメリットを含めて批判的に精査し、市民や社会に説明する姿勢が求められている」と話しました。続いて登壇したDBLR健康長寿研究拠点長の秋末敏宏・保健学研究科長は、同拠点で検討している長期的なウェルビーイングの研究などを説明し、ELSI研究との連携について展望を語りました。また、神戸大学学術研究推進室 (URA) の平田充宏氏は、異分野の研究者の連携を支援する取り組みなどを紹介しました。
第2部では、科学技術振興機構 (JST) 研究開発戦略センターの濱田志穂フェロー、立命館大学大学院先端総合学術研究科の後藤基行准教授の2氏が登壇。濱田氏は国内外のELSI研究の動向について詳しく解説しました。後藤准教授は「医療・ヘルスケア領域におけるELSIの歴史研究はどのように可能か」をテーマに講演し、旧優生保護法のもとで行われた障害者の強制不妊手術などを例に、時代状況によって変化するELSI研究の課題を検証するシステムの必要性を強調しました。
(総務部広報課)