神戸大学都市安全研究センターは9月21日、阪神・淡路大震災30年をテーマとするオープンゼミナールをハイブリッド形式で開催しました。防災や復興などをテーマとするゼミナールは今回で298回を数え、震災30年特集がスタート。「阪神・淡路大震災後の災害法制の30年と、これから」と題し、社会システムイノベーションセンター副センター長の金子由芳教授が講演しました。
講演では応急対応における公助・共助・自助の役割、生活復興における私権、復興の意思決定手続きに関する報告が行われました。
まず、共助の役割について、阪神・淡路大震災が地域防災の重要性を認識させる契機となったことが紹介されました。具体的には、災害対策基本法の改正や神戸市における防災福祉コミュニティの創設(BOKOMI:神戸発の地域防災国際モデル)などが取り上げられました。そのうえで、伝統的な地縁自治が根付いている地域と新興住宅地で異なる地域特性を踏まえ、制度や条例を検討していく必要性が提起されました。
次に示された論点は、生活復興と法制度です。被災地の市民の声を受けた議員立法として1998年に成立した被災者生活再建支援法は、憲法25条の生存権の理念が反映されましたが、2007年の改正で住宅再建支援金の加算や収入要件の撤廃が行われることによって、憲法29条の私的財産権の性格を帯びることになったと金子教授は説明しました。こうした流れや、2013年に罹災都市法(罹災都市借地借家臨時処理法)が廃止された経緯に触れながら、所有権をもたない被災者(借地・借家人など)への目線が薄れている懸念を示し、人間復興からの後退であると論じました。
最後に、復興における意思決定手続きの法制度が取り上げられました。阪神・淡路大震災の被災地では、地震と火災に強い市街地基盤の形成のため公園の建設や道路の拡幅が行われる土地区画整理事業が行われました。この事業の主な関係者は地権者であり、権利者以外の居住者、借地・借家人、事業者が含まれません。その問題を乗り越えたのが震災前からあった神戸市まちづくり条例でした。あらゆる関係者を含めたまちづくり協議会を組織して事業区域内の復興を話し合い、まちづくり提案を行う手法が取り入れられ、行政はその内容に配慮することが求められる「神戸モデル」で復興まちづくりが進められました。
しかし、2011年の東日本大震災後に制定された東日本大震災復興特別区域法では、意思決定手続きの規制緩和によって住民参加が回避されました。さらに、2013年の大規模災害復興法も特区手法の恒久法であり、これらは神戸モデルからの後退である、と金子教授は話しました。また、意思決定手続きで住民参加を保障していくためには、これらの法律の不足部分を強化する条例を制定する必要があると説明しました。
都市安全研究センターでは10月19日、11月16日のオープンゼミナールも、震災30年特集として開催します。詳細は下記をご確認いただき、ふるってご参加ください。
http://www.rcuss.kobe-u.ac.jp/openseminar/openseminar.html
(都市安全研究センター)