神戸大学医学部附属病院病理部・病理診断科 伊藤智雄教授と (株) ソダ工業は、医療現場などさまざまな場面において、新型コロナウイルスなどの感染対策のためのクリーンユニットを共同開発しました。今後、長期の闘いとなる新型コロナウイルス感染症において、医療者などの感染機会を低減させる重要な機器となることが期待されます。

クリーンユニットの特徴

  • 患者の呼気を能率的に吸引浄化する装置であり、ベッドに寝た、あるいは椅子に座った患者の横に設置し、口や鼻から排出される呼気を強く吸入し、高性能フィルターによってエアロゾルや飛沫を除去します。排気は人のいない機械背部下方に排出させ、患者からのエアロゾルや飛沫による感染に対する効果的な対策になることが期待されます。
  • 下方には柔らかいフードを装着しており、患者に触れても痛みなどを感じることなく、また、ある程度の高さの変化にも対応することができます。
  • 連続運転が可能で、空気清浄機としても動作します。
  • 医師が開発主体となっているため、現場に即した設計となっています。既存のボックス型の防御装置と異なり、オープン構造であるため、気管挿管をはじめとする各種処置に支障をきたしません。
  • ウイルスのPCR検体採取などの現場でも利用が可能です。
  • 患者や医療者への負担がほとんどなく、救急全患者に対して使用することが可能です。コロナ病棟での負担軽減にも大きな効果が期待されます。
  • 医療以外にも広く応用が可能です。
開発機による実験

(左) 非動作時 患者から排出されるエアロゾルを模した煙は上方へ排出され、拡散している。
(右) 動作時 排出されたエアロゾルは効果的に吸入され、周囲環境への拡散を防いでいる。

クリーンユニット イメージ

研究の背景

新型コロナウイルス感染症は世界的な問題となっており、特に医療従事者への感染や心理的負担は極めて大きな問題です。特に救急の現場では交通事故で搬送された患者が感染者であったなどの事例が知られており、すべての患者に対して注意を払う必要から極めて大きな緊張が強いられています。個人防護具も不足する中で、本来行うべき感染対策も行えず、医療者は身をていしてウイルス感染症に立ち向かっている現況です。環境にウイルスが浮遊している状態では、防御にも限界があります。

我が国では幸い収束傾向にある新型コロナウイルス感染症ですが、医療機関ではこれからも長期間の闘いが予想されており、患者・医療者いずれにも負担の少ない効果的な防護法は強く求められるものです。

開発者の伊藤教授は病理部・病理診断科の医師であり、ホルマリンや有機溶剤から医療者を守るための気流制御の知識を有しています。また株式会社ソダ工業は、もとより感染防御のための気流制御技術を要していることから、今回の共同開発に至ったものです。

研究の内容

新型コロナウイルス感染症の根本的な感染源は患者の口や鼻から排出されるウイルスを含む飛沫やエアロゾルで、これを積極的に除去することができれば大きな感染機会の低減効果が期待できます。本装置は患者頭部の横に設置する吸入・浄化・排出一体型のクリーンユニットです。呼気を効果的に捕捉・吸入するためのフードを装着し、ファンによって患者からの呼気は効果的にクリーンユニット内に誘導することができます。クリーンユニット内には高性能のフィルターが装着されており、飛沫やエアロゾルは十分に除去されます。浄化された空気は機器背部から斜め下に排気させ、医療者に対する効果的な対策となることが期待されます。

使用場面は、救急部、PCR検体採取所、外来、病棟、透析室、ICUなど様々な場面が想定され、すでに、神戸大学医学部附属病院では救急ER室、透析室などで実際に利用が開始されています。

今後の展開

今後、高さの調節機構を追加することにより、耳鼻科外来、眼科外来などのリスクの高い現場への応用が可能となってゆきます。幅広く応用が可能で、かつ比較的安価に作製することが可能なことから、広く導入されてゆけば、全国的に医療機関での感染機会を低減させることができます。

さらには、一般の施設でも、不特定多数の方と対面式で業務を行う場面などでの利用が可能で、業務にあたる方の負担・危険を大きく軽減することができます。

関連リンク

研究者

SDGs

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