東京大学大学院新領域創成科学研究科の今村剛教授らによる研究グループは、金星の雲の長大な不連続線(南北に連なる境界構造)が、大気の流れが急激に変化して上昇気流が生じる現象「ハイドロリック・ジャンプ」によって生じることを明らかにしました。
探査機あかつき(注1)の調査によって南北約6000kmにわたる雲の不連続線が発見されましたが、その成因は謎とされてきました。この雲構造は背景の風よりも速く西向きに伝播し、後方で雲量が急増するという通常の雲の動きとは異なる特徴があります。
本研究では数値シミュレーションを用いて、惑星スケールの大気波動が作り出す大気の流れが不安定となり、その結果として大気の流れが急激に変化して上昇気流が発生し、硫酸蒸気が冷却・凝結して雲が形成される仕組みを解明しました(図1)。ハイドロリック・ジャンプと呼ばれるこのような上昇流の発生は、地球では河川や山岳周辺で見られる現象です。今回、金星の雲のダイナミックな生成プロセスが明らかになるとともに、金星特有の高速大気循環「超回転」(注2)の維持に働いていることも示唆されました。
これほど大規模なハイドロリック・ジャンプが惑星の大気中で見出されるのは初めてのことであり、本研究を契機としてこれまで認識されていなかった大気力学過程の理解が進むことが期待されます。
本研究の成果は、2026年4月24日付でJournal of Geophysical Research: Planetsに掲載されました。

金星探査機あかつきに搭載された近赤外線カメラIR2によって2016年8月18日(左)と8月27日(右)に撮影された夜側の雲。高温の大気から発せられる赤外線を光源として上空の雲が影絵として映し出されている。暗く見えるところほど雲が濃い。不連続線の位置を矢印で示す。
論文情報
タイトル
"A planetary-scale hydraulic jump driving Venus' cloud front"
DOI
10.1029/2026JE009672
著者名
Takeshi Imamura*, Yasumitsu Maejima, Ko-ichiro Sugiyama, Takehiko Satoh, Javier Peralta, Kevin McGouldrick, Takeshi Horinouchi, Kohei Ikeda
掲載誌
Journal of Geophysical Research: Planets
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