この度、神戸大学医学部附属病院小児科 藤岡一路特命教授、野津寛大教授らの研究グループは、神戸大学医学部附属病院臨床研究推進センターを治験調整事務局として、医師主導治験「未熟児貧血を対象としたRo50-3821の第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(NEO-LEAP)」を開始します。

本治験は、中外製薬株式会社から資金及び治験薬提供を受け、神戸大学医学部附属病院を含む、全国9施設(日本大学医学部附属板橋病院、北里大学病院、大阪母子医療センター、神戸大学医学部附属病院、兵庫県立こども病院、産業医科大学病院、久留米大学病院、東京大学医学部附属病院、神奈川県立こども医療センター)の医療機関において、令和8年10月から順次治験を開始します。

未熟児貧血について

未熟児貧血は早産児(在胎37週未満で生まれた赤ちゃん)や低出生体重児(体重が2500g未満で生まれた赤ちゃん)において高頻度に認められる合併症で、特に超低出生体重児(体重が1000g未満で生まれた赤ちゃん)ではその発生率が90~100%に達します。未熟児は正期産児に比べ、出生後ヘモグロビン濃度が急速に低下することで、貧血がより重症化しやすく、貧血が進行すると、体重増加不良、活動性低下、多呼吸、哺乳障害などの臨床症状が現れ、無治療の場合は神経学的後障害のリスクが高まります。

現在、未熟児貧血の治療として遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(以下、rEPO)が用いられていますが、rEPOの半減期は24時間以内と短いため、週に2〜3回の頻回投与が必要です。この頻回投与は新生児への侵襲的ストレスをもたらし、呼吸状態や循環動態の悪化、無呼吸発作の誘発リスクを伴うほか、新生児医療従事者にとっても作業負担を増加させるため、これらへの対処が喫緊の課題と考えられています。

エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)の有効性および安全性を評価する医師主導治験

エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)は成人の腎性貧血に対して承認されている薬剤で、未熟児貧血に対する使用は承認されていません。半減期は約139時間と長く、成人の腎性貧血では2~4週間に1回の投与方法が設定されています。エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)を未熟児貧血治療に応用すれば、投与間隔の拡大により病的新生児の呼吸・循環動態の安定化に寄与するだけでなく、医療従事者の負担軽減と侵襲的処置の削減が可能となると考えられます。

治験の概要

本治験は第Ⅱ相試験パートと第Ⅲ相試験パートから構成され、第Ⅱ相試験パートでは至適用量(貧血症状に対して最も効果があって、安全な投与量)を決定し、第Ⅲ相試験パートでは第Ⅱ相試験パートで決定した投与量での貧血改善効果、輸血回避効果や安全性を評価します。

<第Ⅱ相試験パート>

選択基準及び除外基準(表1)を満たす未熟児貧血患者を対象に、被験者の代諾者から文書による同意を取得した後、エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)及び鉄剤の投与を行います(図1)。

エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)の投与量は1.5µg/kg、3.0µg/kg、4.5µg/kgの3用量を設定し、いずれかの用量を2週間間隔で計4回、皮下投与します。また、シロップ状の鉄剤を、哺乳瓶からの経口投与、又は鼻や口から胃に通したチューブからの胃管投与を行い、被験薬投与開始日から8週後まで毎日投与します。

観察期間は8週間で、毎週血液検査を行います。

<第Ⅲ相試験パート>

選択基準及び除外基準(表1)を満たす未熟児貧血患者を対象に、被験者の代諾者から文書による同意を取得した後、エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)及び鉄剤の投与を行います(図1)。

エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)の投与量は第Ⅱ相試験パートで決定した用量を2週間間隔で計4回、皮下投与します。また、シロップ状の鉄剤を哺乳瓶からの経口投与、又は鼻や口から胃に通したチューブからの胃管投与を行い、被験薬投与開始日から8週後まで毎日投与します。

観察期間は8週間で、毎週血液検査を行います。

図1 試験治療

治験の概要

治験の評価項目は以下のとおりです。

a. 主要評価項目

観察期間中の最低ヘモグロビン濃度

b. 副次評価項目
  1. ヘモグロビン濃度低下量
  2. ヘモグロビン濃度の経時的推移
  3. 理論輸血回避の有無
  4. 輸血回避の有無
c. その他の評価項目
  1. 総輸血量と総採血量の差
d. 安全性評価項目
  1. 有害事象及び副作用の発現
  2. 不具合の発生
  3. 臨床検査値及びバイタルサイン

用語の説明

※1 医師主導治験

治験の準備から管理までを医師自ら行うことを医師主導治験という。医師主導治験では、治療薬が必要とされているにも関わらず、採算性の問題等で製薬会社が治験を実施できない薬や既に承認されている薬の適応症を拡大することなどを目的に医師が自ら治験の計画を立てて治験を実施する。

研究者