神戸大学名誉博士であるヘルマン・ファン=ロンプイ元欧州理事会議長が7月14日、神戸大学を訪問し、学生に講演をされました。

本学への訪問、及び講演はファン=ロンプイ元議長が欧州理事会議長に在任中の2010年4月26日以来2度目です。また、2021年3月まで本学アドバイザリーボード委員を務めていただき、多大なる貢献をいただいております。

講演会はEUIJ関西と共同で開催され、本学六甲ホールにて「The Japan-EU relations after Ukraine: common destiny?」と題し、約1時間行いました。

本学とEUは、学内に事務局を置くEUインスティテュート関西(EUIJ関西)を通じて深いつながりがあります。今回の講義は、本学国際文化学研究科の招へい教授である、ミヒャエル・ライテラー元駐韓欧州委員会代表部大使の仲介により実現しました。

EUIJ関西は、神戸大学(幹事校)、関西学院大学、大阪大学の3大学によるEU研究教育拠点として、EUの資金援助を得て2005年に設立されました。 

今回の講演は、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、ハイブリッド形式で開催し、3大学の学生を中心にオンラインでの参加を含め、100名を超える参加がありました。

講演では、EUと日本の経済状況・経済的結びつきをはじめとする両地域間の関係、中国の戦略的孤立といった今年2月24日以降始まったロシアのウクライナに対する侵略に起因する、近日の世界情勢の変化などを説明されました。そして、これ以前とは異なる世界の状況下で、“信頼”の重要性が増していること、最悪の事態を避け、希望を持つことができるよう我々は努力を続けなければいけないことを強調されました。講演後の質疑応答では、学生から多くの質問があり、EUの現状について、学生の関心の高さが伺えました。

講演に続き、藤澤正人学長への表敬訪問をされました。そして、藤澤学長と現在の日本とヨーロッパにおける新型コロナウイルス感染症の状況や、本学とヨーロッパの今後の協力体制への展望等をご共有されました。

(国際部国際企画課)


ヘルマン ファン=ロンプイ 元欧州理事会議長 講演内容の要約

“The Japan-EU relations after Ukraine: common destiny?”

2022年7月14日 

今年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻以降、我々の世界は地政学的に、根本から変化しました。日本とEU間の関係もこうした脈絡と照らし合わせて見極める必要があります。

日本とEUの関係は、2019年に結ばれた日本・EU連結性パートナーシップをはじめとして、より密になってきました。経済の側面を鑑みても、日本とEUの関係は強固であることがわかります。

また、グローバル化が進んだ結果、各国の相互経済依存が深化してきましたが、独裁主義の社会は依然として存在し続けています。

ワシントンD.C.での議会襲撃事件や、ロシアのウクライナ侵攻など、現在の世界は数年前と比べると、より危険であると言えます。しかし、現在の不安定な情勢下で、日本とEUは比較的安定性を維持しているのではないでしょうか。とはいえ、ベルリンの壁崩壊や、2008年より始まる様々な危機により、何一つとして確かだと言えるものはないのです。そして、この一連の流れは、テロや移民問題、COVID-19、インフレ、ウクライナ侵攻へと続いているのです。

現在、我々はある意味で”移行期の時代”を生きていると言えます。次のステージが不透明であり、以前のルールが適用できない時代とも言える中で、我々は統一感を維持しながら、これまで達成できたことを守っていかなければならないのです。