神戸大学と神戸新聞社が連携したアイデアソン「情報で、命を守る」が12月9日、新設の大学都市神戸産官学プラットフォーム連携拠点「KOBE Co CREATION CENTER」(神戸市中央区)で開かれました。2025年の阪神・淡路大震災30年に向け、災害時の正確な情報提供の在り方を学生と地元メディアが一緒に考えようと企画し、サンテレビやラジオ関西も参加しました。学生とメディア関係者の混成チームで、災害時の情報発信にかかわる課題や解決策を熱心に議論しました。

ほとんどの学生が災害を経験していないため、まず、各メディアが阪神・淡路の体験や災害報道について説明しました。神戸新聞社の冨居雅人教育事業戦略室長は、阪神・淡路の発生時、当初は死者数など甚大な被害情報を伝えていた紙面から、しだいにライフラインの復旧状況など生活情報の提供にシフトしたことや、SNS時代のいま、災害時のデマ情報に惑わされないよう、受け手側のメディア・リテラシーの必要性などを強調しました。

冒頭、地元メディアが阪神・淡路大震災の体験などを語った

サンテレビの中田亮社会報道部長は、震災発生当時の映像を紹介し、6日間106時間余りにわたってCMなしで24時間体制の特別放送を実施したことや、SNSで発信される情報の確認作業(裏取り)の大切さを訴えました。また、ラジオ関西の林慎一郎アナウンサーは、倒壊した家屋から息子を助け出すことができなかった父親の生々しいインタビューを流し、被害が大きすぎて目の前にある現実を伝えることしかできなかったと振り返りました。さらに、情報が氾濫しすぎている現在、どう伝えたら伝わるのか、受け取る側も一緒に考えないといけないなどと指摘しました。

学生とメディア関係者が混成チームで、災害時の情報発信の在り方を議論

こうした災害報道の現状や課題を踏まえ、学生2~3名とメディア関係者2名で構成する混成チーム3つに分かれ、それぞれが選んだ具体的なテーマに沿って、約2時間にわたって課題や解決策を話し合いました。ふせんにメモを書き込んだり、パソコンで情報を整理したりしながら、パソコンでプレゼン資料をまとめ、チームごとに発表しました。

「真の情報弱者は?」を考えたチームは、とくに大学生は災害時の危機意識の低さから必要な情報が届かないという課題を挙げ、AIが作成した具体的な被害のシミュレーションを発信することを提案しました。また、「デマやフェイク情報に惑わされないようにするには」をテーマに議論したチームは、発信側には生成AIが作るフェイク画像を見分けるAIの開発などの解決法を示し、受信側には不安をあおる内容のフェイクニュースには立ち止まって冷静に判断するなどの対応を求めました。

チームごとにまとめたアイデアを報告した

メディア各社の審査員が最優秀に選んだのは、「災害時に正しい情報を伝えるには」をテーマにしたチームで、ふだんの地域連携の強化や、地域で災害時の役割を決めておくこと、誰にも分かりやすいピクトグラムの活用などを提案しました。

優勝した今浦朋生さん(経営学部1年)と脇山渚さん(農学研究科1年)は「災害というテーマに真剣に向き合えた。メディアの人から直接、話が聞けて一緒に考える機会をもらえてよかった」と喜んでいました。また、主催した地域連携推進本部副本部長の田中丸治哉・農学研究科教授は「学生の参加者は少数だったが、学生とメディア関係者の混成チームが課題にじっくりと取り組むことで、かなり中身の濃い議論ができたのではないか」と話していました。

(地域連携推進本部)