8月28日、「つながりから広がる、地域防災の未来」第1回セミナーを一般社団法人「大学都市神戸産官学プラットフォーム」の拠点「KOBE Co CREATION CENTER」(神戸市中央区三宮町)で開きました。神戸大学をはじめとする神戸学院大学、兵庫県立大学、神戸市看護大学、神戸松陰女子学院大学、神戸市、企業関係者、大学生ら約100人(オンラインを含む)が参加し、地震、水害など多様な災害に対応する神戸、国内の地域防災力をどう向上させていけばいいのかを考え、地域防災の未来像を描きました。
本事業では、南海トラフ巨大地震などの未曾有の災害に備え、企業、大学、地域団体、住民を巻き込んだ広域的かつ多層的な地域防災体制の構築を目標にしています。2024年度は、①参加組織へのアンケート調査②防災力セミナーとワークショップの開催③地域防災・避難訓練の視察と課題共有―の3つの取り組みを柱とし、本セミナーもその取り組みの一環として開催しました。
セミナーのテーマは、「能登半島地震から次の30年を考える」。
冒頭で、神戸大学の奥村弘理事・副学長が挨拶に立ち、「このセミナーの最大のコンセプトは、『繋がり』です。災害時には、住民、大学、行政、企業が繋がりを広げ、さらに深く太く繋がっていけるかどうかが、災害対応の一番の基本。阪神・淡路大震災から約30年が経過し、能登半島地震が発生しましたが、当時と似たような状況、困難が30年後にも繰り返されている側面がある。行政の新しい動きもあるが地域社会の在り方、変化を含めて、防災に関して、今一度考えてみたい」と呼び掛けました。
神戸大学地域連携推進本部ボランティア支援部門長の山地久美子特命准教授が、本事業(採択プロジェクト「企業、行政、大学、住民が共につくる地域防災」 )の意義を説明し、同大学の震災30年事業の取り組みとして、来年1月11日に開催されるシンポジウムを紹介しました。同本部地域連携教育部門長の松下正和特命准教授は、阪神・淡路大震災を契機に設立された「歴史資料ネットワーク」というボランティア団体を紹介し、金沢大学などとともに進めた能登半島の被災地における歴史資料のレスキュー活動を報告しました。
神戸松陰女子学院大学の青谷実知代准教授は、ランド・マーケティングの視点から防災・減災の体系化や企業および行政、地域、大学のネットワークの重要性を、各地・企業との事例を基に話しました。神戸学院大学の前林清和教授は、同大学社会防災学科が全国で唯一「防災」を名乗る教育機関であり防災を学ぶフィールドを備えていることや卒業生の地元行政での活躍ぶりを紹介しました。神戸市看護大学の神原咲子教授は、大学と地域の協働によって地域の問題解決を目指す地元創成看護の柱の一つに防災・減災支援があり、「災害看護は神戸のシビックプライド(市民の誇り)」と話しました。兵庫県立大学大学院の馬場美智子教授は、学部生が副専攻「防災リーダー教育プログラム」として小学生を対象に取り組んだ「HAT減災サマーフェス」(2024年8月、人と防災未来センター)での学びについて報告しました。
セミナー後半は、神戸大学震災文庫に所収されているサンテレビジョンの阪神・淡路大震災当時の映像から始まり、金沢大学学長補佐で先端科学・社会共創推進機構の篠田隆行教授が「能登半島地震後の対応と取り組み~大学、地域、企業の視点から」をテーマに講演しました。篠田教授は、同地震は発生から8カ月が経過するが、被災家屋の公費解体が6パーセントしか進まないこと、同大学は発災当時から学長直轄組織「能登里山里海未来創造センター」による医療支援や合同調査など復旧・復興に向けた取り組みを続けてきたこと、そして、住民主体の「地域運営組織」の重要性を訴え、住民・企業・行政のトライアングルの中に大学をどう活用していくのか、その重要性を強調しました。
神戸市は、危機管理室の蔵元良平係長が今年4月から運用を始めた「帰宅困難者支援システム」のデモンストレーションを行い、参加者はスマホで一時滞在施設「ホテルオークラ神戸」への予約を体験しました。ホテルオークラ神戸管理部の櫻井紫帆子総務課長は、阪神・淡路大震災当日の生々しいホテルの被害状況と当日対応を報告、帰宅困難者に対するホテル側の取り組みを説明しました。通販大手の株式会社フェリシモコーポレートスタイルデザイン本部の山﨑力総務部長は、阪神・淡路大震災以降に取り組んだ募金活動や防災関連の商品化などを紹介しました。
同セミナーは今後、12月、2025年2月頃の2回、開催いたしますのでご期待ください。
■ 参考資料 ■ 当日のプログラム
■ 問合せ先 ■ 神戸大学地域連携推進本部
TEL:078-803-5427 E-mail: ksui-chiiki@kobe-u.ac.jp