SDGs推進室では、昨年度に引き続き、プロジェクトパートナーである関西電力株式会社との協働により、脱炭素の未来社会のあり方を考える全5回の連続講座を企画開催しました。

私たちの生活に欠かせないエネルギーを取り巻く状況は、国土の地理的状況に影響されるだけでなく、とりわけエネルギー自給率の低い日本では、経済や安全保障、国際情勢によって刻々と変化しています。本講座では、脱炭素に向けた最新のプロジェクトなどに関する講義と各種発電関連施設の現地見学を通じて、技術面だけではなく社会的な背景も含めてゼロカーボン社会の実現に向けた課題や可能性を学生一人ひとりが考えることを目指しています。

第1回は講義形式とし、講義開始時点で各自が考える2050年エネルギーベストミックスを作成しました。講義では、エネルギーをめぐる国内外の動向、各発電方式のしくみや特徴といった基礎的な知識を学んだほか、関西電力によるゼロカーボンの取組みについても紹介されました。

第2回は堺港発電所(LNG火力発電所)とハイドロエッジ(液化水素製造プラント)、第3回は大飯発電所(原子力発電所)の現地を訪れました。堺港発電所では、2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーの普及が進む中で、電力の需給調整役として重要性を増す火力発電において、高効率のコンバインドサイクル発電方式による脱炭素化の取組みについて学びました。堺港発電所に近接するハイドロエッジでは、LNGの冷熱を利用して生産される液化窒素の冷熱を用いて、天然ガスから得た水素ガスを液化するプロセスについて現地を見学しながら学ぶとともに、地球環境問題と資源エネルギー問題を同時に解決できるクリーンエネルギーとしての水素エネルギーがもつ可能性についても学ぶ機会となりました。

第1回で意気込みを語る受講生
第2回・堺港発電所での見学 

第4回は2部構成とし、第1部ではさまざまな洋上風力プロジェクトに参画してきた経験を有し、現在関西電力で洋上風力開発を担当する専門技術者の方から、洋上風力発電の最新動向について国内外の話題を幅広くご紹介いただきました。第2部では、まず株式会社淡路貴船太陽光発電所(淡路市)を訪れ、関西国際空港などの埋立地への土砂採掘跡地である用地で太陽光発電事業を開始するに至った経緯や運営・管理の状況等について解説いただきました。続いて、川崎重工業株式会社が神戸空港島に開発した世界初の液化水素荷役実証ターミナル(Hy touch神戸)を訪れました。同社の建造による世界初・世界唯一の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」を現前にしながら、液化水素海上輸送のカギとなる極低温技術を結集したタンク施設や、水素発電の大規模利用、水素エンジン実用化等に向けた課題や抱負などについて解説していただきました。

 

第4回・洋上風力発電の最新動向についてのレクチャー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終回は、これまで講義や現地見学で学んだことを踏まえ、2050年におけるエネルギーベストミックスと、時間軸による制約を受けずに理想と考えるエネルギーミックスについて各自の案を発表しました。日本のエネルギー政策の基本方針である「S+3E」(安全性(Safety)を大前提とし、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の同時達成を目指す)の観点からの自己評価と併せて発表し、SDGs推進室の喜多室長(理事・副学長)や関西電力兵庫支社の武市支社長らがコメントし、意見交換を行ないました。日本人学生だけでなく留学生も含めた多様な案が発表され、講座開始前の各自の案の変化の有無を含め、それぞれに考えを深めた様子が見られました。

最終回で各自のエネルギーベストミックス案を発表
最終発表を終えた受講生たち

本講座の実施にあたり、企画から運営まで全面的にご協力いただいた関西電力株式会社兵庫支社をはじめ、見学や質疑応答の貴重な機会を設けていただいた多くの関係者の皆さまに、厚く御礼申し上げます。                                                          

                                               (SDGs推進室)