2025年10月31日、神戸大学経済経営研究所地域共創研究推進センターおよび社会システムイノベーションセンター主催(株式会社エフアンドエム共催)公開シンポジウム「持続可能な地域経済に向けて ― 経営者保証に依存しない融資慣行の実現」を開催しました。
本シンポジウムでは、経営者保証に過度に依存しない融資慣行の確立に向けて、①既に先進的に取り組んでいる金融機関が、どのような工夫や実践を重ねているのか、②経営者保証に依存しない融資慣行の定着が、中小企業・地域経済にどのようなメリットをもたらしているのか、③この方向性を一層推し進めるために、解決すべき課題は何か、といった観点で理解を深めました。金融機関・専門家・企業が共に考え、行動を重ねることで、地域の中小企業がより健全で力強く成長できる金融環境づくりにつなげていく契機になりました。
本シンポジウムでは、金融庁および金融機関や企業の方などをゲスト講師に招き、上記テーマに対して考察を行うために、荒木千秋さん(大阪電気通信大学メディアコミュニケーションセンター特任講師・神戸大学経済経営研究所非常勤講師)による総合司会のもと、講演とパネルディスカッションを行いました。
最初に小橋英治さん(株式会社エフアンドエム取締役経営サポート事業本部本部長)による開会の挨拶がありました。続く第1部では、3名の方による基調講演が行われました。最初は家森信善教授(神戸大学経済経営研究所 教授・同地域共創研究推進センター長)が「経営者保証に依存しない融資慣行確立の意義と課題-RIETI支店長アンケートからの含意-」について、2番目に石山裕二さん(金融庁監督局総務課監督調査室長)が「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて」について、3番目に渡辺宜毅さん(株式会社エフアンドエム経営サポート事業本部企業支援グループ副事業部長)が「中小企業にとっての経営者保証」について講演を行いました。




第2部では、パネルディスカッションが行われました。家森信善教授の司会により、足立琢磨さん(山陰合同銀行融資部部長)、石山裕二さん(金融庁監督局総務課監督調査室長)、井上能秀さん(兵庫県信用保証協会常勤理事)、大川洋司さん(枚方信用金庫理事長)、日下智晴さん(元金融庁地域金融企画室長、神戸大学経済経営研究所客員教授)、山本佳宏さん(株式会社エフアンドエム経営サポート事業本部副本部長)がパネリストとして参加し、「経営者保証を超えて ― 金融・企業・専門家が共創する金融の未来」をテーマに議論が行われました。各金融機関からは、地域の企業を支える側として、自行の「経営者保証に関するガイドライン」の取組状況や、経営者保証に依存しない融資の取り組みについて紹介されました。また、兵庫県信用協会からは、漫画を掲載したリーフレットを作成・配布によるユニークな広報活動も含めて、保証協会の取り組みについて紹介されました。

左から:家森信善教授、足立琢磨/山陰合同銀行融資部部長
大川洋司/枚方信用金庫理事長

左から:井上能秀/兵庫県信用保証協会常勤理事、日下智晴/元金融庁地域金融企画室長、神戸大学経済経営研究所客員教授、
山本佳宏/株式会社エフアンドエム経営サポート事業本部副本部長、石山裕二/金融庁監督局総務課監督調査室長
今後の金融機関の方向性を考える上でのキーワードとして「メインバンク」や「事業性評価」の重要性が指摘され、金融機関と企業の円滑な連携の必要性が確認されました。また、「経営者保証を外すこと」自体が目的化してしまって、肝心の経営改善や健全な経営体制の構築が後回しになってしまうことのないように取り組むことが必要であるとの意見や、経営者保証に依存しない融資慣行が企業価値担保権の取り組みにつながるといった意見が共有されました。
最後に、西谷公孝教授(神戸大学経済経営研究所長)より閉会の挨拶がありました。
シンポジウムはハイブリッド形式で行われ、プレゼンテーションホールに直接ご来場いただいた25名、Zoomウェビナーによる110名、計135名の企業・組織と個人の方にご参加いただきました。
今回は、行政機関、金融機関や一般企業などの様々な立場から多くのご参加をいただき、参加者の皆様からは、「企業価値担保は、当庫内で少しずつ話題になっており、経営者保証に依存しない融資を推進することで、企業価値担保に繋いでいけると考え、今後意識しながら業務遂行していきたいと思います。」といったご意見があり、これまでの経営者保証の問題点と今後の進むべき方向性が浮き彫りになったシンポジウムでとても参考になったと高い評価の声をいただきました。
(経済経営研究所)