
2025年12月8日、神戸大学百年記念館六甲ホールにて、第4回先端バイオ工学研究センターシンポジウム「Engineering Biologyと異分野共創によるバイオエコノミーの展望」が開催されました。国内外のバイオ工学研究の最前線で活躍する研究者を迎え、バイオ工学分野の最新状況について報告が行われました。当日は大学・企業関係者や学生など約150名が参加し、この分野への関心の高さを示す盛会となりました。
シンポジウムは、蓮沼誠久センター長による開会挨拶とJ-PEAKS事業およびセンターの紹介に続いてプログラムが進められました。前半では、東京科学大学総合研究院の林周斗准教授が「DBTLで拓く自律駆動型創薬の未来」と題し、AIによる分子生成や分子動力学シミュレーションを用いた機能評価の最新状況を紹介しました。さらに、九州大学大学院農学研究院の花井泰三教授が「バイオプロダクションのための合成生物学-合成代謝経路、人工遺伝子回路、人工微生物群-」と題して合成生物学研究の近況を報告し、北見工業大学工学部の小西正朗教授は「培地組成の最適化から培養戦略の策定まで」と題して培養技術におけるAI活用や要素技術について講演を行いました。

後半では、神戸大学科学技術イノベーション研究科の吉田健一教授が「曝気を行わない好気微生物の培養法」と題し、枯草菌をモデルとした新たな培養法の開発について発表しました。続いて、株式会社みずほ銀行産業調査部の當山恵介次長が「AI技術の進化がもたらす産業構造変化~現場データと実現力の重要性~」と題し、AI技術の進化による産業構造の変化やバイオ研究・事業化に向けた重要な論点を提示しました。さらに、株式会社シンプロジェン執行役員であり神戸大学先端バイオ工学研究センター特命准教授でもある林謙太郎氏が「AIの劇的進化と『バイオものづくり』〜DBTLサイクルにおけるパワーシフトとバイオセキュリティの重要性〜」と題し、AIの進化がDBTLサイクルに与える影響やDesignからBuildへのパワーシフトについて論じました。最後に、前ギンコ・バイオワークスCSOのPatrick Boyle氏が「Building with Biology in the Age of AI」と題し、AIによる生物学の発展を加速させるための機会について講演を行いました。


閉会の挨拶では、西田敬二副センター長が「AIやロボティクスといった最新の研究から、培地や培養方法といった伝統的な研究まで幅広く発表があり、本シンポジウムは最先端の研究発表の場となっている」と述べ、盛況のうちに幕を閉じました。会場からは講演者への質問も多数寄せられ、今後のバイオものづくりへの関心と期待を強く感じる有意義な機会となりました。今回のシンポジウムを契機に、バイオ工学分野におけるさらなる研究開発の進展と産官学連携の推進が期待されます。
(先端バイオ工学研究センター)