9月1日に、公開シンポジウム「地域金融力を高めるESG地域金融―中小企業支援の実践と展開」(神戸大学経済経営研究所、尼崎信用金庫主催)を開催し、神戸大学と尼崎信用金庫の共同研究成果を発表しました。

神戸大学経済経営研究所では、共同研究等を通じ、地方自治体、地域企業、地域金融機関、地域支援団体などとの連携を図るため、2023年4月、地域共創研究推進センターを設立しました。地域連携活動の拠点として地域の金融機関様や団体様との共同研究を強力に推進しております。

神戸大学と尼崎信用金庫は、2022年度から、ESG要素を考慮した事業性評価の実装に共同で取り組んできました。また、2023年度以降は、共同研究の成果を広く共有するため、毎年度公開シンポジウムを開催してきました。

人口減少や地域経済の構造変化が進む中で、地域金融機関には、資金供給にとどまらず、事業者の本業支援や地域課題の解決に貢献する「地域金融力」の発揮が一層求められています。2025年12月に金融庁が公表した「地域金融力強化プラン」においても、地域企業の価値向上や地域課題の解決に向けた金融機関の役割が重視されています。こうした中で、ESG地域金融は、環境・社会・ガバナンスの視点を企業支援に組み込み、地域企業の持続的成長を後押しする有効なアプローチです。

作田誠司/尼崎信用金庫理事長

本シンポジウムでは、尼崎信用金庫におけるESG要素を考慮した事業性評価・支援の実践、広域連携の取り組み、具体的な支援事例を共有するとともに、地域金融機関がESGをどのように地域企業支援に生かしていくべきかについて議論を深めることを目的とし、荒木千秋さん(大阪電気通信大学メディアコミュニケーションセンター特任講師・神戸大学経済経営研究所非常勤講師)による総合司会のもと、講演とパネルディスカッションを行いました。

作田誠司理事長(尼崎信用金庫)による挨拶に続き、第1部では、家森信善教授(神戸大学経済経営研究所 教授・同地域共創研究推進センター長)が「地域金融力とESG地域金融」と題し、続いて、竹ケ原啓介さん(政策研究大学院大学 教授・神戸大学 客員教授)が「ESG地域金融の到達点と今後の展望」と題して基調講演を行いました。

家森信善/神戸大学経済経営研究所 教授・同地域共創研究推進センター長

竹ケ原啓介/政策研究大学院大学 教授・神戸大学 客員教授

次に、才脇達朗さん(尼崎信用金庫 価値創造事業部部長 兼 審査第三グループ長)が、「尼崎信用金庫の取り組み:ESG要素を考慮した事業性評価・支援の実践」と題し報告を行いました。次に、支援事例報告として、片谷勉さん(株式会社特発三協製作所 代表取締役)と岸田隆尚さん(尼崎信用金庫 潮江・尾浜グループ統括支店長 兼 潮江支店長)による報告が行われました。報告では、ESG要素を考慮した3種類の事業性評価シート(選択式設問シート・ESG要素を考慮したローカルベンチマーク・ESG課題評価シート)を用いた実践により、ESGに関する客観的な視点を得るとともに、自社の課題や強みを俯瞰的に把握でき、取組の方向性が明確になり、尼崎信用金庫と長期的な目線で課題を共有でき、両者の信頼関係がより深まったことが報告されました。

最後に、神井昭子さん(尼崎信用金庫 緑ヶ丘支店長)から、昨年度に川崎信用金庫、浜松いわた信用金庫、尼崎信用金庫、福岡ひびき信用金庫の間で締結されたESG広域連携の活動状況について報告が行われました。

左:才脇達朗/尼崎信用金庫 価値創造事業部部長 兼 審査第三グループ長 
中:片谷勉/株式会社特発三協製作所 代表取締役、岸田隆尚/尼崎信用金庫 潮江・尾浜グループ統括支店長 兼 潮江支店長
右:神井昭子/尼崎信用金庫 緑ヶ丘支店長

続く第2部では、家森信善教授の司会により、「地域金融機関はESGをどう地域企業支援に生かすのか―地域金融力強化プランを踏まえて―」をテーマにパネルディスカッションが行われました。日下智晴さん(元金融庁地域金融企画室長・神戸大学経済経営研究所 客員教授)、小平敏宏さん(信金中央金庫 常務理事)、作田誠司理事長(尼崎信用金庫)、下村雄一郎さん(株式会社バイウィル 代表取締役社長)、竹ケ原啓介さん(政策研究大学院大学 教授・神戸大学経済経営研究所 客員教授)、春田翼さん(金融庁銀行・証券監督局 総務課 地域金融企画室長 兼 内閣府 地域経済活性化支援機構(REVIC)担当室企画官)がパネリストとして参加し、今回の共同研究の意義と今後期待される展開について議論が行われました。

ESG地域金融は、地域金融機関に対して新しい業務を追加するというよりも、地域金融機関がこれまで培ってきた事業性評価や企業支援の力を、さらに高める取り組みであることが確認できました。実際に、全国ではESGの視点を活用することで、企業のコスト削減や生産性向上、新たな取引の獲得、企業価値の向上などにつながった支援事例が生まれており、その好事例として地域の脱酸素化の支援事例が紹介されました。

また、金融機関の現場でESGを具体的な企業支援にどう落とし込むかについて、その課題と人材育成を始めとする対応策の議論が行われ、こうした取り組みを一過性のものにせず、日常的な企業支援として定着させるための留意点について意見が交換されました。

左から:家森信善教授、日下智晴/元金融庁地域金融企画室長・神戸大学経済経営研究所 客員教授、小平敏宏/信金中央金庫 常務理事、作田誠司/尼崎信用金庫理事長 
左から:下村雄一郎/株式会社バイウィル 代表取締役社長
竹ケ原啓介/政策研究大学院大学 教授・神戸大学経済経営研究所 客員教授、春田翼/金融庁銀行・証券監督局 総務課 地域金融企画室長 兼 内閣府 地域経済活性化支援機構(REVIC)担当室企画官

最後に、西谷公孝経済経営研究所長から、御礼の挨拶がありました。

シンポジウムはハイブリッド形式で行われ、出光佐三六甲台講堂に直接来場いただいた155名、Zoomウェビナーによる235名、計390名もの企業・組織と個人の方に参加していただきました。

今回は、県や市などの行政機関、金融機関や一般企業などの様々な立場から多くのご参加をいただき、ESGの取組事例等大変参考になった、ESG地域金融の今後の社会および経済に与える影響の役割、重要性について理解が深まった、来年度もシンポジウムの開催を希望するなど、高い評価の声をいただきました。

今年度も共同研究を継続し、本取り組みの深化と一層の横展開を実現していく計画となっています。なお、本シンポジウムの内容は、神戸大学経済経営研究所の研究叢書として刊行される予定です。

(経済経営研究所)