神戸大学と理化学研究所は、稲わらから取り出したバイオ化成品やバイオ燃料生産原料の成分を初めて解明しました。今後は、デンプンを多く含む稲の栽培に応用することができるほか、バイオ化成品やバイオ燃料生産の低コスト化、効率化が期待されます。
この研究成果は、アメリカの科学雑誌「PLOS ONE」に6月18日掲載されました。
この研究成果は、神戸大学植物CO2資源化研究ネットワークプロジェクトの近藤昭彦・工学研究科教授、荻野千秋・同准教授、寺村浩学術研究員、神戸大学バイオプロダクション農工連携拠点の佐々木建吾・同特命助教、山崎将紀・農学研究科准教授、理化学研究所細胞生産研究チームの白井智量・副チームリーダー、同環境代謝分析チームの菊地淳チームリーダーらの共同研究によるもの。各研究機関の強みを結集した複合的な技術により多品種の稲わらを分析し、化成品原料成分を明らかにしたことがこの研究成果の最大の特徴です。
稲や麦をはじめとする再生可能資源 (バイオマス) からバイオエタノール等の化成品や燃料を生成するためには、希硫酸で不要な成分を除去する「前処理」、そこで得られた糖の、微生物による「発酵」のプロセスが必要です。研究チームは、日本で最も廃棄性バイオマスとして期待される稲わらに着目。神戸大学農学研究科で整備している13種類の稲わらを使用し、工学研究科が推進するバイオリファイナリー研究による技術を利用した「前処理」前後の47種類の構成物質の変化を理化学研究所の核磁気共鳴 (NMR) 技術により解析。さらに、「前処理」後に得られた糖や酸の濃度を分析し、47種類の構成物質と濃度との相関を見出しました。その結果、「前処理」後の固体中にはセルロースが、液体中にはグルコースが含まれており、グルコース量がデンプンに左右されることがわかりました。
神戸大学農学研究科が有する水稲品種コレクション、工学研究科のバイオリファイナリー研究、理化学研究所のNMR技術による複合的な分析技術によって、稲わら中の化成品原料成分が初めて解明されたことにより、今後はバイオ化成品やバイオ燃料の効率的な生産が可能となることが期待されます。
荻野准教授は、「今後もオールジャパンの農工連携研究体制で植物バイオマスから有用な物質を生産する技術を発展させ、持続可能な社会に貢献できるような研究開発を進めたい」と話しています。
論文情報
タイトル
DOI
10.1371/journal.pone.0128417
著者
Hiroshi Teramura, Kengo Sasaki, Tomoko Oshima, Shimpei Aikawa, Fumio Matsuda, Mami Okamoto, Tomokazu Shirai, Hideo Kawaguchi, Chiaki Ogino, Masanori Yamasaki, Jun Kikuchi, Akihiko Kondo
掲載誌