国立大学法人神戸大学先端バイオ工学研究センター(センター長:蓮沼 誠久教授)と出光興産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:木藤 俊一、以下「出光興産)は、バイオものづくりバリューチェーンの構築に向け、「出光バイオものづくり共同研究部門」を設立しました。10月1日に設立した当共同研究部門では、バイオ燃料、バイオ化学品、バイオ農薬などを製造するスマートセルの開発に取り組みます。

スマートセル:遺伝子改変技術と情報解析との組み合わせにより、目的物生産量を最大化した生物・細胞


バイオものづくり(微生物を利用したものづくり)は、主にスマートセルを活用して有用物質を効率的に生産する技術です。現在はバイオマス等から得られた糖などを原料とするプロセスの実用化が目指されていますが、CO2を直接原料とする研究開発も進められており、いずれも持続可能な社会へ寄与できる技術として期待されています。

出光興産は、1970年代から微生物に関する技術開発に取り組み、世界トップレベルの微生物開発技術を有する神戸大学と2020年からバイオ農薬などに関する共同研究を実施してきました。このたび設立した「出光バイオものづくり共同研究部門」では、2026年を目途に特定の化合物(化粧品や将来エネルギー用途への展開の可能性がある油脂、農薬などに使用される生理活性物質など)を製造するための基盤となるスマートセルの開発を目指します。当部門にて開発されたスマートセルは、本年に出光興産が出資した最先端のスマートセル開発技術を保有する神戸大学発のベンチャー企業である株式会社バッカス・バイオイノベーションにおいて、更なる生産性向上とスケールアップについて検討します。

本取り組みによりバイオものづくり領域の技術開発を加速させ、将来的には、原料確保、スマートセル設計、スマートセルを活用した有用物質の製造まで一気通貫するバイオものづくりバリューチェーンを構築することを目指します。

背景

日本政府は「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現すること」を目標としたバイオ戦略を推進しており、スマートセルの活用により有用物質の高効率な生産を実現する新しい「バイオものづくり」が注目されています。抗生物質や発酵食品が代表するように、微生物の力を利用したものづくりは昔から行われてきました。スマートセルを活用したバイオものづくりにおいては、医薬品や食品にとどまらない多様な有用物質の生産と、生産の高効率化の実現が望めます。また、化学品製造においてはスマートセルの活用により常温・常圧下の生産が可能となるため、高温・高圧下の石油化学プロセスと比べエネルギーとCO2排出を抑えることができます。

参考

研究者

SDGs

  • SDGs9
  • SDGs12