カーブジェン株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:中島正和)および神戸大学都市安全研究センターの大路剛准教授は、自動グラム染色装置「PoCGS®」を共同で開発し、今回、その診断精度と臨床での実用性を検証しました。PoCGS®と従来の人による染色法の性能を比較し、細菌分類精度・操作性・再現性の観点からその有用性を検証したところ、PoCGS®が手動法と高い一致率を示し、ポイントオブケアにおける診断支援ツールとして高い可能性を有することを示しました。

この研究成果は、4月10日に国際学術誌『Diagnostics』に掲載されました。

研究の背景と目的

グラム染色は、感染症診療において病原菌の迅速な分類を行い、微生物の想定をおこなう最も基本的かつ重要な検査手法です。しかし、手動による染色には熟練技術が求められ、結果の再現性やスピードに課題がありました。神戸大学とカーブジェン株式会社ではこの課題に対し、操作を自動化し、省スペースかつ現場導入に適したグラム染色装置「PoCGS®」を開発し、今回の研究では、その診断精度と臨床での実用性を検証しました。

研究結果の要点

診療現場で行える検査(Point of care test: POCT)を簡便にする目的で開発した簡易型自動グラム染色機(PoCGS®)を用いてその性能を評価する臨床試験を行いました。臨床検体と人工検体を含む40件の尿サンプルを対象に、PoCGS®、熟練者による手動染色、非熟練者による手動染色の3方式を比較したところ、PoCGS®による染色結果は熟練者による手動染色と100%の一致率を示しました。染色の均一性やの画像のノイズの有無に関しては、熟練者・非熟練者との間で統計的な差が見られませんでした。染色画像のノイズと培養結果のグラム染色との一致性ではPoCGS®は手動染色と同等の性能を示し、POC環境での有用性が示唆されました。

今後の展望

PoCGS®は、今後医療現場への導入が進むことで、検査技術の標準化と診断の迅速化を支援し、限られたリソース下でも質の高い感染症診療を実現することが期待されます。また、自動化された染色プロセスにより医療における属人性を極力排除しつつ、医療資源が限られた現場や夜間対応にも有用だと考えます。更に改良と発展のための共同研究を神戸大学とカーブジェン株式会社は計画しています。

論文情報

タイトル

"Comparison of Automated Point-of-Care Gram Stainer (PoCGS®) and Manual Staining"

DOI

10.3390/diagnostics15091137

著者

大路 剛(神戸大学)、竹谷 誠(カーブジェン株式会社)ほか

掲載誌

Diagnostics(Basel)

 

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神戸大学都市安全研究センター

神戸大学都市安全研究センターでは、安全かつ快適な都市の理念を構築し、それを実現するための手法システムについて総合的に教育及び研究を行っています。中でもリスク・コミュニケーション研究部門感染症リスク・コミュニケーション研究分野おいては、新興・再興感染症への対策や臨床感染症専門医教育への提言、災害救援者の労働安全衛生など、日常生活および自然災害時における感染症リスクコミュニケーションについての実践的研究を行っています。

カーブジェン株式会社

カーブジェンは、ライフサイエンス分野において、診断支援、研究の効率化、品質管理の標準化・自動化を推進し、熟練技術者の不足や地域格差といった課題の解決に取り組んでいます。正確かつ迅速な結果を提供することで、医療や産業の現場を支援しています。また、AI技術とデジタル・プラットフォームを活用し、研究者や医療従事者の連携を強化。薬剤耐性問題をはじめとするグローバルな課題の解決に貢献することを目指しています。国内外の有力研究機関とのオープンイノベーションを通じて、産官学連携による未来の共創にも力を注いでいます。

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