玉置久理事・副学長 

神戸大学は2026年4月、学長直轄の組織「国際共創推進本部」を立ち上げた。教育・研究における国際的ネットワークの強化、真のグローバル人材育成を進め、より体系的な国際戦略を構築しようとしている。核となるキーワードは「共創」。多様な人々がつながり、新たな価値を生み出すグローバル拠点としての大学を目指す。本部長を務める玉置久理事・副学長に、神戸大学の国際戦略の今後について聞いた。

グローバル化とは多様な価値観、広い視野を持つこと

「国際共創」という名称に込めた思いは?

玉置理事・副学長

神戸大学は「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」をビジョンに掲げています。グローバル化とは、単に学生や研究者が海外に出ていったり、国際交流をしたりするだけでなく、世界の多様な価値観を知り、広い視野を持つことだと考えています。つまり、ものを見る目をグローバルにするということです。

国際共創推進本部の前身として、国際連携推進機構という組織がありました。その取り組みの一環として、海外の大学・研究機関との協定といった組織同士の連携を積極的に進めてきました。一方、新たな組織に冠した「国際共創」には、学生も含めた多様な人々のつながりから、共にモノやコトを生み出していこうという思いを込めています。連携して教育プログラムを作ったり、ある分野で共同研究を進めたりすることもその一例です。組織同士の協定締結などは、共創を進めるための基盤整備と捉えています。

国際共創推進本部では特に、学生を対象としたグローバル人材育成に力を入れる計画です。その手段として、留学や海外での交流もあれば、神戸大学に世界から人を呼び込み、大学自体をグローバルな環境にしていくという取り組みもあります。また、学生が海外のグローバルな環境に飛び込むための仕組み、支援制度を作ることも重要だと思います。

海外同窓会と連携し、拠点を面的に広げる

具体的な方策として考えていることは?

玉置理事・副学長

現在、神戸大学が設置している海外拠点は8カ所あります。そのうち、包括的海外拠点が3カ所(ベルギー、中国・北京、米国・シアトル)、共同研究・学術交流などを進めるための海外拠点が5カ所(ポーランド、ルーマニア、ベトナム、中国・上海、米国・テネシー)です。

こうした常設拠点とは別に、今後の戦略として、もう少し緩やかなつながりの拠点を増やしていきたいと考えています。神戸大学への留学を希望する外国人学生や海外に出ていく神戸大学生が気軽に立ち寄り、情報共有や国際共修などの足がかりとするような場を開いていきたいと思っています。

世界各国には、神戸大学への留学経験を持つ人、海外で活躍する卒業生らが集う海外同窓会があり、その力は大きいと考えています。元留学生や卒業生の協力を得られれば、大使館や国際機関とのパイプ役になってもらったり、現地の生徒・学生に対して神戸大学のPRをしてもらったりすることもできるかもしれません。

そういう緩やかな拠点を、特定の地域に偏ることなく、面的に広げていきたいと思います。今後1、2年の間に拠点を増やし、活動を積み重ねていくことによって、海外での神戸大学の存在感を向上させていくこともできるでしょう。また、同窓生と大学のつながりを強化する仕組みにもなるはずです。これらの取り組みを通して、海外の大学などとの学生交流が活性化することを期待しています。

神戸大学と海外の学術交流協定(65カ国・地域の392大学・研究機関と締結。2025年5月1日時点) 

研究者の国際的な連携についてはどのような支援を?

玉置理事・副学長

研究における国際連携は、今では当たり前の流れになっており、研究の現場から研究者自身が連携を生み出しています。もちろん、大学としても資金援助、若手研究者支援などを行っており、高等学術研究院といった組織が中心となってさまざまな企画・取り組みを進めています。

また、神戸大学では、バイオものづくりや医工学など、大学としての強みである6領域の研究を推進する「デジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパーク」(DBLR)という基盤構築に力を入れており、国際的にも注目されている最先端の取り組みです。こうした強みを世界に向けてどう打ち出していくかという点も、今後の国際戦略を考えるうえで重要だと思います。

世界で戦える大学を目指し、国際戦略の構築へ

最近は学生があまり海外を志向しないという意見も聞きます。

玉置理事・副学長

他大学の担当者と話をしても、全体的にそういう傾向を聞きます。神戸大学も同様です。それは、日本国内にいてもある程度グローバルな環境で学べるようになったことも関係しているでしょう。

また、新型コロナウイルスが広がった時期、海外との往来が減り、オンラインで授業を受けたり、交流したりする体制が整ったことも影響しているかもしれません。神戸大学に留学してくる外国人学生の数はコロナ禍前の状況に戻りつつありますが、海外で学ぶ神戸大学生をもっと増やしていきたいと思います。今後は、海外での学びを必修化するような方向も考えていく必要があるかもしれません。

今、アジアからの留学生などを見ていると、非常に意欲的ですね。自国での学びが限られているという背景も関係しているかと思いますが、日本の高度経済成長期と似ている印象を受けます。

神戸大学の「国際共創」について語る玉置理事・副学長(六甲台第2キャンパス、情報価値創造教育棟)  

今後も、留学生の受け入れを増やしていくことは非常に重要だと思います。大学のグローバル化という観点からすると、さまざまな国の人々が共存することで学生や研究者の視点が多様になり、研究の幅も広がります。日本の人口減少を考えれば、研究大学としての規模を確保しておくことも重要な側面です。

研究・教育における価値観の多様性を広げていくためには、外国人教員の増員も重要です。神戸大学と他組織を掛け持ちして在籍するクロスアポイントメント制度や、短期滞在の仕組みなども活用し、外国人教員と学生の交流機会を増やしていきたいと思います。

今後の国際戦略の構築に向け、どのような取り組みをしていきますか。

玉置理事・副学長

現在、学内に蓄積されてきた国際関係の情報を整理し、データを分析することから始めています。これまで海外の大学や研究機関と結んできた連携協定、実際の活動などを洗い出し、戦略を再構築しようとしています。2026年度前半には、大学としての国際戦略を打ち出す計画です。

神戸大学には、国際分野に強い研究者が数多くいます。大学院には国際協力研究科や国際文化学研究科があり、発展途上国への貢献、国際機関との関係構築、さまざまな国の政治・経済・文化の研究などが進んできました。国際機関に就職したり、各国政府などで要職に就いたりしている卒業生や元留学生も多くいます。

ただ、国際共同研究も含めて、これまではそれぞれの研究者や研究グループが個別に取り組んでいるケースも多く、大学全体としての横の連携や展開が不十分だったと思います。

今後は、さまざまな研究分野で世界をフィールドに戦える大学を目指していかねばなりません。世界が求めているものをしっかりと捉え、その中で何ができるかを考えていける人材を育てていく必要があります。

日本、あるいはローカルな地域で活動していても、勝負するのは世界です。これまで神戸大学として培ってきた土台を生かしつつ、新たな国際戦略を練り上げていきたいと思います。

玉置久理事・副学長 略歴

1990年、京都大学大学院工学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(工学)。神戸大学工学部講師、助教授などを経て、2006年、教授。2010年、大学院システム情報学研究科教授(2016年~2020年、研究科長)。2022年、バリュースクール長(現職)、副学長。2024年から理事・副学長(教育・グローバル担当)。2026年から国際共創推進本部長。

研究者

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