神戸大学大学院経営学研究科の三古展弘教授らの研究グループは、「魔の7歳」として知られる子供の交通事故リスクに関する従来の認識を見直す必要性を示す研究成果を発表しました。小学1年生は交通事故による死傷者数が多く、「魔の7歳」という表現とともに広く知られています。このことは、小学校に入学すると同時に、子供だけでの外出の機会が急増することで説明されます。しかし、近年では小学1年生と2年生の死傷率の差は縮小しており、2年生のほうが死傷率が高い年も見られます。また、小学1年生に対応する6・7歳と、それに隣接する5・8歳の死傷率の差も縮小しています。本研究の結果は、小学1年生“だけ”が危険であることを連想させる「魔の7歳」について認識を改め、小学1年生に限定しない交通安全対策や交通安全教育の必要性を示唆するものであり、今後の交通安全政策に反映されることが期待されます。
この研究成果は、2026年6月29日に、Findingsに掲載されました。
ポイント
- 小学校入学と同時に交通事故リスクが高まることは「魔の7歳」として広く知られてきたが、この表現は小学1年生だけが特に危険であるとの印象も与えてきた。
- 歩行中の交通事故死傷率は、近年、小学1年生で大きく低下しており、小学1年生と2年生の死傷率には統計的に有意な差が認められなくなっている。
- 本研究は、「魔の7歳」という従来の認識を見直し、小学1年生に限定しない交通安全対策や交通安全教育が必要であることを示しており、今後の交通安全政策への反映が期待される。
研究の背景
小学1年生の交通事故が多い理由は、小学校入学を機に1人で移動する機会が急増することにあると考えられてきた。しかし、コロナ禍の2020年の1年生は、4月と5月に通学の機会が少なかったため、2020年の1年生の交通事故は、この理由だけでは十分に捉えられない可能性がある。そこで、本研究では、2020年を含む最近のデータを使って、小学生の交通事故死傷率の推移を調べた。その結果、コロナ禍以前から小学1年生と2年生の交通事故死傷率の差は減少しているということが明らかになった。このような最近の動向は、社会全体で十分に共有されてきたとは言い難く、「魔の7歳」という表現が強い印象とともに広く用いられ続けている。
研究内容
小学1年生において、歩行中の交通事故死傷者数が多いことは「魔の7歳」という表現とともに広く知られている。このことは、小学校に入学すると同時に、子供だけでの外出の機会が急増することで説明される。例えば、2026年3月24日の「政府広報オンライン1)」には、「小学校1年生の歩行中の死者・重傷者は6年生の約2.5倍。新1年生を交通事故から守るには?」という見出しの記事が掲載されている。
本研究では、ITARDA(公益財団法人交通事故総合分析センター)の交通事故データを用い、「政府広報オンライン」の「死者・重傷者」よりも対象を広げ、「死傷者」について分析を行った。
図1は、2014~2024年の学齢(学年)別の歩行中の交通事故死傷率の推移を示したものである。どの学年でも減少傾向にあることが分かる。1年男児は2014年の0.189%から2024年の0.085%へ(2024年の対2014年比0.447)、1年女児は0.094%から0.043%へ(同0.455)、男女計は0.143%から0.064%へ(同0.449)減少している。他の学齢では減少傾向は緩やかであり、2024年の対2014年比は、2年男児で0.524、2年女児で0.586、男女計で0.543であった。全体として、学齢間の死傷率の差は縮小しているが、特に1年生と2年生の間で縮小の程度が顕著である。また、1年生のほうが2年生よりも死傷率が低い年も見られる。男児のほうが女児よりも死傷率が高いが、死傷率の減少傾向は男女間で類似していた。

図2は、2001~2023年の年齢別の歩行中の交通事故死傷率の推移を示したものである。小学1年生に対応する6歳と7歳について見ると、6歳男女計の死傷率は2001年の0.292%から2023年の0.045%へ(2023年の対2001年比0.154)、7歳男女計は0.322%から0.073%へ(同0.227)減少している。8歳の減少傾向はやや緩やかであり、0.215%から0.060%へ(同0.279)となっている。5歳は0.149%から0.017%へ(同0.111)と、2023年の対2001年比は小さいが、減少したパーセンテージポイント自体は、6歳と7歳のほうが5歳と8歳よりも大きい。

付録では、隣接する学齢(1年生と2年生)や年齢(7歳と8歳)において、死傷率に統計的に有意差が見られなくなったことも確認できる。これが、小学1年生に対する安全教育の成果か、2年生に対する教育が不十分なのか、その両方か、については今後の研究課題である。
【付録】
隣接する学齢間、および年齢間で交通事故死傷率に有意差があるか、ピアソンの独立性のカイ2乗検定を行った。図3には隣接する学齢間、図4には隣接する年齢間について、カイ2乗値を示している。赤色の破線はカイ2乗値が6.63と3.84を示しているが、これよりも下にプロットされている場合、隣接する学齢間や年齢間で交通事故死傷率に有意差がそれぞれ1%と5%水準で確認できなかったことを示している。
図3より、男児においては2017年より、女児においては2014年より、男女計でも2018年より、1%水準では1年生と2年生で有意差は確認できていない。図4でも、7歳と8歳の間では男児、女児、男女計ともに、1%水準で有意差が確認できない年も見られる。


1) https://www.gov-online.go.jp/article/201804/entry-8077.html(2026年4月6日閲覧)
今後の展開
「魔の7歳」という従来の認識を見直し、小学1年生に限定しない交通安全対策や交通安全教育が必要であることを示しており、今後の交通安全政策への反映が期待される。
謝辞
本研究は、土木学会土木計画学研究委員会「ヒヤリハット情報を活用した歩行者・自転車の交通安全管理の実践に関する研究小委員会」での議論が有益であった。
論文情報
タイトル
DOI
10.32866/001c.163576
著者
Nobuhiro Sanko(三古展弘),Shuta Yamada(山田崇太)※
※神戸大学経営学部2024年3月卒業生
掲載誌
Findings
報道問い合わせ先
神戸大学企画部広報課
E-Mail:ppr-kouhoushitsu[at]office.kobe-u.ac.jp(※ [at] を @ に変更してください)

