神戸大学大学院法学研究科の砂原庸介教授を研究代表者とするグループによる「連続サーベイと量的テキスト分析によるパンデミックにおける信頼とその変化の測定」が、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)の「国際共同研究事業 英国との国際共同研究プログラム」(JRP-LEAD with UKRI)に採択されました。

採択課題

連続サーベイと量的テキスト分析によるパンデミックにおける信頼とその変化の測定

研究の背景

新型コロナウイルス感染症への対応として、多くの国でロックダウンのような手法が取られました。また、人々には感染予防・重症化予防のため効果や副反応に不確実性が残るワクチンの接種が求められています。日本のような自由主義の国において、このような政策を実施するに当たっては、政府が単に指令するだけではうまくいきません。人々がそれぞれの自由な判断のもとで、政府に従う行動を取ることが必要になります。そのときに、人々が政府や公的機関をどのように捉えているか、信頼しているかという要因は、政策を実現に移すのに非常に重要な意味を持ちます。さらに、この政府への信頼は、今後のワクチン接種や出入国管理、あるいは経済回復といった局面においても重要な役割を果たすことが予想されます。

本研究では、近年著しく発達しているオンラインサーベイと量的テキスト分析を組み合わせ、かつ、長期にわたって継続することで、人々の政府や公的機関に対する信頼や、その他の感情をリアルタイムで把握するとともに、その変化が意味することについて議論しようとするものです。現在進行形で発展の過程にある手法を、複数の国で先端的な研究を行っている研究者が共有するとともに、次世代の大学院生を巻き込むことによってその手法を教授し、さらに発展させることができると考えています。

研究の概要

政府や公的機関に対する信頼を測定するために、日本とイギリスで共通のフォーマットによる連続サーベイを行うとともに、新聞社やツイッターなどからテキストを収集して量的テキスト分析を行うことで、政府や公的機関に対する信頼とその変化を測定しようと考えています。まずサーベイを通じた信頼の測定については、それぞれの国での信頼研究の専門家を中心に調査票を用意したうえで、2年間にわたって継続的にデータを収集していきます。さらに、それぞれの国でオンライン調査を実施する際には、調査の継続性を活かしつつ、それぞれの時点で注目されるテーマについてサーベイ実験を加えることを予定しています。

量的テキスト分析については、まずツイッターのテキストデータを収集して、新型コロナ感染症やその他の社会問題についてどのようなことがオンラインで議論されているかを確認し、発言者の居住地域とその地域の社会状況とを結びつけながら分析しようと考えています。さらに、大手の新聞社の記事を収集して、それぞれの国での基本的な世論の枠組みについて理解することも試みます。

このように収集したデータを、日英の研究者によって分析していきます。それぞれの国で報告・意見交換を行うだけでなく、両国の政治制度や文化の共通点・相違点が、政府や公的機関に対する信頼にどのような影響を与えているか、そしてその時々の政治・経済的な争点との関係も探ります。さらに、有識者によるアドバイザリーボードを設置して助言を受けながら、共同研究の枠内にとどまらず、より広く社会的な関心から研究を実施することを目指しています。

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