受賞者
人間発達環境学研究科・教授・長ケ原 誠
工学研究科・准教授・杉本 泰
理学研究科・客員准教授<国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 海底資源センター 地質地球化学グループ グループリーダー代理>・野崎 達生
受賞日
2023年4月19日
受賞名
令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰

概要

人間発達環境学研究科・教授・長ケ原 誠(科学技術賞理解増進部門)

業績名
スポーツを活用し災害に備える防災プログラムの普及啓発
概要
災害大国と言われるわが国においては、防災に関する「知識」のみならず、体力・スピード・瞬発力といった災害対応に必要とされる身体特性を養うこともまた重要である。また、今後ますます少子高齢化が進むことから、助ける側となりうる若い世代への防災啓発も極めて重要となる。

本活動は、「楽しんで、競い合って、身体で覚える」ことをコンセプトに、災害時に想定されるシーンに震災の教訓を組み込み、スポーツ競技化した体験型防災学習プログラム「防リーグ」や「防災ウォーク」、「防トレ」などを開発し、「防災スポーツ」として普及啓発を推進するものである。

本活動により、「知識だけではなく、防災の知恵や技を身体で覚える」事前防災が可能となり、これまで学校(小学校~大学)<防災教育>、自治体<防災訓練>、企業、商業施設等で子供から大人まで幅広い世代に体験機会を提供している。さらに、アスリートやスポーツチーム、スタジアム(防災拠点)といったスポーツアセットを活用した普及啓発も進めるなど、防災とスポーツを組み合わせ、防災活動に “楽しみ” や “運動” といった特徴を加えることで、防災活動の継続性に寄与している。


工学研究科・准教授・杉本 泰(若手科学者賞)

業績名
誘電体ナノフォトニクスの光化学反応への応用に関する研究
概要
光の波長よりも十分に小さいナノスケール※の構造体により光(電磁波)を自由自在に制御する研究分野「ナノフォトニクス」は、次世代の光情報通信技術や光デバイス、ライフサイエンス分野まで、幅広い分野への応用が期待されています。杉本准教授はナノアンテナと呼ばれる特殊ナノサイズの構造体を用いて、物理・化学分野の枠を超えた革新的な機能を有する新しい材料・デバイスの開発に取り組んでいます。特に今回は、ナノアンテナ技術を光化学反応へ応用する新しい手法を開発した点が高く評価されました。

※ナノは10億分の1を表す接頭辞

若手科学者賞は萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者が対象です。


理学研究科・客員准教授・野崎 達生(科学技術賞研究部門)

業績名
地質時代を通した宇宙物質流入と地球生命史に関する研究
概要
本研究では、日本の遠洋性深海底堆積岩である「層状チャート」がもつ「堆積速度が非常に遅く、陸源性の砕屑物の混入がほとんどない」という堆積環境に着目し、この堆積岩から宇宙物質の混入を効果的に検出する手法を構築しました。そしてこれらの技術を用いて、過去3億年間の深海底堆積岩(堆積物)を研究した結果、新発見となる小惑星衝突イベントを3件(2億1500万年前、2億600万年前、1160万年前)、宇宙塵の大量流入イベントを2件(2億5200万年前、2億4200万年前)見出しました。本研究で明らかにした宇宙物質流入イベントの時代には、突発的な化石の絶滅や進化が記録されており、宇宙物質流入量の変動は、気温や大気組成の変動と同じく、地球生命史において重要な役割を持つことが示されています。今後、同様の研究を他の異なる地質時代に適用することで、地質学的イベントの原因究明やさらなる理解につながることが期待されます。