大阪大学大学院理学研究科の稲木美紀子助教、松野健治教授、神戸大学大学院医学研究科の本多久夫客員教授らの研究グループは、内臓器官が左右非対称な形をつくるのに、「細胞スライド」(細胞間のすべり) と名付けた新規の細胞の動きが重要であることを世界で初めて明らかにしました。

図1 ショウジョウバエ後腸の左右非対称な捻転と細胞キラリティ

ショウジョウバエの消化管の一部で、ヒトの小腸と大腸に相当する後腸と呼ばれる部分は、初め左右対称な構造として形成された後、左ネジ回りに90度捻転し、ショウジョウバエの発生において最初の左右非対称性を示します (図1)。後腸の構成要素である細胞は、捻転前は左に傾いた左右非対称な形をしており、それが捻転後には左右対称になることから、後腸捻転との関連が示唆されていました。しかし、これまでの研究は固定標本を用いて行われていたため、細胞のどのような動きによって、左右非対称な内臓形態がつくられるかについては解明されていませんでした。

今回、松野教授らの研究グループは、ショウジョウバエ胚の後腸捻転のライブイメージングとコンピューターシミュレーションを行うことにより、内臓器官が左右非対称な形に変化するのに「細胞スライド」と名付けた新規の細胞挙動が重要であることを解明しました。これにより、消化管や心臓など管構造がねじれる構造をもつ臓器の形成機構への理解が深まり、将来的に臓器の再生への応用が期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「eLife」に、6月12日 (日本時間) に公開されました。

論文情報

タイトル
Chiral cell sliding drives left-right asymmetric organ twisting
DOI
10.7554/eLife.32506
著者
Mikiko Inaki, Ryo Hatori, Naotaka Nakazawa, Takashi Okumura, Tomoki Ishibashi, Junichi Kikuta, Masaru Ishii, Kenji Matsuno and Hisao Honda
掲載誌
eLife

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研究者